Monday, June 11, 2007

The Court of the Air, by Stephen Hunt

The Court of the Airこちらで Lilith さんが紹介していた本ですけど、わたしもそれなりに期待していたんですが、う~ん、なんか物語の書き方を教えてやりたくなるような本でした。

ジュール・ヴェルヌふうののどかな表紙はかなり偽物で、気球はほとんど活躍しないし、そもそも設定がバリバリのスチームパンクなんですよね。ま、そのあたりは問題ないし、最初の 100ページほどはパルプを模した速い展開でなかなか期待を持たせるんですが……。私娼窟に売られた孤児の少女、ところが最初の客は彼女を狙う殺し屋で……。一方、叔父の家に身を寄せる気球の事故の生き残りの少年は、一家皆殺しの目にあって気球乗り崩れと逃亡する羽目に。

じつは、空を制することで周囲からの攻撃を防いでいる民主的な国家ジャッカルのまわりでは、様々な悪巧みが渦巻いていて、隣の国ではバイオ兵器を研究しているし、ジャッカルの地下では昔の帝国がカルトな指導者の下息を吹き返しているしで、上空から下界を見守る空の宮廷の面々も気が気ではありません。でまあ、少女と少年の主人公が蒸気機関人やカニ少女などの助けを得ながら悪巧みと戦うことになるんですが……。

問題は、100ページを越えたあたりから、完全に同じことの繰り返しの金太郎飴状態になってしまうことなんですよね。主人公を初め様々なキャラクタを用意しながらも、ほとんどこれといった活躍もしないし、ストーリイのメリハリも何もあったもんじゃありません。

作中ではパルプ小説が大きな機能を担っていて(この作品の中では penny dreadful)、みんなが三文小説で世間の動きを追っているという設定なんですから、作者もパルプ小説に倣って、一定のリズムで山場を用意して話を進めていく手法を身につけたほうがいいんじゃないでしょうか。

The Somnambulist はパルプのパロディをやって成功した例だと思いますが、こちらのスティーヴン・ハントさんはパルプを意識しながらもパルプの何たるかを全く理解していないとみました。書き方によってはそれなりの作品になったんじゃないかと思うんですけどね。残念でした。

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Sunday, May 27, 2007

"The Professor's Daughter" by Joann Sfar (Author), Emmanuel Guibert (Illustrator)

The Professor's Daughterフランスにもヴィクトリア朝ブームが伝染したのでしょうか。ジョアン・スファーエマニュエル・ギベールのフランス人コンビによる合作 "The Professor's Daughter" は、ヴィクトリア朝ロンドンが舞台のグラフィック・ノヴェルです。

表紙をよ~く見ると、ごく普通の恋人同士の楽しそうなデートのようでいて、なにやら異様な……。そう、このふたり、エジプト学の教授の娘と、なんと(!)現代に蘇ったミイラというカップルなんです。ミイラのお父さんまで出てきて、それもヴィクトリア女王を誘拐しちゃうというので、すっごいドタバタコメディの予感。

【追記】
この作品のフランス語原書 "La fille du professeur" は1997年出版なので、ヴィクトリア朝ブームにのって英訳版がやっと出版されるって感じみたいですね。フランスのアングレーム国際BDフェスティバルで毎年選ばれるルネ・ゴシニー賞(Le prix René Goscinny)を1998年に受賞しています。

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Thursday, May 24, 2007

The Somnambulist, by Jonathan Barnes

The SomnambulistThe Somnambulist、読みましたが、これがなんとも意外な面白さ。文学的メリットのまるでない全くのナンセンスで、とうていあり得ないようなうそくさい登場人物による複雑怪奇な話で、いかにも素人くさい文章で書いてあるし誰も信じないだろうと語り手自身がいってるくらいですから、いちおうミステリの形式を取ってはいるもののやってることはかなり無茶苦茶。けど、ヴィクトリア朝末期の三文小説の体裁で書かれた物語は、展開を追ってるだけで美味しいです^^)

自前の劇場で奇術を見せているエドワード・ムーンは既に盛りも過ぎて、片手間の探偵家業も最後の事件に失敗してからこれといった依頼人もない。相棒の大男 Somnambulist(夢遊病者)と興行を続けてはいるものの、最近は客の反応もいまひとつの状態。この夢遊病者というのが得体の知れない男で、8フィートを超える巨漢ながら口にするのはミルクばかりで、口が利けずに石版を使って簡単なやり取りをするのみ。そのくせ、剣で刺されようが何をされようがその体には傷ひとつ残らず、時にはムーンのボディ・ガードも務めるという設定。

そんなムーンに馴染みの刑事から、久々の事件の依頼が舞い込んでくる。ビルから落ちて死んだあるシェイクスピア役者の死因に、不可解な点があるというのだ。調査を進めていくうちに、さらにもう一人犠牲者が出る。こちらの犠牲者は死ぬ前に「蝿男……」の一言を口にしていた。フリークを専門とする私娼窟に出入りしていたムーンは、そこである旅のサーカス一座に蝿男がいることを聞き出し行方を追うが、ムーンに追われた蝿男はビルから飛び降り、自らの命を絶った。

事件は解決を見たように思われたが、それはムーン自身をもターゲットの一つとした、本当の事件の始まりに過ぎなかった。アルビノのリーダーに率いられた Directorates という政府の秘密組織は、女降霊術師が10日後にロンドンにロンドンに降りかかると予言した未曾有の危機に対し、渋るムーンを動員しようとする。劇場を焼き討ちされたムーンは、嫌々ながらも協力せざるを得なかった。

ということで、詩人コウルリッジの遺志を継いだカルトの地下組織が、あっと驚く悪巧みを画策してるんですが、この作品の面白さは、章が変わるたびに得体の知れない登場人物が次々と登場してくるところですね。未来の出来事を知っていて、時間を逆に生きているらしいマーリンのような男とか、ムーンの昔の相棒で、警戒厳重なニューゲートに監禁されていながら闇の動きは何でも知っているハニバル・レクターのような囚人、ロシアが放った凄腕の暗殺者など、他にも伏せておいたほうが楽しいキャラクタが満載です。伝説のロンドンの最初の王ラッドの石像なんていうのも掘り出されてきますし。

正直ムーンや夢遊病者がごくまっとうな登場人物に見えてくるくらいですね。いちおう夢遊病者の正体らしきものは最後には明かされますが、あれは明かされたっていうんでしょうか。本人が明言しているくらいとっても信頼できない語り手の叙述上の仕掛けも、意外な形で種明かしされるというおまけもついてます。

プロットは複雑怪奇に紆余曲折して楽しませてくれるんですが、結末はもうひとひねりあってもよかったかもしれません。まあ、なんじゃこれっていうキャラクタによるヘンテコなエピソードが次から次へと続きますので、これ以上の贅沢はいらないかもしれませんが。女王が亡くなってすぐの時代という設定のようですので、ほんとうはエドワード朝ものというべきかもしれませんが、このカラフルさはヴィクトリア朝に分類しても不都合はないでしょう。

この作品はジョナサン・バーンズのデビュウ作ということですが、Times Literary Supplements でレヴュウなんかもやってる人みたいですので、けっこう英文学の専門家なんでしょうね。SF作家のアダム・ロバーツが、19世紀英文学の教授として宣伝文句を寄せていますが、嘘ではないとはいえこれもパロディですね~^^) 次作が楽しみな作家が登場しました。

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Sunday, May 20, 2007

"In the Tenth House" by Laura Dietz

In the Tenth Houseヴィクトリア朝ロンドンといえば、marginalia 的にはやっぱりユーレイでしょうか。

というわけで、降霊術者の女性とフロイト派の精神科医が出会って、その双方がその後の人生を狂わされてしまうというのが、このローラ・ディーツのデビュー作 "In the Tenth House" なのですが、リサーチもしっかりしているし、新人にしてはスキルもなかなかというわけで、わりと評判いいみたいですね。

こちらで出だしをちょこっと読むことができます(が、これだけではちょっと分からないですね)。

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Wednesday, April 11, 2007

"Oscar Wilde and the Candlelight Murders" by Gyles Brandreth

The Oscar Wilde Murdersさあ、問題です。チョーサー、エリザベス1世、カント、フロイトに共通するのは? 答えは「探偵」ですね。歴史上の人物が探偵になって事件を解決……っていうのは、marginalia で取り上げただけでも、以上のように時代・職業を問わずいろいろありましたが、今度は探偵オスカー・ワイルドの登場です。本作で始まるこのシリーズ、年1回発行で全9巻になる予定だそうです。

作者のジャイルズ・ブランドレスは、元保守党議員で、モノポリーの元ヨーロッパ・チャンピオン、BBCラジオ番組の制作に携わり、英王室の伝記などの著作もある有名人ですが、なにより興味深いのがお父さんがワイルドの親友ロバート・シェラードやボジーを直接知っていたということ。また、ブランドレス自身も『オスカー・ワイルド書簡集』を編纂したワイルドの孫マーリン・ホランドと一緒の学校に通った友人同士だとか。ということは、かなり実像に近いワイルドになっていそうですね。彼の知られざる素顔を垣間見ることができるかもしれません。

こちらの本書の紹介記事によると、初っ端から、実際にワイルドの友人(!)だったコナン・ドイルが登場、2巻目にはブラム・ストーカーがひょっこり姿を現したりするんだそうです。ワイルドの広い交友関係から、いろいろなエピソードが楽しめそうです。

ワイルドの機知とアフォリズム満載の、時代の雰囲気あふれる作品に仕上がっていそうで、個人的にかなり期待してしまいます。このシリーズのサイトはこちら

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Monday, April 09, 2007

Angelica, by Arthur Phillips

Angelica毎回題材と作風が大きく変わる作家アーサー・フィリップス、といっても PragueThe Egyptologist もじつは積んだままなんですが、新作もヴィクトリア朝のゴースト・ストーリイということで、やっぱり気になりますね。

4才の娘をひとりで寝かせる父親と、いく度かの流産の末やっと授かった娘を心配する母親ですが、案の定幽霊が出ちゃいます。非情な夫を横目に、母親は女性の心霊術師に助けを求めるんですが……この心霊術師というのが意外とまともで、お祓いよりは心理学的側面に目を向けるようですね。ということで、ヴィクトリア朝のメンタリティを背景に、心理的な綾を解きほぐしていく物語のようです。『ねじの回転』を思い起こさせる「羅生門」型(同じイベントを異なる視点から描いていく形式)の叙述ということで、スタイル面でも期待できそうです。

いやでもここ数年、ゴースト・ストーリイはほんとに流行ってますね。

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Wednesday, March 14, 2007

Darkside, by Tom Becker

Darksideペーパーバック・オリジナルのファンタジイなんですが、イギリスの大手書店の Waterstone's が選ぶ児童書賞を受賞したりして、なかなか評判がいいようです。

主人公の少年が誘拐魔に追われて逃げ込んだ先が、切り裂きジャックの子孫が支配するもう一つのロンドンで、吸血鬼や人狼が跋扈するヴィクトリア朝の魔都を舞台に、ノワールな物語が展開するのだとか。

まあロンドンを舞台にしたファンタジイは、たいていパラレル・ワールドか擬似ヴィクトリア朝と決まっていて、それだけなら新味はないんですが、実際にロンドンに住んでいる人にとってみると、現実のロンドンとの対比が目に浮かぶような扱いがされていて、そこが大きな魅力となっているそうです。場所がキャラクターとしてうまく使われているということですね。ロンドンを舞台にした小説をコレクションしている知り合いのジェフ・コットンも褒めてました。

フィリップ・プルマンの作品やダレン・シャンあたりと比較すると、世界作りやホラーの点ではまだその域には達していないようではありますが、作者のトム・ベッカーは続編を執筆中ということで、有象無象のファンタジイからは一頭抜き出たものとして、かなり期待されているようです。オフィシャル・サイトはこちら。あんまりプロモーションにお金をかけているようには見えませんが、そんなあたりが逆に好感が持てます。

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Tuesday, March 06, 2007

Alice in Sunderland, by Bryan Talbot

Alice in Sunderland (uk)表紙とタイトルで一目瞭然なように、アリスを主人公にしたグラフィック・ノベルだそうです。とはいっても中身はただのお話というよりは、ルイス・キャロルがしばしば訪れて原稿を書いたり想を練ったという、イングランド北部の北海に面したサンダランドの町にちなんだものとのこと。様々なスタイルの短編の形式で、サンダランドの風物や歴史を語っているようですね。

作者ブライアン・タルボットのファン・サイトでいくつかのページが見られますが、テニエルの絵のコラージュなども取り入れて、おなじみのアリスのイメージを損なわないような、なかなか魅力的な誌面作りになっています。色々なタッチの画風が混在しているようですが、ちょっとどれもよさそうですね。これは特にアリスのファンでなくても買うしかないでしょう。いや、表紙だけで手を出してしまう人もかなりいるかも^^) ちなみに US版はこちら

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Thursday, March 01, 2007

The Somnambulist, by Jonathan Barnes

The Somnambulistひょっとしてこれをまだ取り上げてませんでしたね。冒頭の主人公の口上を聞いたら、これはやはり読まずばなりますまい。

'Be warned. This book has no literary merit whatsoever. It is a lurid piece of nonsense, convoluted, implausible, peopled by unconvincing characters, written in drearily pedestrian prose, frequently ridiculous and wilfully bizarre. Needless to say, I doubt you'll believe a word of it.'

探偵のエドワード・ムーンが、相棒の Somnambulist(夢遊病者)とともに、ウィリアム・ブレイクの黙示録的な予言を現実のものとして、大英帝国を破滅させようという秘密結社の悪巧みに立ち向かう話だそうです。ヴィクトリア朝を舞台に旅のサーカスと生ける屍が出てきて、コリンズやディケンズやストーカーやコンラッドやメイヒューや(って、だれ?)マッケンやドイルやウェルズからのパクリが満載って……確かに前口上どおりみたいですね^^; で、この夢遊病者っていうのが口の利けないミルクが大好きな巨人って、またまた怪しいじゃないですか。

マーク・ガティスの The Vesuvius Club が好きな人にはオススメということですが、すいません、まだ読んでません^^; なにやらポール・マーズの Never the Bride みたいな臭いもプンプンしますが。スティーヴン・ハントの The Court of the Air もそろそろ出ますし、またヴィクトリア朝強化月間をやるようでしょうかね。

[追記] こちらに感想上げました。(2007/5/24)

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Saturday, January 13, 2007

"The Court of the Air" by Stephen Hunt

The Court of the Air例によって近刊書の表紙をぼけら~っとブラウズしていて、気になったのがこの本。ちょっと古くさいカンジのこの表紙、(全然似てないんですが)なんとなーくウィリアム・ヒース・ロビンソン(1872-1944)のイラストとか思い出しちゃって、思わずチェックしてしまいました。

作者スティーヴン・ハントは、SF・ファンタジー総合情報サイト SFcrowsnest.com の設立者で、そもそもこのサイト、1994年に自分のデビュー作 "For the Crown and the Dragon" を宣伝するために始まったそうなのですが、その彼の2作目が4月に発売されるこの "The Court of the Air" なのだそうです。

宣伝文句によると、ヴィクトリア朝を模した世界に繰り広げられる、夢中になること請け合いのアドヴェンチャーもので、ディケンズのファンタジー・ヴァージョンといった趣の作品だそうです。スザンナ・クラークやフィリップ・プルマンのファンに受けそうとも書いてありますね~(ファンの方、いかが?)。ってことで、表紙を見て、なにげにW・ヒース・ロビンソンを思い出してしまったのも、そう的外れなことではなさそうです。

こちらで第一章と第二章を読むことができます。

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Tuesday, December 12, 2006

Sally Lockhart Quartet by Philip Pullman filmed by BBC

The Ruby in the Smokeヴィクトリア朝ブームの流れでしょうか、それとも来年公開予定の『黄金の羅針盤』にあやかってでしょうか、フィリップ・プルマンの旧作(1985年初版)サリー・ロックハート・ミステリー4部作が、BBCによってドラマ化されているようです。舞台はヴィクトリア朝ロンドン。父親の死の謎を追う16歳の少女サリーは、ドクター・フーでもおなじみ(らしい)人気歌手/女優のビリー・パイパーだそうです。

第1部 "The Ruby in the Smoke" は、このクリスマス期間中にイギリスで放映されるそうですが、NHKとかではやってくれないのでしょうかね~。ま、BBCドラマだったら、すぐにDVDになりそうですが。

TVタイ・イン版のペーパーバックも先月発売されています。

ちなみに、日本のアマゾンでは「3部作」と書かれていますが、"The Ruby in the Smoke"、"The Shadow in the North", "The Tiger in the Well" に、番外編 "The Tin Princess" を加えて計4部となっています。

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Thursday, November 16, 2006

"Volapuk" by Andrew Drummond

Volapukすっかり忘れておりました。一応ヴィクトリア朝イギリスが舞台ということで、こんな小説を見つけたんですが如何でしょう。ヴィクトリア朝+エディンバラ+普遍言語運動ということで、好きな人にはたまらないキーワード満載なんですが……。

1891年4月、エディンバラは十年に一度の国勢調査と、普遍言語普及協会の年次大会とで盛りあがっていた。協会書記長のジャスティス氏は、当時人気のあった人口言語の一つ「ボラピュク語」の提唱者。スコットランド中を旅して普及に努めてきたものの、対立するエスペラント語には分が悪い戦いを強いられている。思いあまってライバルを誘拐し、精神病院に雲隠れしてみたものの、そのライバルは国勢調査の委員でもあったことから、ついに当局が乗りだすはめに……。

という感じで、史実をもとにしたフィクションのようです。作品中には実際に「ボラピュク語」の講義が収められているらしく、初歩の文法ぐらいは身につくんじゃないでしょうかね。

作者のAndrew Drummondという人は、他に"An Abridged History"という小説も書いていて、こちらは同じく19世紀末のスコットランドを舞台とした鉄道技師の物語。

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Wednesday, October 18, 2006

"And Only to Deceive" by Tasha Alexander

And Only to Deceiveヴィクトリア時代の女性といえば、社会的権利が認められていず、抑圧された存在という印象がありますが、この "And Only to Deceive" の主人公エミリーは結婚後半年で好きでもなかった貴族階級の夫を亡くし、遺産と自由を同時に手にしたという羨ましい……じゃなくて、可哀相な……でもないですねぇ。まぁ、突然お金持ちになっちゃうというのは、いかにもヴィクトリア時代小説の人?And Only to Deceive

ところが夫の死後、彼の古代ギリシャ文学や骨董品への情熱を知ると、エミリーは亡き夫に初めて興味を持ちだし、夫の交友関係などからアフリカのサファリでの彼の死は事故ではなかったのではと疑い始めることに。

これにロマンスやら、古代ギリシャの文学やら美術やらの蘊蓄が絡んでくる、ヴィクトリア時代の雰囲気をかなり味わえるミステリのようです。

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Tuesday, October 10, 2006

The Great Victorian Collection, by Brian Moore

The Great Victorian Collectionということで読みましたが、ううむ、なんか微妙。

ヴィクトリア朝を専門とする美術の教授が、学会で訪れたついでに泊まったカリフォルニアのカーメルのモーテルで奇妙な夢を見るんですが……。前の晩、モーテルの隣の広大な空き地だったはずのところを埋め尽くすのは、まるで骨董市が引っ越してきたかのようなヴィクトリア朝の美術品の数々。

ところがこの宝の山、目を覚まして消えるどころか、世界中の美術館や著名なコレクターが所蔵する逸品と寸分の違いもない粋を集めたものだった。なかには記録に残っているだけで散逸してしまったと思しき品も混じっていたり、一画にはポルノがびっしり詰まった隠し部屋がしつらえてあったりと、疑いもなくヴィクトリア朝の家具調度、書籍、美術品の世界一のコレクションだった。

ということで、夢のようなというより、夢から生まれたヴィクトリア朝の一大コレクションが、専門家の手により紛れもない本物であることが立証されるんですが、ここに困ったことがひとつ。教授が町を離れようとすると、一部が日本製の粗悪な模造品に変わったり、雨が降ってきたりするんですね。でまあモーテルでずっと過ごすことになった教授、コレクションの一部とも見紛うような新聞記者のガールフレンドに横恋慕し、秘書に仕立て上げるんですが……。

まあミイラ取りがミイラになったようなコメディではあるんですが、じつのところかなりポイントレスな話で、なんとも身も蓋もない結末が待ってます。ま、チャーミングといえなくないこともないんですが、同じムーアでもクリストファー・ムーアあたりがこの設定で書いてくれたほうが、もっとオフビートで楽しいものになったかもと思わせるような作品でした。なんとなくタイトル負けしてます。

作者のブライアン・ムーアは、ブッカー賞に3度もノミネートされたというかなりの大家みたいですので、他の作品はもっと力作なのかもしれないですね。

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Tuesday, October 03, 2006

"Jabberwocky" by Lewis Carroll, Joel Stewart (Illustrator)

Jabberwockyヴィクトリア朝強化月間(?)ということで、出たのは2003年とちょっと古いですが、お馴染みルイス・キャロルの『ジャバーウォック』の絵本なんていかがでしょう?(←無理矢理こじつけ)

イラストはジョエル・スチュワート。この本、最近買ったんですが、絵がとってもかわいくて、すごーく気に入っています。表紙の色といい、縁飾りといい、まるであの時代の絵本みたい(一瞬、怪獣カネゴンかと思っちゃいましたけど)。タイトルページをめくって出てくるのはいかにもヴィクトリアンなお父さんと子供のイラスト。オマケにこれまたヴィクトリアンなエドワード・リア調の、人間の顔をしたヘンテコな動物も出てきて、ナンセンスさが光ってます。そしてなによりいいのは、少年の表情と動き。それらがジャバーウォックの詩にぴったり合ってます。Moon Zoo

ジョエル・スチュワートの絵本は、あと "Moon Zoo" も買ったのですが、キャロル・アン・ダフィーの詩にイラストをつけた、タイトル通り月の動物園を描いたこの絵本も、とっても夢があってよかったです。同じコンビの "Underwater Farmyard" も欲しかったのですが、絶版のようで残念です。

あと "The Adventures of a Nose" なんていう、鼻が自分の落ち着き先を探しに旅に出るお話もあって、これも楽しそう。出版日は今年になっていますが、2003年の再版のようです。

ジョエル・スチュワートご本人のサイトで、各絵本の中を少し見ることができます。

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Sunday, October 01, 2006

The Great Victorian Collection Month

はてさて、やっと夏ともおさらばして読書の秋ですね。と同時に10月はホラーの月でもあります。ということで、今月はテーマを設けましょう。題して "The Great Victorian Collection Month"

というのが、このところヴィクトリア朝ものが流行りで、この秋にも The Meaning of Night とか The Glass Books of the Dream Eaters なんていう大作が登場してますし、ここ数年ホラーの世界で主流になっているゴースト・ストーリーも、もとはといえばヴィクトリア朝時代に盛んになったもので、The Thirteenth Tale なども、舞台は現代でありながらヴィクトリア朝の幽霊物語の面影を色濃く示すといわれています。あるいはちょっと時代を遡って19世紀初頭のリージェンシー時代に目を移すと、Temeraire なんていう竜の出てくるナポレオン戦争の物語もありますし。The Great Victorian Collection

そんなわけで今月はヴィクトリア朝ものとホラーをメインに読む月といたします。ただしまあ、上述の大作は他の方にお任せして、ちょっと古い作品になりますが、わたしはブライアン・ムーアの The Great Victorian Collection でお茶を濁すことに……なんせ 200ページ程度と手ごろな長さだし、面白そうだし……。ううむ、月のあたまから詐欺を働いてどうする^^;

いえ、まじに読めたらこの秋の話題作をカバーしていきましょう。ご協力お願いします。

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Tuesday, September 19, 2006

The Meaning of Night, by Michael Cox

The Meaning of Night今年のブリティッシュ・ミステリで、おそらく一番の大作がこの作品のようですね。

ヴィクトリア朝に生きた殺人者の手記が発見されたという設定で、時代の雰囲気ばかりか文体まで再現した、込み入った展開の復讐譚だそうです。なじみのない言葉や事柄には脚注が多用され、多分ディケンズやウィルキー・コリンズを読むような印象なんでしょうね。

50才半ばだという作者のマイクル・コックスは、小説家としてはこれがデビュー作ですが、イギリスの文学史上最高額の50万ポンド(1億円超えてますね^^;)というアドバンスを手にしたとのこと。というのがこの人、怪奇小説のアンソロジイやM・R・ジェイムズの伝記などで知られた、ヴィクトリア朝の権威だそうです(無知なわたしは知らなかったりして^^;)。

作者がこの小説を書き上げた理由というのがちょっとシリアスで、ガンによる失明の危機にさらされて、30年間温めてきた構想を、目が見えなくなる前になんとしてでも作品としてまとめ上げたいという執念で完成させたものだとか。

ディケンズやコリンズを髣髴とさせる、話題の大作歴史ミステリと強調しておけば、うちのブログでも若干2名の人が放って置きそうにありませんね^^) 感想を期待しておきましょう。

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Thursday, August 31, 2006

The Glass Books of the Dream Eaters, by Gordon Dahlquist

The Glass Books of the Dream Eatersふむむ、いちおう頼んであるんですけど、どうしたもんでしょうねえ。

西インド諸島のプランテーションで育った女性が、許婚の一方的な婚約破棄を調べるためにロンドンに戻ったところ、なにやら怪しい儀式に巻き込まれて、中国人の殺し屋とスウェーデン大使の助けを得ながら、ヴィクトリア朝のイギリスで許婚の秘密と自分の出自の謎に迫るサスペンスということですが……ファンタジイの要素も入っているようですね。

かなり評判になっているようで、まともなところでの評価も悪くないようなんですが、なんかダイアナ・ギャバルドンあたりが引き合いに出されると、よくてもせいぜいロマンチック・アドヴェンチャー止まりかという懸念もありますね。そのうえ長そうだし。どなたか味見される方はいらっしゃいませんでしょうか。いちおうですね、シャーロック・ホームズとジェイン・エアとアイズ・ワイド・シャットを合わせたみたいな作品っていわれてますよ(なんなんだこの組み合わせは)。

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Thursday, July 27, 2006

"The Apple: New Crimson Petal Stories" by Michel Faber

The Apple: New Crimson Petal Storiesヴィクトリア朝時代のアヤシイ(?)雰囲気にどっぷり浸かれそうな長篇 "The Crimson Petal and the White" はおもしろそうなので取りあえず買ってあるのですが、読まないうちにいつの間にか邦訳『天使の渇き』が出ていてびっくり……と思ったら、今度はなんと主人公の娼婦シュガーや他の登場人物たちのその後を描いた短編集 "The Apple: New Crimson Petal Stories" が9月に出るそうです。

「林檎」はいったい何を意味しているのでしょうか。その前に早くあっち読まなくちゃですね。

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