Thursday, August 16, 2007

Spaceman Blues: A Love Song, by Brian Francis Slattery

Spaceman Blues: A Love Songう~ん、今年はスーパーヒーローものの当たり年みたいですよ。なんだかよくわからないこの本も大当りになりそうな予感が。なんせ、marginalia のお好み系の作家がこぞって誉めてます。ハーラン・エリスン®は別格としても、ジェフ・ヴァンダーミアにジェイ・レイク、キャサリン・M・ヴァレンテときては、むむむ、と思う人も多いのでは? わたしの好きなジム・ニプフェルのとぼけた紹介も目を引きます:

“It happens only very rarely--you read a book by a new author, and all you can say is ‘wow.’ That was the case with Spaceman Blues: ‘Wow.’ To say anything more would mean the inevitable descent into cheap clichés--‘hooked by the first paragraph,’ ‘dizzying,’ ‘a visionary roller-coaster ride,’ ‘reminiscent, if anything, of Thomas Pynchon in its scope, its explosive imagination, the swirling, jazzy flow of the prose.’ So much can and should be said about Mr. Slattery's debut--but I think I'll just stick with a simple ‘wow’--or if you prefer a visual summation, try an exclamation point on fire.”

じつはマット・チーニイがかなり前から大絶賛だったので気になっていたのですが、チーニイによれば Oh Pure and Radiant Heart、Octavian Nothing、The Exquisite,、The People of Paper と並ぶような特別な本ということで、これはやはり、むむむ、ですね。

ほかにもピンチョンとスタインベックを掛け合わせてダリが描いたような作品とか、ディックのパラノイアをミエヴィルや(コリイ・)ドクトロウとたち打ち出来るような現代のスタイル・センスで包んだ作品、なんていってる人もいますんで、読む前からいろいろ想像がふくらみます。ドクトロウの傑作 Someone Comes to Town, Someone Leaves Town みたいな作品なのかも、とか。

でまあ、実際のところストーリイはどっちでもいいらしいんですが、行方不明になったニューヨークの社交家の足取りを追う恋人のウェンデル・アポジーを主人公に、トラウトとサーモンという二人の刑事を初めとするたがの外れた人々を配し、失せ物が見つかるというニューヨークの裏側の世界ダークタウンを舞台にして、カルトな終末宗教や異星人の侵略を描いたものとのこと。ウェンデルはすべてを投げ打ってスーパーヒーローのキャプテン・スペースマンにならなきゃいけないみたいですね。で、このスラップスティックに重ね合わせて、ジャジーな文章でニューヨークにちなんだサブカルチャーや移民の社会が描かれる、シュールでポストモダンな作品といわれては、つい触手が伸びちゃう人も多いんじゃないでしょうか。

ブライアン・フランシス・スラタリーはこれがデビュー作だそうです。作者のサイト第1章が読めますが、たしかに情報過多の寄り道の多い叙述で力をためておいて、時々文字通り爆発させてしまう文章ですね^^) いやでも緊迫感とは無縁のこのカバー、かわいいですけど、どう見ても手抜きとしか思えませんね。Tor から出てるんでいちおうSF……なのかな~? ハードカバーと同時にペーパーバックも出てますんで、あの京都の某洋書専門店にはもう並んでるかもしれませんよ。店員さんが手をつけちゃってなければ、ですが。

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Wednesday, August 15, 2007

Death By Chocolate: Redux, by David Yurkovich

Death By Chocolate: Reduxううむ、夏にはむちゃくちゃ鬱陶しいヒーローの登場ですよ。スイスの怪しいキャンディ工場で、ついうっかり溶けたチョコレートの桶に落ちた主人公は(たぶん ISO 9001 の認定は受けてないんでしょうね)、そこに巣くっていた異星生物と一体化して、純チョコレート人間となってしまいます。ウィリー・ウォンカの工場では落ちた人間はチョコレートの原料になりますが、こちらでは逆。誤って死なせてしまった人間を助けるウルトラマンと設定がそっくりですね^^)

で、触れるものすべてをチョコレートに変える能力を身に着けたミダス王のような主人公、悪の道に堕ちてたんですが、FBIに捕まって改心し、エージェント・スウィート(Swete)として、食べ物がらみの犯罪に挑むことになります。なにやら人語を話す異次元犬ジェフリイや、作家のヘミングウェイと知り合いになって、不死を授ける「永遠パスタ」の盗難事件や、なんでも貪り食う3人組と渡り合うようです。かなりノワール・タッチということですが、スウィートなのにブラック・チョコレートですか^^;

なんか悲劇的な結末が待っていそうな予感がしますが(まあチョコレート人間の末路ですからね~)、これはやはり鬱陶しさを我慢しても夏に読まないと実感が湧かないでしょう。脳みそがチョコレートになっちゃいそうな気もしますけど……。

ちなみにこの作品に合うチョコレートといえば、やっぱり中がとろとろになったリンツのリンドールでしょう。げ~っ、考えただけでも涎が……じゃない、吐き気が^^;

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Sunday, July 08, 2007

Karma Girl, by Jennifer Estep

Karma Girlげげげ、チック・リットにロマンスにファンタジイなんて書いてありますよ。パラノーマルなんて禁句も出てきます^^;

もちろんわたしはこんな本は買わないし読まないどころか、まったく興味もないんですが、なにやらスーパーヒーローやユーバーヴィラン(なんでこういうときだけドイツ語が出てくるんだ)のイクスポゼをしている女性レポーターが、フィアンセがなんとスーパーヒーローで、しかも彼女の親友と浮気をしているところを発見してしまうんだとか。ううむ、かなりむちゃくちゃな展開になりそう。

どなたか味見してみませんか。ほらほら、表紙もタイトルもバッチリきまってるし。

作者ジェニファー・エステップのこれがデビュー作のようですが、すでに続編が2冊も決まってるようですね。2作目は Hot Mama だって^^;

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Tuesday, May 15, 2007

Soon I Will Be Invincible, by Austin Grossman

Soon I Will Be Invincibleううむ、どうしても無視して通り過ぎることのできない悪趣味なカバーです。いえ、当たり前のスーパーヒーローものには全然惹かれないんですが、こういういかにもヘンテコそうな作品には思わず手を出してみたくなります。

自らの力を天下に知らしめようと、地球の公転軌道をずらし寒冷化を画策するマッド・サイエンティスト Doctor Impossible に対するは、リーダーが行方不明になってしまったため、やむなくスーパーヒーローのチーム「チャンピオンズ」を率いる羽目になった新米サイボーグ Fatale(ファタールですからもちろん女性です)。とはいえ二人とも自らの仕事や存在意義に疑問を抱えているようですね。

どう考えてもオフ・ビートな展開になりそうなこの作品、本職はビデオ・ゲーム・デザイナーだというオースティン・グロスマンのデビュー作ですが、この人、『コーデックス』の邦訳のあるNYタイムズのレヴュア、レヴ・グロスマンの兄弟らしいです(う、年齢が近そうだと思ったら、この2人双子じゃないですか)。なおさら一筋縄では行きそうにありませんね。プロモーション用のオフィシャル・サイトはこちら(あっさりしてて期待はずれです^^;)

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Monday, July 31, 2006

Build Your Own Superhero

スーパーヒーローが流行りの時代なんでしょうか。

CatkillerSciFi Channel の HeroMachine で、オリジナルのスーパーヒーローを作って遊びましょう^^)

わたしのスーパーヒーローは悪いネコを退治するのが専門で、双眼鏡でネコを発見しては、トランペット型の Catcall でいびってターゲットを狂気に追いやります。アイパッチなのになんで双眼鏡なんだという細かい設定のミスはいいっこなしですね。本名はミツビシといって、いつもは工事現場で働いてます。

じつは最初のトライアルであまりにものすごいヒーローが出来ちゃったんで、とてもここでは見せられないので作り直したんでした^^;

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Monday, May 15, 2006

All My Friends Are Superheroes, by Andrew Kaufman

これもタイトルに惹かれて覗いてしまったのが運の尽き、買う羽目になってしまいました。

All My Friends Are Superheroes登場人物がすべてスーパーヒーローの物語ということなんですが、スーパーヒーローったってそんじょそこらのスーパーヒーローとは一味違います。主人公トムの妻はパーフェクショニスト。つまりはなんでも完璧なスーパーヒロインなわけですが、これが別れた元夫のヒプノに催眠術を掛けられてしまい、目の前にいるトムが見えなくなってしまったのでさあ大変。悲嘆にくれるトムはあの手この手で催眠術を解こうと奮闘するのですが……。

おお、これは今はやりの悲劇のヒーロー/ヒロインによる泣きたいときに読む純愛もの、それも「超」のついたパワーアップ版……には到底見えないですね^^; 友人の間を渡り歩いて煙草には事欠かないカウチ・サーファーなんていう羨ましい……いや情けないスーパーヒーローも出てくるみたいですし。

なぜか日の丸アマゾンに在庫があったので、最近出たイギリス版を買ってしまいましたが、2003年のアメリカ版が初出のようです。う、アマゾンには表紙の絵がなかったので気にしてませんでしたが、アマゾンUKを覗いたら、絶対手に取りたくない表紙がこっちを睨んでますね^^; いや、見なかったことにしておこう。

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Wednesday, April 05, 2006

Keeping It Real, by Justina Robson

Keeping It Realキャスリーン・アン・グーナンと並んで、女性ではたぶん今一番ハードなSFを書くジャスティナ・ロブスンが、自ら遊びで書いたと公言するアクション・アドヴェンチャーのシリーズ、Quantum Gravity の第1作が 5月に登場するようです(ペーパーバックはこちら)。まあいつもの作品は、どシリアスなテーマに書き込みすぎるほどに書き込んだ濃密な作風で、正直読むのが少々しんどいくらい重いので、気軽に書き飛ばしてくれてやっと並みの作家の本格SFレベルになるんじゃないかと期待してるんですが。

しかしでも、サイボーグ少女探偵を主人公に、量子爆弾により時空の構造が崩れ、妖精郷と霊界と冥界が交錯する世界で、叛乱する自身の機械化された体を持て余しながら、妖精のロックスターのボディガードをするという、SFとファンタジイとミステリとロマンスがごった混ぜになった設定では、はっきり言ってロブスンでもなければまともな作品にはならないんでは。いやまあ「電脳女性ハードボイルド・ロマンス、天使付き」のライダ・モアハウスという、これまた信じられないけどむちゃくちゃ面白い作品を書く作家もいますけど。このあたりの作品、萌え狙いのカバーで読者を騙して売っちゃうどこかの出版社がすぐに取り上げそうな気も^^) ロブスンやモアハウスならわたしも大プッシュですね。

Living Next Door to the God of Loveともかく、SFやファンタジイの好きな部分を何でも放り込んだ、恥も外聞もない娯楽作品で、最初から最後まで楽しく、もしシリアスなテーマが忍び込んでいたら全くの偶然か、作者の不注意のせいということなので、楽しみに待ちましょう。いやでもこの人、Natural History のときにも同じようなこと言ってたんですが、あれってバリバリのハードSFだったんでは……?

ちなみに今年はロブスンの当たり年で、アメリカでリプリントされた1作目と3作目の Silver Screen と Natural History が同時にディック賞の候補になり(この顔ぶれなら Natual History が受賞してもおかしくない)、本国イギリスでは4作目の Living Next Door to the God of Love が英国SF協会賞にノミネートされているという繁盛振り(まあこちらはストロスかライマンでしょう)。いま一番ホットな女性SF作家として、ブレイクは間違いないぞ。

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Thursday, October 20, 2005

It's Superman!, by Tom De Haven

It's Superman!スーパーマンを主人公にした物語といえば、ノヴェライゼーションみたいなものかと思いきや、若き日のクラーク・ケントが、自分の力に戸惑いながら、スーパーマンとして成長していく過程を描いたものだそうです。1930年代の雰囲気をしっかり描いた歴史小説的な作品でもあるみたいですので、とくにスーパーマンに興味のないわたしでも、なんか惹かれてしまいますね。この間はミッチ・カリンのシャーロック・ホームズを主人公にした A Slight Trick of the Mind で大感動しましたんで、これもひょっとしたら当たりかも。

作者のトム・ドゥ・ヘイヴンは、新聞の連載漫画創生期のころの20世紀初頭を背景にした Derby Dugan 3部作や、コミックスの原作・脚本で有名な人だそうで、他の作品もなんか気になりますね。

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