Spaceman Blues: A Love Song, by Brian Francis Slattery
う~ん、今年はスーパーヒーローものの当たり年みたいですよ。なんだかよくわからないこの本も大当りになりそうな予感が。なんせ、marginalia のお好み系の作家がこぞって誉めてます。ハーラン・エリスン®は別格としても、ジェフ・ヴァンダーミアにジェイ・レイク、キャサリン・M・ヴァレンテときては、むむむ、と思う人も多いのでは? わたしの好きなジム・ニプフェルのとぼけた紹介も目を引きます:
“It happens only very rarely--you read a book by a new author, and all you can say is ‘wow.’ That was the case with Spaceman Blues: ‘Wow.’ To say anything more would mean the inevitable descent into cheap clichés--‘hooked by the first paragraph,’ ‘dizzying,’ ‘a visionary roller-coaster ride,’ ‘reminiscent, if anything, of Thomas Pynchon in its scope, its explosive imagination, the swirling, jazzy flow of the prose.’ So much can and should be said about Mr. Slattery's debut--but I think I'll just stick with a simple ‘wow’--or if you prefer a visual summation, try an exclamation point on fire.”
じつはマット・チーニイがかなり前から大絶賛だったので気になっていたのですが、チーニイによれば Oh Pure and Radiant Heart、Octavian Nothing、The Exquisite,、The People of Paper と並ぶような特別な本ということで、これはやはり、むむむ、ですね。
ほかにもピンチョンとスタインベックを掛け合わせてダリが描いたような作品とか、ディックのパラノイアをミエヴィルや(コリイ・)ドクトロウとたち打ち出来るような現代のスタイル・センスで包んだ作品、なんていってる人もいますんで、読む前からいろいろ想像がふくらみます。ドクトロウの傑作 Someone Comes to Town, Someone Leaves Town みたいな作品なのかも、とか。
でまあ、実際のところストーリイはどっちでもいいらしいんですが、行方不明になったニューヨークの社交家の足取りを追う恋人のウェンデル・アポジーを主人公に、トラウトとサーモンという二人の刑事を初めとするたがの外れた人々を配し、失せ物が見つかるというニューヨークの裏側の世界ダークタウンを舞台にして、カルトな終末宗教や異星人の侵略を描いたものとのこと。ウェンデルはすべてを投げ打ってスーパーヒーローのキャプテン・スペースマンにならなきゃいけないみたいですね。で、このスラップスティックに重ね合わせて、ジャジーな文章でニューヨークにちなんだサブカルチャーや移民の社会が描かれる、シュールでポストモダンな作品といわれては、つい触手が伸びちゃう人も多いんじゃないでしょうか。
ブライアン・フランシス・スラタリーはこれがデビュー作だそうです。作者のサイトで第1章が読めますが、たしかに情報過多の寄り道の多い叙述で力をためておいて、時々文字通り爆発させてしまう文章ですね^^) いやでも緊迫感とは無縁のこのカバー、かわいいですけど、どう見ても手抜きとしか思えませんね。Tor から出てるんでいちおうSF……なのかな~? ハードカバーと同時にペーパーバックも出てますんで、あの京都の某洋書専門店にはもう並んでるかもしれませんよ。店員さんが手をつけちゃってなければ、ですが。
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