Thursday, January 24, 2008

"All Shall Be Well; And All Shall Be Well; And All Manner of Things Shall Be Well" by Tod Wodicka

All Shall Be Wellノリッジの聖ジュリアンの名句を引用したタイトルに、中世の衣服を着た老人と子供の絵の表紙……。一見マジメ本の顔をしていて、でも、よ~く見るとなんかちょっとヘン? チェックしてみたら予感的中で、やっぱりヘンな本っぽいですねぇ。これは買いかも。

チュニック着て、フライドポテトは拒否して(←中世にジャガイモはまだ入ってきてなかったから)何から何まで中世の生活を再現してニューヨークに暮らす変人バートですが、プラハで息子のトリスタン(!)を捜していく過程で、彼の悲しい過去が次第に分かっていくという、聞くも涙、語るも涙……じゃなくて、めちゃくちゃ楽しいお話みたいです。ってことは、表紙は親子再会の場面の想像図なのかな?

Amazon.com にブラーブがいくつか載ってるんですが、ケヴィン・ブロックマイヤーなんて結構楽しんじゃったみたいですね。しかし US版の表紙はしょぼすぎ。

All Shall Be Well

アマゾンUK には、これがデビュー作になる著者自身によるこの本のサウンド・トラックが編まれているので、BGM 流しながら読むのもいいかも?

BBC による著者インタヴューとちょこっと抜粋はこちら。

そういえばノリッジの聖ジュリアンって、『聖書の絵師』にご本人が出てきてたはず(未読ですがそのうち……)。

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Thursday, January 17, 2008

"Blank Gaze" by Jose Luis Peixoto (Author), Richard Zenith (Translator)

Blank Gaze

あらら、この表紙のイラストはアンドリュー・クルーミーでお馴染み(?)のサラ・ファッネリじゃないですか~。

と相変わらず表紙にひっかかって、昨年11月のイギリスでの出版時からチェックを入れてレヴューが出てくるのをひたすら待っていたのですが、レヴューが出てくる前にイギリス・アマゾンでは取り扱いがマーケット・プレイスだけになっちゃいました。あまり売れてないんでしょうか? ちょっと残念。

舞台はポルトガルの寒村。その厳しい環境の中で生活する人々の愛憎の物語のようなんですが、出てくる人たちがちょっとヘンです。悪魔に「寝取られ男」と告げられた主人公、その相談にのる120歳の老人、指でくっついてるシャム双生児やら、盲目の娼婦やら……。そんなユニークな人々が織りなすのは、どこにでもあるような普遍的な物語。それが美しい詩的な文章で書かれているそうです。

この作品、ポルトガル語からの英訳なのですが、ポルトガルの小説家であり詩人でもある作者のジョゼ・ルイス・ペイショートは、なんとこの作品で 2001年にジョゼ・サラマーゴ賞を受賞しているんですね。そう言われると、う~ん、やっぱり気になります。

こちらで彼の詩を数編読むことができます。ちょっとユニーク? その下にあるサラマーゴの彼に対する評 "Jose Luis Peixoto is one of the most suprising revelations in recent Portuguese literature. I have no doubts that he is the safe promise of a great writer." って、スゴイお墨付きじゃないですか?

日本語訳の出版も決まっているようなので、英訳で読むか邦訳で読むかも悩みどころですね(って、UK版は相変わらず値段高いですが、米国でも今年発売されるようです)。

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Thursday, October 25, 2007

"Sputnik Caledonia" by Andrew Crumey

Sputnik Caledonia突然ですが、今年はスプートニク打ち上げ 50周年ってご存知でした? あれからもうそんなに経っちゃったんですね~(って、生まれてなかったですよ)

それにあやかったのかどうか、来年出るアンドリュー・クルーミーの新作がSputnik Caledonia! でも、カレドニア(=スコットランド)のスプートニクだなんて、なんかあさっての方向に飛んできそうな予感……。シノプシスによると、舞台は戦後共産主義国家になった1970年代のスコットランド。筋金入りの社会主義者の父を持つ主人公は宇宙に行くことを夢見るも、資本主義国家のアメリカ人と同乗するなんてまっぴらというわけで、相対性理論を読みながらも、ロシア語の独習にいそしんだりするのですが、結局は閉鎖的な研究所に落ち着いて……って、あれ? そういえばクルーミーって、子供の頃は宇宙飛行士になりたかったけど、理論物理学の研究者になったんでしたっけ。ポーランドの研究所を訪れたことが結構強い印象として残ってるとも過去に語っていたので、実体験が色濃く反映された平行世界ものみたいですね。

物理学、文学(ディドロらの啓蒙主義やプルーストなど)、哲学、音楽が融合した、コミカルな筆致が特徴のクルーミーの作品群ですが、この新作も今までのそんな路線を引き継いでいるのかもしれません。

で、何より期待しちゃうのが、この作品、昨年イギリスの Northern Rock Foundation Writers Award を受賞、見事6万ポンド(!)を獲得して完成させたものだということ。この賞は、イギリス北東部に住み、過去に何冊か出版物があるものの、才能があるのに生活の糧を得るため作家業に専念できない人をサポートするために設立されたのだそうです。クルーミー・ファンとしては、今までの中の最高傑作が読めるんじゃないかとわくわくしてしまいます。

表紙のへなちょこイラストは、前作メビウスクジラと同じ人みたいですね。結構好きなんですよ~。

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Thursday, October 18, 2007

Santa Esperanza, by Aka Morchiladze

Santa Esperanza @ amazon.de黒海に浮かぶサンタ・エスペランサ島を舞台にした作品だそうですが、なんと~、36冊の小冊子がフェルトのケースに入った構成で、地図も付いているんだとか。中身はラヴ・ストーリイや手紙、おとぎ話や神話・伝説・年代記、はたまた e-mail から新聞記事、日記や戯曲、憲法の抜粋から遺言書、そしてなんと6人でプレイするカードゲームまで、ありとあらゆる形式の創作で成り立ってるようですね。

作者はグルジアの……、ええと……、読めません^^; ううむ、なんとか無理してアカ・モルチラッゼということにしておきましょう。グルジアでは人気作家で、テレビのパーソナリティやソープオペラの作者、スポーツ・コラムの執筆など多方面で活躍しているんだとか。本名は Gio Akhvlediani だそうですが、なおさらわかりません^^;

そう、サンタ・エスペランサというのは架空の島で、グルジアの状況を重ね合わせているんですね。グルジア人とトルコ人、イタリア人とユダヤ人、そしてブリトン人が住むこの島国では、内部抗争に外国人が加担して様々なドラマが起きているようです。詳しい内容はこちらの記事で。

でまあ、形式も含めてむちゃくちゃ面白そうなんですが、問題は今のところグルジア語以外ではドイツ語訳しかないということ。ということで、リンクは amazon.de に張っていますが、ま、どうせつまみ読みするだけなんで、ドイツ語版買っちゃいましょうかね。ちなみに、グルジア語っていうのはこういう言語らしいです……って、ページのタイトルに作者の名前がありますので多分そうなんでしょう^^; ううむ、google translation も歯が立たない……って、毎度のことでした。

グルジアでは 500冊ほど売れればベストセラーで、2,000部売れたら大ヒットということですが、ドイツでは既に本国の5倍ほど売れているとのこと。日本語版は……さすがに出ないでしょうね。ともかく、話の種としてだけでも手に入れる価値はありそうです。

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Tuesday, September 18, 2007

The Last Cavalier: Being the Adventures of Count Sainte-Hermine in the Age of Napoleon, by Alexandre Dumas

The Last Cavalierアレクサンドル・デュマの新作が英訳されたそうですよ……って、デュマが晩年に書いた未完の新聞連載小説で、本の形ではまとまっていなかったものを、研究者が発掘し、本国フランスでは 2005年に出版されたものだそうです。英訳でもハードカバーで 750ページというかなりの大作ですが、これでもデュマの構想の3分の1程度だとか。全体のストーリイ自身はアウトラインが残されているようです。

物語は、デュマが他の作品では書くことのなかったナポレオンの時代を背景にしていて、王党派のサント・エルミン伯エクトールの受難と冒険を描いたものだとか。結婚を目前にしてナポレオンに捕まったエクトールは、一船員として海外に赴くことを条件に解放されますが、まあデュマの主人公ですから、行く先々で剣を片手に大活躍、女性にはモテモテで……という、ファンには堪えられない面白さだとか。人間相手の戦いだけでなくなにやら秘境冒険ものも楽しめるようですよ。エピソードを積み重ねるような展開の中に、有名人の伝記やファッション、風俗、地理、歴史への含蓄がユーモアを交えて語られ、中途で終わっているからといって面白さが減じるものではないそうです。

そもそもデュマの父というのが、一時はナポレオンのライバルと目されたほどの軍人ながら、若くして亡くなったため、デュマ一家はかなり苦労したとのこと。ということで、ナポレオン寄りというよりは、相当揶揄を込めて書かれていることが想像されますが、作者の意図は、エクトールを視点人物として、ナポレオン時代の主な出来事をパノラマ的に描くことにあったとのこと。まあそのあたりのお勉強は横に置くとしても、モンテ・クリスト伯的な立場の主人公がダルタニャン風の活躍をするというだけで、これはちょっとほっておけないかも^^)

ちなみに以上はデュマの大ファンを自認する有名な書評家、Michael Dirda のレヴュウのかなりいい加減な受け売りですので、きちんとした内容を知りたい方はそちらを参照ください。

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Monday, September 17, 2007

Into the Wild, by Sarah Beth Durst

Into the Wildギリシャ神話の神々が人間に混じって生活しているのなら、童話の登場人物たちも負けてはいません。

主人公ジュリーはフツーの女の子で、ほんとにフツーの生活をしたいんですけど、ママのラプンツェルがパーティーを開くといえば、もうどうしょうもなく sexist な7人の小人の爺さんたちがやってくるし、ママの知り合いのシンディーは暴走狂だし、兄のブーツはメイド服に身を固めたネコだし、おばあちゃんは悪い魔女だし、ベッドの下ではほとんど叢にまで落ちぶれた「野生」ができそこないの魔法の品を吐き出しているし、とてもじゃないけど友だちを家に呼ぶことさえできない……。

ということで、中世の終わりに力を失った「野生」の元を逃れてきた童話の主人公たちが、人間界でごくフツーの生活を送ってるんですが、なにやら野生が力を取り戻し、大変なことになっちゃうみたいです。野生に乗っ取られた町と、人質に取られた母を救うため、ジュリーと兄とおばあちゃんが童話の世界で大活躍。

このパターンは最近流行りみたいですね。児童書では Tom Trueheart とか Into the Woods なんてのがありましたし、アニメの Hoodwinked や大人向けコミックの FablesCastle Waiting なんてのが出ています。この作品はちょっとチック・リット的なYAものっていうあたりが新鮮ですかね。作者のサラ・ベス・ダーストはこれがデビュー作のようです。期待しましょう。

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Gods Behaving Badly, by Marie Phillips

Gods Behaving Badly (uk edition)Greek Myths とか書いてあるとつい Geek Myths と読み間違えてしまう今日このごろですが、なんか読み間違えても問題なそうな本が出てました。

誰も信じるものがなくなって力を失ったギリシャの神々が、人間の世界に紛れてそれぞれの特技を生かしながら暮らしています。狩人のアルテミスは犬の散歩師、美の神アフロディテはテレフォン・セックスのオペレータ、太陽神アポロはテレビの超能力者……って、う、いかにもありそうな感じ^^;

Gods Behaving Badly (us edition)まあギリシャの神々ですから、もともと「超」が付くくらい人間的なので、行儀良く人間世界に収まってるわけはないんですが、どうもごく普通のカップルが神々のいざこざに巻き込まれて振り回されてしまうスラップスティックのようです。なかなかお馬鹿で楽しそう。英米ともにカバーもなかなか洒落たデザイン。どちらも地色がオレンジなのは、なにか理由があるんでしょうか(オレンジ賞を狙っているなんていうベタな背景はないとは思いますが^^;)。

ニール・ゲイマンの American Gods やスティーヴン・シェリルの『夢見るミノタウロス』、はたまたジョン・C・ライトの Children of Chaos のイメージですかね(いやまあ、最後のはロジャー・ゼラズニイの「アンバー」の雰囲気なのでちょっと違うでしょうけど)。

作者のマリー・フィリップスはブロガーとしても有名な人だったらしいですが、デビュー作を機に引っ込んじゃったんでしょうか、invite only になっちゃってますね。

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Monday, August 20, 2007

Michael Swanwick Has Got a Blog

The Dragons of Babelマイクル・スワンウィックがブログを始めました。始めた理由というのがものすごく即物的なんですが、編集者のデイヴィッド・ハートウェルに、12月に出る新作長編 The Dragons of Babel のプロモーションをするように仰せつかったというもの。ただ単にカバーとあらすじを載せておくだけではどこにでもあるので、ちゃんと面白くして、欠かすことなく週に2~3回更新するようにいわれたということで、作品の周辺情報や創作の背景を紹介してくれるようですね。

ただまあ今のところうんざりするような用語集や、わけのわからないプロット・ダイアグラムが解説もなくリストされているばかりで、かえって混乱するんですけど^^; 唯一見てピンとくるのはステファン・マルティニエールのカバーの原画で、うーん、これはかっこいいぞ。う、Stations of the Tide がヒューゴー賞を取ったことになってますぜ、スワンウィックさん^^; 受賞した本人が取り違えるくらいですから、読者がヒューゴーとネビュラを取り違えるのも無理はないのかも。まあすぐ訂正されるでしょうけど。

発表済みのいくつかの短編を含めて長編化と聞いていましたけど、ヒューゴー賞のノヴェラ部門の候補になっている "Lord Weary's Empire" は、逆にこの長編から切り出して独立した作品として読めるように手を加えたものとのこと。ともかく、1994年の The Iron Dragon's Daughter の姉妹編ということで期待もふくらみます。スワンウィックの長編はしょうもない Bones of the Earth 以外はどれもいいので(とくに Jack Faust は絶品です)、そろそろ邦訳が検討されてもいいんじゃないでしょうか。短編のうまさだけじゃなく、ストーリーテラーとしても素晴らしいということがよく分かりますよ。まあいまひとつ曖昧なまま話を終える作家なので、結末は弱いですけど、素直にケリをつけないところがまた味があるというか。

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Sunday, August 19, 2007

Run, by Ann Patchett

Run (uk edition)ををを、あの『ベル・カント』のアン・パチェットの新作ですよ。アメリカ版は10月なのに、イギリスでは今月先行発売というのは、『ベル・カント』がイギリスで特に売れたってことなんでしょうかね。たしかにアメリカでは、口コミや書店のプッシュという草の根的なサポートでじわじわ売れて評判になった本で、普通の全米的なベストセラーとはかなり趣きを異にしてましたもんね。日本では一部でトンチンカンな読まれ方をしただけで、なんとも不思議なことにほとんど評判になりませんでしたし。いやでも、わたしにとっては年間ベストのむちゃくちゃいい本でした。

ということで新作の Run にも期待してしまいます(って、過去の作品もかなり集めたのに、ぜんぜん読んでないのはなぜだ^^;)。前作はノンフィクションでしたので、小説としては 2001年の『ベル・カント』以来ということになりますかね。

大家族を夢見ながら果たせなかった妻は、一人息子では満足せず、黒人の兄弟を養子にします。ところがその妻は、兄弟がまだ幼いうちに他界し、二人の世話は主人公に委ねられたのでした。兄弟は健やかに育ち、兄は魚類学者になるべくハーヴァードへと進学し、弟は聖職者になりたいという希望を持ち始めます。とはいえ、ボストンの市長を務めたこともある主人公は、息子の誰かを政治家にしたいという願いを捨て切れません。兄弟は父親に引きずられてジェシー・ジャスソンの演説を聴きに行きますが、反発した弟は、勢い余って道路へと飛び出してしまいます。そこへ向かってくる一台の車……。間一髪で急場を救ったのはひとりの黒人女性でしたが、彼女は大怪我を負い病院へ。その場に残された11才の娘を代わりに世話する主人公ですが……どうもそこには隠された動機があり、その後の登場人物たちの人間ドラマのなかで、秘密が解きほぐされていくようですね。

Run (us edition)『ベル・カント』のようなインパクトのある設定ではないようですが、パチェットを読む楽しみは、極上の文章で語られる、ユーモアと痛みに等分に筆を割いた包み込むような物語なので、正直、特別に凝った筋立ては要らないのかもしれません。『ショコラ』のジョアン・ハリスにも通じるような、いつ奇跡が起こっても不思議じゃない(けど物理的には起こらない)張り詰めたような雰囲気はきっと健在なんでしょうね。そう、ほんの少しでもショックを与えると結晶が現われる、あるいは凝縮が始まるという過飽和状態を維持するのが天才的にうまい作家なんです。

基本的にアメリカ作家の作品は米版で買うことにはしてるんですが、夏に出るのに雪景色という英版の表紙もきれいですので、英版買っちゃいましょうかね。ま、結局両方そろえちゃいそうな気もしますけど。ちなみに『ベル・カント』は珍しく邦訳も読みましたけど、パチェットの独特の雰囲気は翻訳ではなかなか出ないので、原書で読むことをお薦めします。それにおそらくこの新作はよほど評判にならないと翻訳されないでしょうし。

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Thursday, August 16, 2007

Spaceman Blues: A Love Song, by Brian Francis Slattery

Spaceman Blues: A Love Songう~ん、今年はスーパーヒーローものの当たり年みたいですよ。なんだかよくわからないこの本も大当りになりそうな予感が。なんせ、marginalia のお好み系の作家がこぞって誉めてます。ハーラン・エリスン®は別格としても、ジェフ・ヴァンダーミアにジェイ・レイク、キャサリン・M・ヴァレンテときては、むむむ、と思う人も多いのでは? わたしの好きなジム・ニプフェルのとぼけた紹介も目を引きます:

“It happens only very rarely--you read a book by a new author, and all you can say is ‘wow.’ That was the case with Spaceman Blues: ‘Wow.’ To say anything more would mean the inevitable descent into cheap clichés--‘hooked by the first paragraph,’ ‘dizzying,’ ‘a visionary roller-coaster ride,’ ‘reminiscent, if anything, of Thomas Pynchon in its scope, its explosive imagination, the swirling, jazzy flow of the prose.’ So much can and should be said about Mr. Slattery's debut--but I think I'll just stick with a simple ‘wow’--or if you prefer a visual summation, try an exclamation point on fire.”

じつはマット・チーニイがかなり前から大絶賛だったので気になっていたのですが、チーニイによれば Oh Pure and Radiant Heart、Octavian Nothing、The Exquisite,、The People of Paper と並ぶような特別な本ということで、これはやはり、むむむ、ですね。

ほかにもピンチョンとスタインベックを掛け合わせてダリが描いたような作品とか、ディックのパラノイアをミエヴィルや(コリイ・)ドクトロウとたち打ち出来るような現代のスタイル・センスで包んだ作品、なんていってる人もいますんで、読む前からいろいろ想像がふくらみます。ドクトロウの傑作 Someone Comes to Town, Someone Leaves Town みたいな作品なのかも、とか。

でまあ、実際のところストーリイはどっちでもいいらしいんですが、行方不明になったニューヨークの社交家の足取りを追う恋人のウェンデル・アポジーを主人公に、トラウトとサーモンという二人の刑事を初めとするたがの外れた人々を配し、失せ物が見つかるというニューヨークの裏側の世界ダークタウンを舞台にして、カルトな終末宗教や異星人の侵略を描いたものとのこと。ウェンデルはすべてを投げ打ってスーパーヒーローのキャプテン・スペースマンにならなきゃいけないみたいですね。で、このスラップスティックに重ね合わせて、ジャジーな文章でニューヨークにちなんだサブカルチャーや移民の社会が描かれる、シュールでポストモダンな作品といわれては、つい触手が伸びちゃう人も多いんじゃないでしょうか。

ブライアン・フランシス・スラタリーはこれがデビュー作だそうです。作者のサイト第1章が読めますが、たしかに情報過多の寄り道の多い叙述で力をためておいて、時々文字通り爆発させてしまう文章ですね^^) いやでも緊迫感とは無縁のこのカバー、かわいいですけど、どう見ても手抜きとしか思えませんね。Tor から出てるんでいちおうSF……なのかな~? ハードカバーと同時にペーパーバックも出てますんで、あの京都の某洋書専門店にはもう並んでるかもしれませんよ。店員さんが手をつけちゃってなければ、ですが。

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