Thursday, January 31, 2008

27 Big Picture Illustrators nominated!

先日「ネスレ子どもの本賞」の中止という残念なニュースをお伝えしたばかりですが、その運営に当たっていたブックトラストが、絵本の良さをもっと知ってもらおうという「ビッグ・ピクチャー」キャンペーンを展開中です。

ブックトラストによると、このたび2000年以降に英国で出版された絵本の中から、27人の優れたイラストレータが出版関係者らによって選出されました。さらにこの中からビッグ・ピクチャー委員会が10人を選び、3月31日のボローニャ国際絵本原画展で結果が発表されるとのこと。選ばれた10人のイラストレータは、絵本の重要性をアピールする活動に今年いっぱい従事するそうです。詳細についてはビッグ・ピクチャーのオフィシャル・サイトで。

ロングリストに入っているエミリー・グラヴェットミニ・グレイジョエル・スチュワートは、marginalia でも以前ご紹介したお気に入りイラストレータでもあるので楽しみ♪ このキャンペーンで絵本のイラストレータにもっと脚光があたるようになって、良質な作品がたくさん出版されるようになるとうれしいです。

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Friday, January 25, 2008

Nestlé Children's Book Prize discontinued

子供たちも審査に参加するというユニークなシステムをとり、23年間も続いてきた英国の「ネスレ子どもの本賞(旧スマーディーズ賞)」に終止符が打たれることが、運営側のブックトラストとスポンサーのネスレによって確認されました。

双方ともが、文学賞より他に活動の重点を移してきたための、ごく自然な結果だと言っていますが、Guardian の記事で指摘されているように、発展途上国で行っている母乳の代わりに粉ミルクを使うキャンペーンで非難を浴びているネスレが、児童書の賞のスポンサーになっていることが物議をかもしているのが最大の原因と言えそうです。実際、昨年「5歳以下の部」で "When a Monster is Born" が金賞を受賞したショーン・テイラーは、賞は受けたものの、子供の健康より利益優先の「粉ミルクキャンペーン」を批判して、ネスレから出される賞金の小切手の受け取りは拒否したそうです。それについての記事はこちら

子供たちも楽しみにしている歴史のある賞を、大人たちの都合で廃止してしまったような結果になって、なんだか後味が悪いですね。

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Shirley Jackson Award established!

亡くなってから 40年以上経ちますが、日本でも『くじ』『ずっとお城で暮らしてる』と再刊が続いて人気の、アメリカのホラー作家シャーリイ・ジャクスン。その彼女の名を冠した賞 The Shirley Jackson Award が設立されたと公式発表がありました。前年に出版されたサイコサスペンス、ホラー、ダークファンタジーの作品の中から、長編、短編、コレクション、アンソロジーなどのカテゴリ別に授与されるとのこと。賞の詳細や今回の審査員についてはオフィシャル・サイトでご確認ください。

賞の顧問には、ファンタジー界の敏腕編集者エレン・ダトロウや、夫で作家のジェフと共編のファンタジー系アンソロジーをいくつも出しているアン・ヴァンダーミア、そしてラヴクラフトの研究家S.T.ヨシらが名を連ねているので、もしかして既存のファンタジー・ホラー系の賞より marginalia 好みの結果が出るんじゃないかと、ちょっと期待しちゃいますね。

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Thursday, September 13, 2007

R.I.P. Madeleine L'Engle (1918-2007)

ちょっと時間がたってしまいましたが、やっぱりマデレイン・レングルが亡くなったことは書いておかないと。わたしの読書の好みを決定付けた1冊、『五次元世界のぼうけん』を書いた人ですから。というより、小学生時代にこういうむちゃくちゃ面白い本があったから、読書にとりつかれてしまったんですよね。

A Wrinkle in Time1962年に出版された『五次元世界のぼうけん』(A Wrinkle in Time)は、今の時代でいえばハリー・ポッターに匹敵するような位置付けにあるんでしょうけど、そのぶっとび具合はハリポタなんか目じゃありません。C・S・ルイスのナルニアやフィリップ・プルマンのライラの冒険あたりと並べてみるのが適切かと思いますが、なんともヘンテコな世界を背景に、個性的な登場人物たちによる奇妙な冒険が語られ、実質はファンタジイなんですが、擬似SF的な理屈っぽさが大きな魅力になってます。かなり宗教的なモチーフも顔を出しているんですが、ここまで面白ければそれも邪魔にはなりません。

正直、大人の目から見れば、作者の興味の対象をなんでも放り込んだような気紛れな展開は、けっして上手いとはいえませんけど、不思議なものならなんにでも興味を示す子供にしてみれば、そこが楽しみなんですよね。最終的にあんまりまとまりのよくない4部作になり、そこから枝分かれして別のシリーズも生まれたりしましたが、大人になってから読んだ2巻目以降は印象に残りませんでした。日本では復刊時にたしか3巻目まで揃って出ましたが、それほど話題にならずに消えてしまったように思います。までも、こういう作品はそれでいいのかな。

アメリカではずっと絶版にならずに読み継がれてきて、今年の5月には4冊揃いのペーパーバックの新装版も出ているようですので、久しぶりにまた手を出してみたくなりました。先ごろのロイド・アレクサンダーに続き、子供時代の愛読書の作者が亡くなってしまうのは寂しいですけど、相変わらず今でもどこかで初めてこの本を読む子供がいるのかと思うと、ちょっと微笑ましくなりますね。あんまりヘンテコな趣味に染まらないといいんですが^^)

苗字の  L'Engle は、フランス語発音の「ラングル」かと思ってましたが、英語的に「レングル」と発音するのが正しいようですね。作者の人となりや作品の概要についてはNYタイムズの追悼記事がよくまとまっています。

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Tuesday, August 14, 2007

2007 World Fantasy Awards Nominations

世界幻想文学大賞の候補が発表になりました。

一昨年の大豊作に比べて、去年は長編がいまひとつパッとしなかったかったかなと思ってたんですが(って、ほとんど読まずにいってます^^;)、やっぱり長編部門はかなり意外なセレクションですね。カシュナーとウルフは順当としても(読まずにいってます^^;)、評価の高かったジェイムズ・モロウの The Last Witchfinder とか、個人的には不満な点もあったもののジェフ・ヴァンダーミアの Shriek: An Afterword は当然入ってくるものとばかり思ってました。まあモロウの作品はキャンベル賞の次点になってますので、SFという認識なんでしょうか。

代わりにヴァレンテとリンチが入っているのは新鮮ですが、キングがここに顔を出すというのは、久々の力作ということなんでしょうかね。quark さんの感想をお聞きしたいところ。一番人気のナオミ・ノヴィクが漏れたのは、やっぱりファンタジイとしては新味に欠けるということでしょうね。

とはいえ、いかにもといった面子が揃った短編部門を除くと、ホラーにも目を配り、ベテランと若手のバランスを考慮した作為的なセレクションという印象もあります。去年はメインストリーム色が強かったので、今年はジャンルの枠を明確にし、かつ偏りがないように配慮したということなんでしょうか。いっぽうで、常連ばかりが並んで少々窮屈な感じもしますけど。ま、ゲイマンが顔を出していないだけでもまともとはいえますが(笑)

アーティスト部門にはミラーやピカシオとともにショーン・タンがリストされてますが、オーストラリア以外では本のカバー等を手掛けることは少ないので、やっぱりあの作品が評価されたんでしょうね^^)

受賞作の発表は 11/1-4 にニューヨーク州で開かれるワールド・ファンタジイ・コンヴェンションで。ううむ、本音をいうとワールドコンよりこちらのほうが見てみたいです。

NovelThe Orphan's Tales: In the Night Garden

NovellaMap of Dreams

Short Fiction

  • "The Way He Does It", Jeffrey Ford (Electric Velocipede #10, Spr 2006)
  • "Journey Into the Kingdom", M. Rickert (F&SF May 2006)
  • "A Siege of Cranes", Benjamin Rosenbaum (Twenty Epics, All-Star Stories)
  • "Another Word for Map is Faith", Christopher Rowe (F&SF Aug 2006)
  • "Pol Pot's Beautiful Daughter (Fantasy)", Geoff Ryman (F&SF Oct/Nov 2006)

AnthologySalon Fantastique

CollectionThe Empire of Ice Cream

Artist

Special Award: Professional

Special Award: Non-Professional

  • Leslie Howle (for her work at Clarion West)
  • Leo Grin (for The Cimmerian)
  • Susan Marie Groppi (for Strange Horizons)
  • John Klima (for Electric Velocipede)
  • Gary K. Wolfe (for reviews and criticism in Locus and elsewhere)

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Tuesday, June 19, 2007

2007 Locus Awards Winners

Rainbows Endローカス賞が 6/16 に発表になってましたね。ま、ほとんどこれといって面白い結果ではありませんけど、エレン・ダトロウのベスト・エディターと、ジョン・ピカシオのベスト・アーティストはうれしいですね。オフィシャルなアナウンスはローカスの記事へ。

Best Science Fiction Novel

Rainbows End, Vernor Vinge (Tor) [our comments]

The Privilege of the SwordBest Fantasy Novel

The Privilege of the Sword, Ellen Kushner (Bantam Spectra)

Best First Novel

Temeraire: His Majesty's Dragon/Throne of Jade/Black Powder War, Naomi Novik (Del Rey; Voyager); as Temeraire: In the Service of the King (SFBC) [our comments]

His Majesty's DragonBest Young Adult Book

Wintersmith, Terry Pratchett (Doubleday UK; HarperTempest)Wintersmith

Best Novella

"Missile Gap", Charles Stross (One Million A.D.)

Best Novelette

"When Sysadmins Ruled the Earth", Cory Doctorow (Baen's Universe 8/06)

Best Short Story

"How to Talk to Girls at Parties", Neil Gaiman (Fragile Things)

Best Magazine

The Magazine of Fantasy and Science Fiction

Best Publisher

Tor

Best Anthology

The Year's Best Science Fiction: Twenty-Third Annual Collection, Gardner Dozois, ed. (St. Martin's)

Best CollectionFragile Things

Fragile Things, Neil Gaiman (Morrow; Headline Review)

Best Editor

Ellen Datlow

Best Artist

John Picacio

Best Non-Fiction

James Tiptree, Jr.: The Double Life of Alice B. Sheldon, Julie Phillips (St. Martin's)

Best Art Book

Cathy & Arnie Fenner, eds. Spectrum 13: The Best in Contemporary Fantastic Art (Underwood)

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Monday, June 11, 2007

Mythopoeic Awards 2007 Finalists Announced!

ミソペイイク(=ミソピーイク)ソサイアティは、主としてJ・R・R・トールキン、C・S・ルイス、チャールズ・ウィリアムズといったオックスフォードの文芸サークル《インクリングズ》の研究をしている、ファンタジー文学と神話の非営利の愛好団体。そのメンバーが毎年選ぶミソペイイク賞の最終候補が発表されました。今年のアダルト部門は、marginalia でお馴染みの作家がけっこう入っていますね~。受賞者は8月3~6日のミスコンXXXVIII(←コダワリのギリシャ数字)で発表されるそうです。

Mythopoeic Fantasy Award for Adult Literature

* Peter S. Beagle, The Line Between
* Susanna Clarke, The Ladies of Grace Adieu
* Keith Donohue, The Stolen Child (our comments here)
* Patricia A. McKillip, Solstice Wood
* Susan Palwick, The Necessary Beggar
* Tim Powers, Three Days to Never (our comments here)

個人的には「パワーズがんばれ~♪」なんですが、さあ、どうでしょう(そういえば、AdieuBeggar は読まれたんでしょうか)

他部門の候補についてはオフィシャルサイトで。

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Sunday, May 13, 2007

2006 Nebula Awards Winners

ネビュラ賞が発表になりました。相変わらずノミネーションの段階から非難の雨嵐で、SF関係で(読者にとって)一番役に立たない賞であることを誇示しているようですが(笑)、今年は全部門功労賞みたいな結果ですね。

いやまあマクデヴィットもケリーもビーグルもハンドも個人的には好きな作家ですので、わたしとしては文句はないんですが。まあこのあたりを敢えて除けて選ぶという道もあるんじゃないかという気もしますけど。ほんと、地味な賞になっちゃいました。

SeekerNovel: Seeker, Jack McDevitt (Ace Books)

Novella: Burn, James Patrick Kelly (Tachyon Publications)

Novelette: "Two Hearts", Peter S. Beagle (F&SF Oct/Nov 2005)

Short Story: "Echo", Elizabeth Hand (F&SF Oct/Nov 2005)

Magic or MadnessScript: Howl's Moving Castle, Hayao Miyazaki, Cindy Davis Hewitt, and Donald H. Hewitt

Andre Norton Award: Magic or Madness, Justine Larbalestier (Razorbill)

Damon Knight Memorial Grand Master Award: James Gunn

Author Emeritus: D.G. Compton

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Thursday, May 03, 2007

2007 Arthur C. Clarke Award Winner

Nova Swingクラーク賞が 5/2 に発表されたようですが、M・ジョン・ハリスンですね~。受賞作は久々のSF復帰となった 2002年の前作 Light の続編ということで、ポストモダンなスペース・オペラと呼ばれた前作に対し、こんどは一体なにをやってるんでしょう。いやまあ Viriconium でもそうですが、普通の意味での続編なんて書くわけのない作家なんで。

クラーク賞はその名前の印象に反して、かなり文学寄りの作品が受賞することが多いので、今年はリディア・ミレあたりかな~と個人的には思ってたんですが(ジャン・モリスのものは旧作に書き下ろしの短編を加えたものなので、新作としての意味は薄い)、なんかジャンルとメインストリームのバランスが取れていそうな作品に落ち着いたみたいですね。後追いになりますが、これも読まないと。

表紙がひどいという人が多かったんですが、わたしにはこの色使いや構図がぴったりくるんですけど、やっぱり趣味悪いんでしょうか。

候補作もリストしておきます。

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Wednesday, April 25, 2007

England: The Biography -- Peter Acroyd's New Project

伝記作家であり、小説家でもあるピーター・アクロイドが 2000年に発表した大都市ロンドンの「伝記」 "London: The Biography" はベストセラーとなりましたが、その彼がランダムハウスを離れてマクミランとこのたび契約したのが、2011年刊行開始予定で全6巻になるイギリスの「伝記」 "England: The Biography" です。ロンドンだけでは飽きたらず、とうとうイギリス全土にまで手を広げちゃうんですね。

Times Online のこちらの記事を読むと、まだアクロイドの頭の中に漠然としたアイディアがあるだけみたいなのですが、出版社の期待のほどがうかがえます。

アクロイドの場合、伝記を書きながら、その周辺を素材とした小説も平行して書いてしまうことがあるので、どんな副産物が出てくるのかも楽しみです。

それにしても最近、翻訳出ませんね~。

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より以前の記事一覧