Tuesday, October 30, 2007

Where the Wild Things Are on Film

モーリス・センダックの『かいじゅうたちのいるところ』が実写映画になるそうですよ……っていっても、公開は 2008年の10月ということで、1年も先の話ですが。

監督のスパイク・ジョーンズとともに脚本を担当するのはなんとデイヴ・エガーズ。もともとは絵本なので、長編映画化ということでは余計なエピソードで膨らませて台無しにならないかという点が心配ですが、心理的な描写に重きを置いて原作に奥行きを与えるようなしっかりした台本になっているようです。期待できそうですね。

この作品の映像化ということでは、作曲者のオリヴァー・ナッセンが指揮したグラインドボーンのオペラのライヴ映像を見たことがありますが、正直音楽ともどもかなり退屈だったような記憶が……^^; センダックが美術を担当した『三つのオレンジへの恋』のほうが遥かに印象に残っています。アニメ化ということでは 1983年にディズニーが手を出しかけたということですが、実現しなくてよかったですね。これとは別に 1988年にセンダックを絵を元に短いアニメが制作されたそうですが、こちらは youtube に上がってます。画質はいまいちで残念ですが、なかなかチャーミングな出来なのでリンクしておきましょう。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

Monday, October 08, 2007

minuscule - la vie privée des insectes

minuscule (coffret 4 dvd) @ amazon.frなにやらサボっているうちに10月になってしまいましたが、うわっ、これは買わなきゃというビデオを見つけてしまったんでご紹介。ミニュスキュールというフランスの虫アニメなんですが、いや、これはもう虫嫌いでも見るしかないでしょう。サイトのサンプルだけでも楽しいです。ひょっとして有名なんでしょうか?

リアルな虫の生態ならまだしも、3D の虫アニメなんてほんとは趣味じゃないんですが、これは一目見て惚れ込んでしまいました^^; それなりのデフォルメ、擬人化はありますが、実写の田園風景を背景に、原型を残しながらかわいくアレンジされたちょっと皮肉な虫たちの、半分リアルで半分ナンセンスな無言のコメディがなんともいえません。ときどき使われるサティのピアノ曲が妙にしっくりきますね。

minuscule, vol.1 @ amazon.fr minuscule, vol.2 @ amazon.fr minuscule, vol.3 @ amazon.fr minuscule, vol.4 @ amazon.fr


DVD が4巻出ているようですが、それぞれに5分ほどの掌編が20本ほど入っているみたいです。Amazon.fr では、10/16 に出る4巻セットが送料入れて50ユーロほどですので、思わず注文してしまいました。オンライン・ショップでも買えるようですが、バラバラに4巻買ってこれに送料が乗るとなるとちょっと高そうです。

| | Comments (5) | TrackBack (0)

Wednesday, May 30, 2007

Neverwhere

Neverwhere - The Complete Series (PAL) @ amazon.co.uk原作者のニール・ゲイマンのノヴェライゼーションがいまひとつだったので、あんまり気にしてなかったんですが、完全版のDVDが安く出てたので買ってみたら、なんと、ものすごく面白いじゃないですか。

物語は人のいいことだけが取り柄の青年が、たまたま血まみれの女性を助けたところ、ロンドンの地下世界で起きてる事件に巻き込まれて……というよくある展開ですが、映像だと背景の雰囲気や、奇妙なキャラクタの個性がもろに迫ってきて、なんともわくわくしてしまいますね。

ネバーウェア10年前の、それもテレビ向けのドラマとして作られた作品とはいいながら、この間見た MirrorMask がほとんど前菜程度にしか見えないという出来のよさ。ノヴェライゼーションを読んだ人にも読んでない人にも、是非ともオススメの作品です。日本語版もちゃんと出てるんですね、ちょっと高いですけど。

とはいえ、冷静になって考えてみると、この作品のストーリイ・アークって、ゲイマンの一昨年の作品『アナンシの血脈』とほとんど一緒じゃないですか。進歩がないといおうか、普遍的といおうか……^^;

| | Comments (3) | TrackBack (0)

Wednesday, May 02, 2007

Persepolis: Le Film

Persepolis: Le Filmひぇ~、知らないうちに『ペルセポリス』がアニメになってました。MySpace のオフィシャル・サイトでトレーラーが見られますが、白黒のマルジが動いてます!

本物のおばちゃんマルジのインタヴュウ映像もありますね。なんていってるのかはわたしに訊かないでください^^; サトラピ自身がコ・プロデューサとして参加しているので、これは間違いなく期待できるでしょう。

フランスでは 6/27 封切りのようですが、果たして日本でも公開されるんでしょうか。まあどうせ DVD になったら即座に買いますけど。ともかく楽しみ~^^)

| | Comments (5) | TrackBack (0)

Sunday, March 04, 2007

"The Illusionist"(DVD) -- Adaptation of Millhauser???

an audience for einstein人様にお借りしたDVDにいちゃもん付けるのもなんですが、スティーヴン・ミルハウザー原作『幻影師、アイゼンハイム』の映画化……と思って観たこの "The Illusionist"、なんか全然違うストーリーなんですけど~。多少の改変であればとやかく言いませんが、ここまで別物にしてしまうのは罪ではないかと。原作を読んだのがかなり前だったので、自分の記憶違いかと思って思わず読み直してしまいました。

原作は、ハプスブルク帝国という華やかなひとつの時代の終焉と、迫り来る不穏な時代の狭間のウィーンの雰囲気を、華麗で人の心をざわつかせる奇術を行うアイゼンハイムという芸名のユダヤ人幻影師を通して描いてみせた作品。反ユダヤ主義のウィーン市長カール・ルエガーや、マイヤーリンク事件のマリー・ヴェッツェラなど、当時の世相を語るうえで重要な人物たちの名がきちんと盛り込まれていて、アイゼンハイムの奇術自体もその時代の人々の心理をとても上手く取り込んでいます(奇術は映画のほうでも同じものです)。

一方映画のほうは、ハプスブルク帝国皇太子レオポルト(←誰?)が求婚する貴族の女性とアイゼンハイムの身分違いのロマンスという、原作には全然ないアイディアがメイン・ストーリーとなっていてとってもびっくり。皇帝フランツ・ヨーゼフの名(と肖像画)が出てくるとはいえ、歴史的な事象には拘らず、ただひたすらアイゼンハイムの恋の行方を追うばかり。要は、アイゼンハイムの愛する人が高貴な人物のフィアンセであれば誰でもよかったわけで、原作から感じ取ることのできた危ない方向に進む時代の空気(個人的にはこれが重要だと思っているのですが)などは、取るに足らないこととして無視されちゃった気がします。レオポルトは実在のルドルフ皇太子で、例のマイヤーリンクのスキャンダルを別の形で見せたつもりだとは思うのですが、このヴァージョンはあまりにも単純すぎて何とも……。そしてこれが物語の中心となっているので、原作とは全く異なった趣の作品になってしまっています。アイゼンハイムがブラチスラバ出身のユダヤ人で、原作の最後であのようなマジックを見せたのも、とても象徴的なことだと思うんですけど、映画ではなんか全然違う方向にいっちゃいました。そもそもアイゼンハイムが警察にマークされたのも、出自とかが関係して大衆を扇動する危険があったからだと思うんですが、映画では皇太子の彼女(アイゼンハイムの幼なじみでもある)と仲がよかったからということになってます。

たとえミルハウザーの原作とは全く別物と考えても、ありきたりの「身分違いの恋」とロミオとジュリエットの下手くそな焼き直しのような展開、そして想像した通りの安易な結末(あまりにも予期していた通りなので、最後になってやっと気づいたウィーン警察署長のもったいぶった演技が、これまた苛つかせます)と、かなりお粗末と感じるのは私だけでしょうか。19世紀末前後の人が、ワイシャツ姿で腕まくりして奇術をするっていうのも、なんだかとっても違和感で、恋人のゾフィ役の女優さんは妙に現代的でミスマッチ。マジックも、原作で想像を膨らませて読むのと違って、たとえCGを使っても目の当たりにしてしまうとしょぼいです。

と、いろいろけなしてしまいましたが、Amazon.com とか見ても、すご~~く評判いいんですけど、なぜ??? でもでも、ミルハウザー・ファンの quark さんが見たら絶対怒っちゃうと思います。

注:日本未発売のため、リンクは Amazon.com です。

| | Comments (6) | TrackBack (1)

Tuesday, February 27, 2007

Carnivàle

アメリカ製のTVドラマですが、ものすごい傑作でした。1週間ほど前に見終わったんですけど、シェル・ショックがまだ抜けず、何を見てもゴミにしか見えない状態が依然として続いてるほどです^^;

Carnivale - Series 1 (PAL) @ amazon.co.uk大恐慌下の米中南部、砂嵐が吹き荒れるダスト・ボウルと呼ばれるオクラホマ、テキサス、ニュー・メキシコあたりを巡業する、旅のサーカス団に拾われたひとりの青年と、季節労働者相手の教会を作ろうと腐心する伝道師の、光りと闇の化身としての対立を描いたダーク・ファンタジイなんですが、登場人物それぞれのキャラクタ造型から、時代と土地の雰囲気をそのまま切り取ってきたかのような画面作りと、作品の隅々まで本物感に満ちていて、プロットを抜きにしても、片時も目を離せないようなインパクトのある作品です。

荒れ果てた荒野の一軒家で、助けを拒んで死んでいく母親を看取った脱獄囚ベン・ホーキンズは、借金の形に土地を取り上げ、家を取り壊そうとするブルドーザーと睨み合っているところを、通りかかった旅のサーカス一座に拾われます。小人の世話役を頭に、髭女やトカゲ男、ヘビ使いや接合双生児と、おなじみのフリークを擁したサーカスは、盲目の透視術者や、昏睡状態の母親の助けで占いを行うタロット占い師、クーチ・ダンスを見せるストリップ小屋の一家や、観覧車やメリー・ゴー・ラウンドの解体・設置を行う職人など、かなりの大所帯でした。ところが、すべてを取り仕切る支配人は、世話役を通して行き先の指示を出すだけで、トレーラーに篭ったまま誰にもその姿を見せません。

いっぽう、眠るたびに見知らぬ場所で兵士に追われる悪夢に魘されるベンも、本人にも理解できない秘密を抱えていました。幼いベンの腕の中で生き返った猫を、血相を変えて溺れさせてしまう母。そう、ベンにはヒーラーの能力があったのです。サーカスの倉庫の中で、なぜか若い頃の母の写真を見つけたベンは、すべての鍵を握る見知らぬ父の行方を捜し始めます。

そのころ、西海岸では、メソジスト派の牧師、ジャスティン・クロウが、姉のアイリスとともに、教区の信徒からはつまはじきにされている季節労働者を救済しようと、新しい教会作りに追われていました。中国人の娼館を目にして、神の啓示に打たれたジャスティンは、所有者に幻覚を見せ、その弱みに付け込んでそこを巻き上げます。ところが、町の有力者との軋轢の中、やっと教会の形を取り始めた娼館は、6人の子供を中に閉じ込めたまま放火にあい、放心状態のジャスティンは野に出ることを余儀なくされます。

Carnivale - Series 2 (PAL) @ amazon.co.ukということで、ストーリイは、セカンド・シーズンの最後でのベンとジャスティンの直接対決に向かって、少しずつ謎を明らかにしながらじわじわと進むわけですが、父の足跡を追いながら次第に自分の力を自覚していくベンと、ある種ピカレスクなジャスティン牧師の受難の二つのストーリイ・ラインと平行して、サーカスの内部でも、妻と娘の美人局をしているストリップ小屋の一家を中心に、ひざを砕かれてプロ野球を追われた職人のリーダーと、タロット占いの娘を交えたインテンスなドラマが繰り広げられます。

かなり色っぽいシーンや、ホラーがかった過激な場面も出てくるんですが、この作品の凄いところは、過度に特撮に頼るような安っぽいところが見当たらないことですね。やりすぎてばかばかしさを感じさせることの一切ない、大人向けのドラマになってます。じつは、ファースト・シーズンはビルド・アップのためのかなりスローな展開で、メイン・プロットが加速を始めるのはセカンド・シーズンになってからなんですが、一般には評価の高いセカンド・シーズンよりも、個人的にはさりげない描写でじわじわと話を進めていくファースト・シーズンにより惹かれました。

結末へ向けての怒涛の展開はトップ・クラスのホラーとして息をもつがせぬものがありますが、実際は最後の直接対決は並みのホラーと比べかなり地味に終結します。といって緊張感はいささかなりとも弱まることはありません。そこに至るまでの緻密な積み重ねが、過度の演出を必要としないんですね。正直、見るべきところは、クライマックスのドラマチックなシーンにではなく、その過程のディテールにあります。

弟を愛し、周りの人々に慈悲の心を向けながらも、時として冷酷な行為も厭わず、地獄で弟と再会することを覚悟しているジャスティンの姉の屈曲した性格など、ちょっと他では見ない凄みがありますが、アイリスに限らず、メインの登場人物のひとりひとりが、信じられないほどそれぞれの役にぴったりはまった演技をしてます。カリスマティックなジャスティン牧師のピカレスクな魅力はいうに及ばすですが、主役のベンも、線の細いナイーヴなキャラクタを最大限に生かして、自分の置かれた立場をよく理解できていない青年を完璧に表現しています。

いっぽう、サーカスの日常を描いた部分は、演出というよりも実際の作業シーンをそのまま撮影したようなリアリティを感じさせ、特に、汗と埃にまみれた擦り切れた作業服が、全然衣装に見えないという徹底ぶりには感服しました。すべてのシーンにこのリアリズムへのこだわりが発揮され、荒唐無稽になりかねない物語を地に繋ぎとめる役割を果たしてます。やりすぎていない音楽や効果音も見事ですね。どの点をとっても一級品で、文句のつけようのない映像作品っていうのは、初めて見たような気がします。ということで、ホラーやダーク・ファンタジイのファンであれば必見なのはもちろんですが、密度の高いドラマがお好きな方にも強くお薦めします。

じつはこの作品、当初は3部6シーズンで企画されていたそうなんですが、十分な視聴率が稼げず、1部が完結したセカンド・シーズンで打ち切りになったという、とても信じられない悲劇に見舞われています。ということで、かなりの謎を残したまま、続編への布石でセカンド・シーズンは終わるんですが、ともかくここまで見られただけでも幸運といえるかもしれません。続編でもこれ以上のものが出来るとは思えませんので。

シリーズの構成は1時間弱のエピソードが12編でワン・シーズンとなっていて、全部見ると20時間強の長丁場になるんですが、特にセカンド・シーズンは途中で置けないので、見始めるのにそれなりの覚悟が必要です。日本のアマゾンでも US版は手に入るようですが、本家アマゾンともどもかなり高いです。いっぽう、アマゾンUKでは PAL版がむちゃくちゃ安く手に入りますので、画像のリンクは UK版にしています。オフィシャル・サイトはこちら

| | Comments (3) | TrackBack (0)

Sunday, February 25, 2007

"The Invention of Hugo Cabret" by Brian Selznick

The Invention of Hugo Cabret「自動人形」といえば、ブライアン・セルズニックの新作のこの児童書も気になります。

主人公は1930年代のパリに住む 12歳の孤児ユーゴー。彼は死んだ時計職人の父の跡を継いで、駅舎の時計の管理をしています。彼の夢は父の遺していった壊れた自動人形を元通りに直すこと。そのメカニズムについては父から伝授されていたものの、なにやら他にいろいろヒミツがあるような……?

500ページ以上あるのですが、絵本でもなく、グラフィック・ノヴェルでもないけれど、挿絵のページがかなり多いということなので、かなり読みやすそうです。この作品の紹介サイトで、最初の部分をフラッシュで見ることができるのですが、ちょっと映画を見ているような感じになりますね。同サイトによると、セルズニックはこの作品を書いているあいだ古い映画をいっぱい見たそうです。彼のオススメは『パリの屋根の下』。これは私も昔見て、内容は忘れちゃったけどけっこう好きだった記憶があります(主題歌はとてもいいですよね)。ちょうど同時代なので、そんな雰囲気が盛り込まれていそうですね。

Variety.com によるとこの作品は、マーティン・スコセッシ監督で実際に映画化されるようです。全然関係ないけどスコセッシ、その前に遠藤周作の『沈黙』も撮るんですね。

| | Comments (33) | TrackBack (0)

Thursday, February 15, 2007

The Last Unicorn ― 25th Anniversary Edition

The Last Unicorn @ Conlan Pressピーター・S・ビーグルの『最後のユニコーン』を原作とした 1982年のアニメの DVD が、リマスターされて25周年記念版として再発されました。

ところが、いろいろ背景があって、この DVD がいくら売れてもビーグルの懐には一銭も入らない状況になっています。まあ以前にも触れましたが、製作には参加したものの、適切な契約をしていなかったようですね(ちなみにお母さんは昨年亡くなられたようです)。

そこで、この DVD を自分で売っていくらかでも儲けを得ようということで、Conlan Press と組んで、現在サイン版の販売を行っています。アマゾンなどと比べるとかなり高くなりますが、売上の半分はビーグル自身に行くそうです。

ということでわたしも注文してみましたが、本体 $24.98 + 送料 $13.00 で、トータル $37.98 になりました。まあ主人公が手塚治虫のユニコみたいなタッチで、あんまり好みでもないんですけど、欲しかったんですよね^^; ちなみに、アマゾンの場合はこちらになりますが、現時点の価格で $16.99 + $5.98 = $22.97(計算合ってますでしょうか^^;)と、3分の2ほどで買えます。

カバー・イメージのリンクは Conlan Press にしています。リージョン・コードは多分 "1" でしょうねえ。届きましたら確認してお知らせします。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

Monday, February 12, 2007

The Box of Delights

The Box of Delights (PAL) @ amazon.co.ukジョン・メイスフィールドの The Midnight Folk(夜中出あるくものたち)と The Box of Delights(喜びの箱)といえば、ペーパーバックを読み始めたころに発見した作品で(例によって表紙につられて買ったんでした^^; 昔から変わってませんね~)、もう何度となく読み返した愛読書なんですが(といっても4~5回ですけど)、The Box of Delights のほうは 80年代に BBC が映像化したものが DVD になってましたんで、懐かしくなって見ちゃいました。

クリスマスを控えて帰省した少年ケイが、人形芝居のおじいさんから預かった不思議な箱をめぐって、狼や鼠を操る悪人アブナーと戦う話なんですが、じつは、メイスフィールドの作品が楽しいのは、メイン・プロットがうんぬんというより、途中で出てくるわけのわからない気まぐれの部分なんですね。そう、魔法の力を秘めた箱は、ケイを歴史や神話・伝説の世界へと連れて行きます。なんとも行き当たりばったりな不思議に満ちた展開は、『とぶ船』や『魔法のベッド』、『砂の妖精』などと共通した、トールキン以前の古き魔法の世界ですね。

さて、肝心のテレビ・ドラマのほうですが、時代の雰囲気を生かした画面作りで、主人公のケイの演技も達者ながらやりすぎでなく、脇を固めるキャラも個性的でなかなかの出来。ただし、箱によってもたらされる超自然の部分は、笑っちゃうほど稚拙なアニメや安手の特撮で作られていて、とても 80年代のレベルではないですね。一緒に入っているメイキングによれば、なかなか画期的なプロジェクトだったらしいのですが、どう見ても 10年は遅れてる感じです。手作りの良さを生かした……といいたいところですが、普通の映像の部分が出来がいいだけに、正直いって少々興醒めでした。

物語は教会でのクリスマス礼拝を最後に持ってきた季節ものなんですが、ハラハラドキドキの不思議な冒険も無事に終わって、祝祭的な雰囲気はまさにクリスマスにぴったりです。までも、原作の場合は寄り道が多いせいかかなり混乱していたプロットが、すっきりと整理されてて少々もの足りない印象もありますね。動物もあんまり出てこないし……って、それは The Midnight Folk のほうでしたか。The Box of DelightsThe Midnight Folk

じつはこの作品、最初に読んだときは何が起こっているのかよく分からなくて、たぶん自分の英語力が不足してるんだろうな~と思ってたんですが、まともに読めるようになってからでもやっぱりよくわからず、そんなあたりも逆に魅力になってます。そのため、すっきりさせてしまうのは決して正解ともいえないんですが、ディズニーあたりがお金をかけて作ったいかにもな映像でないのは幸運だったかもしれないですね。ともかく、懐かしい雰囲気の、原作のファンでも安心して見られるごく良質な作品です……ただし、特撮の部分では必死で笑いをこらえましょう^^)

| | Comments (5) | TrackBack (0)

Saturday, February 10, 2007

"Dralion" by Cirque Du Soleil

Cirque Du Soleil - Vol. 3現在6回目の来日公演中のカナダのサーカス集団シルク・ドゥ・ソレイユ。見たい見たいと思いながら、実は私まだ見に行ったことないんですよね~。今回の演目は日本初お目見えの "Dralion" なのですが、へへへ、実は DVD で見ちゃいました♪

詳細については公演のホームページに譲るとして、いやもうとにかくすごかったです。Dralion とは、東洋の Dragon と西洋の Lion の合成語で、東西の融和を象徴しています。実際出演者の多くが中国人で東洋と西洋の混成団となっていて、サーカス団自体がそれを体現しているんですね。中国雑技団の、人間業とは思えない柔軟でアクロバティックな演技を見たことがある方もいるかと思いますが、その難易度と芸術性を最大限に高めて西洋的なサーカスに融合させたという感じで、ただただ感嘆。見てるほうが、ひぇ~~と怖じ気づいてしまうような技を軽々とこなしてしまうのには、もう羨望の眼差ししか向けられませんでした。

DVD にはメイキング・シーンも収録されてるのですが、昆明での練習の場面を見ていると、最初から楽々とあんな難しい演技ができたわけではないのね~、とこれまた感動。監督の夢である高い目標に向かって、失敗を恐れず全員が一丸となって努力した結果なんですね。世界にはいろいろな対立がありますが、人種や言葉なんて関係ないんだと改めて感じました。

ド派手な衣装に包まれ、怪しいファルセット・ヴォイスの歌声にのせて繰り広げられるアクロバティックな演技は、今回も多くの人を魅了することでしょう。幕間のコントもおばかで(難しくてもそれを感じさせないところがまたスゴイ)とっても楽しいんですよ~。まだ未体験の方は、ぜひとも公演か DVD でご覧になることをオススメします。

イギリスのアマゾンでは "Cirque Du Soleil - Vol. 3" として、Alegria、La Nouba、Dralion、Saltimbanco の4枚が入った DVD Box Set がなんと £5.97(80% off)で売っているので超オススメ。Dralion、Varekei、Journey Of Man、A Baroque Odyssey の Vol.1 と Nouvelle Experience、Saltimbanco、Reinvente、Magie Continue の Vol.2(なんで演目がダブってるんでしょうね~)も先週までは 10ポンド未満だったのに、なんか値上がりしてます。それでも安いですけど、一緒に買っておけばよかったと激しく後悔中。

これ見たら、公演も行きたくなってしまいました。

注:日本ではこのボックスセットは出ていないので、リンク先はイギリスのアマゾンです。

| | Comments (5) | TrackBack (0)