"Bob" by "Weird Al" Yankovic
何年か前のウィアード・アル・ヤンコヴィックの歌なんですが、なんでここに突然登場したかというと……まあこのビデオを見ていただきましょう。ボブ・ディランのふりをして相変わらずお馬鹿で楽しいんですが、1フレーズごとに歌詞を見ていくと……ひぇ~、おバカなふりをしながらこの人天才。なんとも凝ってますね~。ちゃんとボブ・ディランでなければいけない深~い理由があったのでした^^)
何年か前のウィアード・アル・ヤンコヴィックの歌なんですが、なんでここに突然登場したかというと……まあこのビデオを見ていただきましょう。ボブ・ディランのふりをして相変わらずお馬鹿で楽しいんですが、1フレーズごとに歌詞を見ていくと……ひぇ~、おバカなふりをしながらこの人天才。なんとも凝ってますね~。ちゃんとボブ・ディランでなければいけない深~い理由があったのでした^^)
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マイクル・スワンウィックがブログを始めました。始めた理由というのがものすごく即物的なんですが、編集者のデイヴィッド・ハートウェルに、12月に出る新作長編 The Dragons of Babel のプロモーションをするように仰せつかったというもの。ただ単にカバーとあらすじを載せておくだけではどこにでもあるので、ちゃんと面白くして、欠かすことなく週に2~3回更新するようにいわれたということで、作品の周辺情報や創作の背景を紹介してくれるようですね。
ただまあ今のところうんざりするような用語集や、わけのわからないプロット・ダイアグラムが解説もなくリストされているばかりで、かえって混乱するんですけど^^; 唯一見てピンとくるのはステファン・マルティニエールのカバーの原画で、うーん、これはかっこいいぞ。う、Stations of the Tide がヒューゴー賞を取ったことになってますぜ、スワンウィックさん^^; 受賞した本人が取り違えるくらいですから、読者がヒューゴーとネビュラを取り違えるのも無理はないのかも。まあすぐ訂正されるでしょうけど。
発表済みのいくつかの短編を含めて長編化と聞いていましたけど、ヒューゴー賞のノヴェラ部門の候補になっている "Lord Weary's Empire" は、逆にこの長編から切り出して独立した作品として読めるように手を加えたものとのこと。ともかく、1994年の The Iron Dragon's Daughter の姉妹編ということで期待もふくらみます。スワンウィックの長編はしょうもない Bones of the Earth 以外はどれもいいので(とくに Jack Faust は絶品です)、そろそろ邦訳が検討されてもいいんじゃないでしょうか。短編のうまさだけじゃなく、ストーリーテラーとしても素晴らしいということがよく分かりますよ。まあいまひとつ曖昧なまま話を終える作家なので、結末は弱いですけど、素直にケリをつけないところがまた味があるというか。
ををを、あの『ベル・カント』のアン・パチェットの新作ですよ。アメリカ版は10月なのに、イギリスでは今月先行発売というのは、『ベル・カント』がイギリスで特に売れたってことなんでしょうかね。たしかにアメリカでは、口コミや書店のプッシュという草の根的なサポートでじわじわ売れて評判になった本で、普通の全米的なベストセラーとはかなり趣きを異にしてましたもんね。日本では一部でトンチンカンな読まれ方をしただけで、なんとも不思議なことにほとんど評判になりませんでしたし。いやでも、わたしにとっては年間ベストのむちゃくちゃいい本でした。
ということで新作の Run にも期待してしまいます(って、過去の作品もかなり集めたのに、ぜんぜん読んでないのはなぜだ^^;)。前作はノンフィクションでしたので、小説としては 2001年の『ベル・カント』以来ということになりますかね。
大家族を夢見ながら果たせなかった妻は、一人息子では満足せず、黒人の兄弟を養子にします。ところがその妻は、兄弟がまだ幼いうちに他界し、二人の世話は主人公に委ねられたのでした。兄弟は健やかに育ち、兄は魚類学者になるべくハーヴァードへと進学し、弟は聖職者になりたいという希望を持ち始めます。とはいえ、ボストンの市長を務めたこともある主人公は、息子の誰かを政治家にしたいという願いを捨て切れません。兄弟は父親に引きずられてジェシー・ジャスソンの演説を聴きに行きますが、反発した弟は、勢い余って道路へと飛び出してしまいます。そこへ向かってくる一台の車……。間一髪で急場を救ったのはひとりの黒人女性でしたが、彼女は大怪我を負い病院へ。その場に残された11才の娘を代わりに世話する主人公ですが……どうもそこには隠された動機があり、その後の登場人物たちの人間ドラマのなかで、秘密が解きほぐされていくようですね。
『ベル・カント』のようなインパクトのある設定ではないようですが、パチェットを読む楽しみは、極上の文章で語られる、ユーモアと痛みに等分に筆を割いた包み込むような物語なので、正直、特別に凝った筋立ては要らないのかもしれません。『ショコラ』のジョアン・ハリスにも通じるような、いつ奇跡が起こっても不思議じゃない(けど物理的には起こらない)張り詰めたような雰囲気はきっと健在なんでしょうね。そう、ほんの少しでもショックを与えると結晶が現われる、あるいは凝縮が始まるという過飽和状態を維持するのが天才的にうまい作家なんです。
基本的にアメリカ作家の作品は米版で買うことにはしてるんですが、夏に出るのに雪景色という英版の表紙もきれいですので、英版買っちゃいましょうかね。ま、結局両方そろえちゃいそうな気もしますけど。ちなみに『ベル・カント』は珍しく邦訳も読みましたけど、パチェットの独特の雰囲気は翻訳ではなかなか出ないので、原書で読むことをお薦めします。それにおそらくこの新作はよほど評判にならないと翻訳されないでしょうし。
う~ん、今年はスーパーヒーローものの当たり年みたいですよ。なんだかよくわからないこの本も大当りになりそうな予感が。なんせ、marginalia のお好み系の作家がこぞって誉めてます。ハーラン・エリスン®は別格としても、ジェフ・ヴァンダーミアにジェイ・レイク、キャサリン・M・ヴァレンテときては、むむむ、と思う人も多いのでは? わたしの好きなジム・ニプフェルのとぼけた紹介も目を引きます:
“It happens only very rarely--you read a book by a new author, and all you can say is ‘wow.’ That was the case with Spaceman Blues: ‘Wow.’ To say anything more would mean the inevitable descent into cheap clichés--‘hooked by the first paragraph,’ ‘dizzying,’ ‘a visionary roller-coaster ride,’ ‘reminiscent, if anything, of Thomas Pynchon in its scope, its explosive imagination, the swirling, jazzy flow of the prose.’ So much can and should be said about Mr. Slattery's debut--but I think I'll just stick with a simple ‘wow’--or if you prefer a visual summation, try an exclamation point on fire.”
じつはマット・チーニイがかなり前から大絶賛だったので気になっていたのですが、チーニイによれば Oh Pure and Radiant Heart、Octavian Nothing、The Exquisite,、The People of Paper と並ぶような特別な本ということで、これはやはり、むむむ、ですね。
ほかにもピンチョンとスタインベックを掛け合わせてダリが描いたような作品とか、ディックのパラノイアをミエヴィルや(コリイ・)ドクトロウとたち打ち出来るような現代のスタイル・センスで包んだ作品、なんていってる人もいますんで、読む前からいろいろ想像がふくらみます。ドクトロウの傑作 Someone Comes to Town, Someone Leaves Town みたいな作品なのかも、とか。
でまあ、実際のところストーリイはどっちでもいいらしいんですが、行方不明になったニューヨークの社交家の足取りを追う恋人のウェンデル・アポジーを主人公に、トラウトとサーモンという二人の刑事を初めとするたがの外れた人々を配し、失せ物が見つかるというニューヨークの裏側の世界ダークタウンを舞台にして、カルトな終末宗教や異星人の侵略を描いたものとのこと。ウェンデルはすべてを投げ打ってスーパーヒーローのキャプテン・スペースマンにならなきゃいけないみたいですね。で、このスラップスティックに重ね合わせて、ジャジーな文章でニューヨークにちなんだサブカルチャーや移民の社会が描かれる、シュールでポストモダンな作品といわれては、つい触手が伸びちゃう人も多いんじゃないでしょうか。
ブライアン・フランシス・スラタリーはこれがデビュー作だそうです。作者のサイトで第1章が読めますが、たしかに情報過多の寄り道の多い叙述で力をためておいて、時々文字通り爆発させてしまう文章ですね^^) いやでも緊迫感とは無縁のこのカバー、かわいいですけど、どう見ても手抜きとしか思えませんね。Tor から出てるんでいちおうSF……なのかな~? ハードカバーと同時にペーパーバックも出てますんで、あの京都の某洋書専門店にはもう並んでるかもしれませんよ。店員さんが手をつけちゃってなければ、ですが。
ううむ、夏にはむちゃくちゃ鬱陶しいヒーローの登場ですよ。スイスの怪しいキャンディ工場で、ついうっかり溶けたチョコレートの桶に落ちた主人公は(たぶん ISO 9001 の認定は受けてないんでしょうね)、そこに巣くっていた異星生物と一体化して、純チョコレート人間となってしまいます。ウィリー・ウォンカの工場では落ちた人間はチョコレートの原料になりますが、こちらでは逆。誤って死なせてしまった人間を助けるウルトラマンと設定がそっくりですね^^)
で、触れるものすべてをチョコレートに変える能力を身に着けたミダス王のような主人公、悪の道に堕ちてたんですが、FBIに捕まって改心し、エージェント・スウィート(Swete)として、食べ物がらみの犯罪に挑むことになります。なにやら人語を話す異次元犬ジェフリイや、作家のヘミングウェイと知り合いになって、不死を授ける「永遠パスタ」の盗難事件や、なんでも貪り食う3人組と渡り合うようです。かなりノワール・タッチということですが、スウィートなのにブラック・チョコレートですか^^;
なんか悲劇的な結末が待っていそうな予感がしますが(まあチョコレート人間の末路ですからね~)、これはやはり鬱陶しさを我慢しても夏に読まないと実感が湧かないでしょう。脳みそがチョコレートになっちゃいそうな気もしますけど……。
ちなみにこの作品に合うチョコレートといえば、やっぱり中がとろとろになったリンツのリンドールでしょう。げ~っ、考えただけでも涎が……じゃない、吐き気が^^;
世界幻想文学大賞の候補が発表になりました。
一昨年の大豊作に比べて、去年は長編がいまひとつパッとしなかったかったかなと思ってたんですが(って、ほとんど読まずにいってます^^;)、やっぱり長編部門はかなり意外なセレクションですね。カシュナーとウルフは順当としても(読まずにいってます^^;)、評価の高かったジェイムズ・モロウの The Last Witchfinder とか、個人的には不満な点もあったもののジェフ・ヴァンダーミアの Shriek: An Afterword は当然入ってくるものとばかり思ってました。まあモロウの作品はキャンベル賞の次点になってますので、SFという認識なんでしょうか。
代わりにヴァレンテとリンチが入っているのは新鮮ですが、キングがここに顔を出すというのは、久々の力作ということなんでしょうかね。quark さんの感想をお聞きしたいところ。一番人気のナオミ・ノヴィクが漏れたのは、やっぱりファンタジイとしては新味に欠けるということでしょうね。
とはいえ、いかにもといった面子が揃った短編部門を除くと、ホラーにも目を配り、ベテランと若手のバランスを考慮した作為的なセレクションという印象もあります。去年はメインストリーム色が強かったので、今年はジャンルの枠を明確にし、かつ偏りがないように配慮したということなんでしょうか。いっぽうで、常連ばかりが並んで少々窮屈な感じもしますけど。ま、ゲイマンが顔を出していないだけでもまともとはいえますが(笑)
アーティスト部門にはミラーやピカシオとともにショーン・タンがリストされてますが、オーストラリア以外では本のカバー等を手掛けることは少ないので、やっぱりあの作品が評価されたんでしょうね^^)
受賞作の発表は 11/1-4 にニューヨーク州で開かれるワールド・ファンタジイ・コンヴェンションで。ううむ、本音をいうとワールドコンよりこちらのほうが見てみたいです。
Short Fiction
Artist
Special Award: Professional
Special Award: Non-Professional
暑い夏には夏向きの音という手もありますが、北欧叙情派の冬を感じさせるクリアな音にひたるという逆の方法もありますね。ということで、数ヶ月まえに手に入れたんですが、いまでも時々聴いているスウェーデンのバンド、Logh なんていかがでしょう。新作の North は、個人的には今年のベストの1枚に確定の力作です。ジャケットも見るからに涼しげじゃないですか。
Logh を最初に聴いたのは思わせぶりなタイトルの 2002年のデビュー作 Every Time a Bell Rings, An Angel Gets His Wings だったんですが、軽くポストロックを感じさせる、ミニマルな音と繊細なヴォーカルによるほの暗い美メロが印象的でした。それでいてきれいさのみを追って安きに流れるわけではなく、バックの音もリードヴォーカルの声も、時にエッジを秘めたハーシュな側面も見せ、繊細な中に一本芯の通った訴求力のある音作り。
ということで、2作目と3作目も eMusic で落として聴いたんですが、1作目より力強くなってるとはいえ、これが暗いんですよ^^; たぶん最初に聴いたのがこのどちらかだったら、好みじゃないとそれ以上手を出さずに切り捨てていたでしょうね。
で、今年の新作の North にもとくに期待はしていなかったんですが、サンプルを何曲か聴いてみてビックリ。なんと、明るいとはいえないまでも、ドツボの暗さは払拭して、メロディ重視の前向きな音作りに様変わりしているじゃないですか。で、即座に注文。
ひとことでいえばごくごくポップになったわけなんですが、デビュー作で好きだった硬質なデリケートさを残しながら、音のひとつひとつに磨きをかけてはるかにパワーアップしてます。単にポップになったというよりは、1曲1曲を丁寧に作ってるんですね。音色が一定しているので最初から最後までの一体感はありますが、よくよく聴くとそれぞれの曲想はバラエティに富んでいて、ほんと、名曲揃い。冒頭から、あ、この曲いい、と思ったそばから、次の曲も、その次の曲も、負けず劣らず印象的という経験はなかなか得られないんじゃないでしょうか。
じつは、英米盤が当分出ないということだったので、バンドのサイトで注文してスウェーデン盤を買ったんですが、予約のサイン盤専用の注文窓口と間違えてレギュラー盤を注文してしまったことに後から気づき、コンファメーションのメールにダメ元で(ミーハーにも)サインのお願いをしたら、なんと、メンバーが揃うまで1週間ほど待っていられるならサインしてくれるという暖かいお言葉。ということで、本来の窓口より少々安い値段で無事サイン盤を入手しました……といっても、6人の殴り書きでジャケットが汚くなってるだけなんですが^^;
ちゃんとした窓口で注文した知り合いにあとから訊いたら、そちらは誰だかわからない Lando というサインがひとつポツンとあっただけということで、訝しんでました。どうもリードヴォーカルのニックネームが Lando のようです。ううむ、間違えて得することも時にはあるんですね。ということで、音だけじゃなく、たった1枚のCDでも親切に対応してくれるバンドに敬意を表して、名盤認定と行きましょう。ちなみに、バンド名の Logh はどう発音するのか訊いたんですが(ロッホ・ネス見たいな喉の摩擦音かと思って)、答えてくれませんでした。説明するのもややこしい音なんでしょうか。ちなみに日本盤では「ログ」の表記になっているようです。
さて、リンクしようと思ってアマゾンを覗いたら、なんと~、日本盤が6月に出てるじゃないですか(6/9 発売っていうのはシャレですか^^;)。しかもボーナス・トラックが2本付き。う~む。
さてさて、夏ですから夏向きのスカッとした話でいきましょう。
こちらでちょこっと触れましたカメの表紙がかわいい The Neddiad ですが、やはり期待通りの脱力感バッチリの楽しい作品でした。ナンセンスなストーリイ展開ということでは、イギリスのロウル・ダールに対し、アメリカのダニエル・ピンクウォーターここにありといった感じでしょうか。まあダールのシニシズムや、イギリス的ないびりの伝統は微塵も見られず、いかにもアメリカといったおおらかさや、根っ子にある真摯な姿勢がなんとも心地よい作品です。日本ではほとんど無名というのが信じられない、アメリカの秘宝といってもいいんじゃないでしょうか。
時代は 1940年代末から 50年代初頭にかけてでしょうか、シカゴに住む靴紐王ウェントワースステイン一家は、ハリウッドに出来た帽子の形のピザハウスでピザを食べてみたいというネディーの願いに応えて、大乗り気になった父親に率いられてロサンゼルスに引っ越すことになります。大陸横断の豪華特急スーパー・チーフに乗り込み、3日間の旅に出かけた一家ですが、アリゾナで一時停止の際に、ネディーは置いてきぼりにされてしまいます。というのが、駅に隣接したインディアンの民族展示場に見入っていたネディーは、時間の感覚を失っていたのでした。ネディーはそこで、シャーマンのメルヴィンから、笛を吹きながら踊る男が刻まれたカメの形の石を手渡されます。
やむなくホテルに泊まり次の列車を待つネディーですが、街ではウェスタン・カーニバルの真っ最中で、案内されたのはただひとつ残っていたいわくつきの部屋。そう、夜になるとやっぱり出ました、行儀のよい、ベルボーイの幽霊が! とはいえ、姿かたちは少年ながら、死んで 50年経つというこの幽霊、さまざまな宿泊客と出会い、なかなか経験を積んでました。いっぽう、カーニバルでは、ダートオニオン(ダルタニャン)を初めとした剣戟ものの主役で有名な花形役者の息子と知り合いになり、ネディーはこれからロサンゼルスに帰るという彼らの車に同乗させてもらうことになります。一度グランド・キャニオンを見てみたいというベルボーイのビリーも一緒にいくことになりました。
さてさて、グランド・キャニオンを空から眺めようという一行は、小型のプロペラ機に乗り込みますが、そこにはどうしてもパラシュートを身につけていたいといいはる東欧なまりのみょうちきりんな男、サンダー・ユーカリプタスも同乗してました。そして、空の上で、ユーカリプタスはネディーに銃を突きつけ、カメのお守りを奪います。パラシュートを開き、グランド・キャニオンへと消えていくユーカリプタス。はてさて、シャーマンから受け継いだ大事なお守りを無くしたネディーはいったいどうするんでしょうか……。
いやまあ、結末間際まで、少々ナンセンスでスラップスティックな話が進んでいきますので、あんまり心配はいらないんですけどね。ともかく無事にロサンゼルスへたどり着き、家族と再会したネディーは、役者の息子につられてミリタリ調の学校に通い、天然のタール・ピットから現われたサーベル・タイガーやマンモスの骨格に驚き、一見しとやかなお人形さん、じつはカウボーイ役者の父親譲りの親分肌の女の子と知り合いになり、友人のサーカス一座を訪ねたりしながら、新しい仲間たちと共に、カメ石を狙うさらなる悪巧みに立ち向かいます。揃いの黒服に身を固めた恰幅のよい十人組の警官なんていう文字通り人間離れした怪しい脇役も登場しますよ(たぶん他の作品にも出てくるキャラじゃないかと思いますが)。シャーマンのメルヴィンとも意外な形で再会しますし……って、この人、じつはずっと出ずっぱりなんでした^^;
さてさて、カメ石については、お約束どおり地球の運命に関わる重大な秘密が隠されていて、それを受け継いだネディーは、世界の安定を保っているパワーの源の力を借りて、太古の地神を鎮めるというなかなかクトゥルーふう……というよりは、かなりニュー・エイジふうの展開が待っているんですが、ピンクウォーターの場合、じつはお話のまとめの部分はどっちでもいいんですよね。まあのほほんな展開で気ままに寄り道しながら、最後にはきちんとまとめるというのは作者の生真面目さの表れではあるんですが、ピンクウォーターの真髄はほんとは寄り道にあります。このあたりがね~、誰でも知ってるベストセラーにならずに、その素晴らしさを発見した人たちによって支えられたロングセラーになっている原因でしょうね。Lizard Music なんかも、決して有名作品ではありませんが、かなり以前の出版にもかかわらず、絶版にならずに読み継がれているようです。
作者がこの作品で試みたのは、あからさまなメッセージの押し付けではなく、ごくシンプルに、作者が子供時代に好きだったものを、決してノスタルジイではないリアルタイムの視点で綴った、いわばエッセイを物語の形で発展させたものといえるでしょう。そう、50年以上前の風物を描きながらも、作者のワクワク感は今の読者にダイレクトに伝わってくるはずです。いつの時代を書こうとも常に「今」となる、ノスタルジイの通用しない児童書という枠組みがまさにピッタリの作品ですね。そんなあたりが大人が読んでも感心してしまう秘密じゃないでしょうか。
ううむ、暑さでぼけ~っとしてきて、最後のほう、何をいいたいんだか自分でもよく分からない紹介になりましたが、ともかく、のんびりと夏を過ごすには最適の本ですよん^^Y
なんてこと! marginalia、2週間以上も更新が滞っているじゃないですか~。というわけで、ドツボからちょこっと這い出てきました。なんかほとんどワールドコン・ヒューゴ賞特集と化していますが、空気の読めない私はそんなこと気にせず全然違う話題行っちゃいます。
20世紀スコットランド文学の金字塔ともいえる(いいすぎ?)"Lanark" の翻訳がやっとこさ日本で出る(はず)のアラスター・グレイですが、本国英国では "Poor Things" 以来10年以上ぶりの新作長編 "Old Men in Love" が今年10月に出ちゃいますよ~。
シノプシスによると、イギリスの労働党政権下ペリクレス時代のアテネ、ルネッサンス期のフィレンツェ、ヴィクトリア朝のサマーセット地方がごちゃまぜになって、スコットランドのグラスゴーから語られる、虚実ないまぜのアラビアン・ナイト形式の枠物語とか。意味不明? 大丈夫! グレイ・ファンの quark さんが味見して感想書いてくれますから!(あっちじゃなくて、こっちに書いてね> quark さん)
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