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Saturday, April 14, 2007

redRobe, by Jon Courtenay Grimwood

End of the World Blues が英国SF協会賞を受賞したジョン・コートネイ・グリムウッドですが、こちらのインタヴュウによれば、2000年の作品 redRobe が日本に売れたということですので、遠からず邦訳で読めそうです。ということで、昔書いたレヴュウを引っ張り出してみました(懐かしい^^;)。グリムウッドの作品の中ではド派手なほうで、ベースラインは暗いとはいえノリのいいアクションものになってます。ちなみに、作者の代表作アラベスク3部作の紹介はこちら

redRobeサイバーパンクの実体が近未来を舞台にしたハードボイルドだったとすれば、その現在形ともいえるこの作品は、疾走感を加味した近未来アクションものというべきか。ガジェットを多用したいびつな未来は、心象風景というよりは背景のリズムと化し、行動による心理描写というよりは、行動そのものが目的となる。ハイ・ペースな場面展開とざらついた文体は雑然とした現代を活写する。マゾヒスティックな暴力描写はイギリスのお家芸であるが、無慈悲な現実を臆面もなく描き出せるのもイギリスならではのこと。サイバーパンクの後継ぎは、アメリカを離れて、イギリスに住み着いたといえるのかもしれない。

現実とは微妙に異なるタイムラインに属するちょっと先の未来。世界はローマ・カトリック教会と経済機構ワールドバンクに支配されている。女性法王ホアンがヴァチカンの金庫から数百万ドルを持ち出したまま、自殺同然の行動でデモ隊に蹂躙され死亡したことが、様々な波紋を投げかけていた。

日本人の血の混じる少女メイは、スペインの私娼窟から、シルヴェスター神父と名乗る男に連れ出され、声を出せないように唇を縫い付けられたまま、衛星サンサラへと連れ去られる。チベット仏教徒が宙に浮かべた巨大マニ車サンサラは、ダライ・ラマと AI により管理され、国連の難民収容所として機能していた。マイは、おまえの新しい名前はホアンだと告げられる。

かたや、メキシコ。頭蓋に BGM を鳴り響かせ、ヤマハにまたがり最後の仕事へと向かうアクスル・ボルハは、相棒のコルトの忠告に従わなかったばかりにターゲットを仕損じる。 AI 仕様のスマートガン、コルトを失い、捕縛されたアクスルは、枢機卿サント・ドゥックより、極刑を逃れることを条件に、ある仕事を押し付けられる。

メキシコを統治する枢機卿は、法王の使途不明金のスキャンダルのため、その地位を脅かされていた。法王の腹心たちが、生前の法王の意識をコピーしたマイクロチップとともにサンサラへと逃れたことを知った枢機卿は、その奪取のためにアクセルをサンサラへと送り込む。その両目を潰し、促成難民に仕立てて。

難民衛星サンサラは、チベットの高地を模した牧歌的外観とは裏腹に、国連の平和維持軍パックスフォースのイカレた兵士たちに牛耳られていた。合成眼球の移植によりとりあえずモノクロの視野を取り戻したアクスルは、おしゃべりなサルの姿でよみがえったコルトの化身とともに、荒野に法王の残党を追う。サディスティックなあらくれどもに対し、ヒーローには程遠いアスクルだが、素直に枢機卿のいいなりになるつもりはなかった。

ギブスン、スターリングのエコーを遠く響かせながらも、過剰な暴力と皮肉なユーモアの取り合わせは、イアン・バンクスやマイケル・マーシャル・スミスなど、現代のイギリス作家に共通したものといえる。その政治志向も、ケン・マクラウドやチャイナ・ミエヴィルに色濃く見えるものだ。いまひとつ頼りにならない主人公のスラップスティックな描写は、ニール・スティーヴンスンやジョナサン・レセムを思わせるところもあるが、心理的な余裕を感じさせるアメリカ勢に対し、イギリスの喜劇は真剣さと表裏一体となったぎりぎりの崖っぷちで演じられる。

普通の犯罪もののつもりで書き始めた第1作が、たまたま電脳ものになってしまったため、SFに足を突っ込んだという作者だが、評価を決定付けたこの作品が第4作目。前作の reMix と共通の背景となっている。作者によれば、イギリス流のハッピー・エンドの定義は、主人公が最後まで生き延びていること、だそうである。(2001/8/4)

ちなみにこの作品は、スタンリー・J・ウェイマンの 1894年の作品 Under the Red Robe を下敷きにしたものとのことで、さすがにこちらは未読ですが、『ゼンダ城の虜』と並んで当事はかなり人気を博した剣戟ものだそうです。

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