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Friday, March 30, 2007

2007 Hugo Awards Nominations

お待ち兼ねの今年のヒューゴー賞の候補が発表になりました。わたしの興味は主に長編部門にあるんですが、ピーター・ワッツの Blindsight、無事に候補に残りましたね。本格SFでは文句なく去年のイチオシ、というか、ここまでの傑作はSFでは久しくなかったんじゃないでしょうか。いやまあマイクル・フリンの Eifelheim だけはまだ読んでいないので、無責任に持ち上げてしまうのもなんですが。

ヴィンジやストロスの作品もなかなかの出来なんですが、Blindsight に比べると霞んでしまいますね。唯一のファンタジイ作品ということで、一般の読者票はナオミ・ノヴィクに集まってしまいそうな気もしますが、丁寧に書かれた作品ではあるものの、これといったインパクトに欠けるので、やっぱりこの作品にヒューゴーはまずいでしょう。

ということで、今年はピーター・ワッツ、Blindsight しかありません。投票権をお持ちの方は、是非とも Blindsight を第1位に。ちなみに、一時増刷が間に合わなかったということもあって、作者のサイトで全文が公開されてますので、これは読むしかありませんね。

全候補はこちらを参照いただくとして、フィクション部門だけ上げておきましょう。ええと、中編や短編部門は……すみません、読んでません^^; いえ、ロバート・チャールズ・ウィルスンとかマイクル・スワンウィックとか個人的にひいきの作家はいるんですけど。おいおいチェックして行くことにします。

NovelBlindsight

Novella

Novelette

Short Story

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Wednesday, March 28, 2007

Skulduggery Pleasant, by Derek Landy

Skulduggery Pleasant (UK)今年のファンタジイの目玉はこの本だそうですよ。ハリー・ポッターやトールキンの新作なんて目じゃないですね。なんせ主人公は「黄金バット」や「ゴーストライダー」と日米で主役を務めてきたガイコツなんですから。

いやまあ正直この表紙を見て、やっぱりどうしょうもないんじゃないかという不安は隠せないところですが、この作品、ホラー映画の脚本家デレク・ランディのデビュー作ながら、続編も含めた3冊の契約で、児童書としてはイギリス市場最高値の 100万ポンドのアドバンスで買われたものとのこと。映画化抜きで2億円っていうのはすごいですね。

それに合わせてプロモーションのほうも気合が入ってます。イギリスアメリカで別々のサイトを作ってますね。まあガイコツのヒーローは変わり映えしませんが、アートワークも凝ってますんで、グラフィック・ノベル的にかなり挿絵が入ってるんでしょうか。Skulduggery Pleasant (US)

で、バフィーとドクター・フーがゴーストバスターズをしてるようだという作品の中身ですが、12才のヒロイン、ステファニーが、伯父の遺産として受け継いだ古代の笏杖を狙って、いにしえの魔物が暗躍する中、魔法使いの亡骸であるガイコツ探偵スカルダッガリーが助けに参上して、まあご想像通りスラップスティックになっちゃうみたいですね。

ううむ、ステファニーのプロファイルに、好きなミュージシャンとして、ダミアン・ライスなんかと並んで The Frames がリストされてて奇異に思ってたら、作者はアイルランド出身でした。なかなか見どころのある12才ですね。仲間の一人のプロのトラブルメイカーがタニス・ロウっていうのも気になるところですが、ガストリイ・ビスポークというその名の通りの仕立て屋は、いったい何をするんでしょうね~。

ということで、意外と期待できそうですよ。

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Monday, March 26, 2007

The Lying Tongue, by Andrew Wilson

The Lying Tongue伝記作家ってやっぱり危険な職業のようですね。The Thirteenth TaleGhostwalk に続いて、こちらも詮索好きな伝記作家が相手の過去に鼻を突っ込んで危険に巻き込まれる話みたいです。

ヴェニスに滞在する作家志願の青年を秘書として雇ったのは、たった1冊のベストセラーのみで世間に知られた隠遁生活を送るミステリ作家。ところが、彼の書類を整理するうちに、次第に作家に筆を折らせる原因となった過去の後ろ暗い秘密が浮かび上がってきます。作家の伝記を書いてやろうと決意した主人公ですが……まあ、こういう性格の人間にはろくなことが起こりませんって。わたしも気をつけないと。Beautiful Shadow

なにやらヒッチコック張りのサイコロジカル・スリラーだそうですが、作者のアンドリュウ・ウィルスンは、小説としてはこれが初めてなものの、Beautiful Shadow というパトリシア・ハイスミスの伝記を書いているようで、かなり本人の経験が反映していそうです。というか、ハイスミスがある種モデルとして使われているとすると、「隠遁生活を送る作家」などという穏やかなイメージとは程遠いネチネチした話になりそう。伝記を書くのは相手が死んでからにしたほうが……いやまあ、亡霊に取り憑かれるケースもよくありますけど^^;

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Thursday, March 22, 2007

The Name of the Wind, by Patrick Rothfuss

The Name of the Wind (alternate cover)ハイ・ファンタジイの多くはファンタジイとは名ばかりで、ストック・キャラクタと使い古しのアイデアをリサイクルした戦闘ゲームだと思ってるんで、基本的に興味はないんですが、なにやらこのデビュー作が出版前から話題になってますんで、ちょいと気になりますね。

なにやら鄙びた旅籠の主人が、世間を騒がせてくたばったはずの極悪人の仮の姿で、その正体を見破った年代記作家に、自らの生涯を語って聞かせるんだそうです。旅の見世物一座の役者として育ちながら一転して浮浪児となった主人公が、家族を皆殺しにした魔物に対する復讐の一心から、いかにして大学教育を受け高等魔術を修めるようになったか。ううむ、たしかに語り方によっては面白いかもしれませんね。とはいえまた3部作の最初の1巻のようですが。The Name of the Wind

タッド・ウィリアムズが推しているということで、コンヴェンショナルなハイ・ファンタジイとしては期待できそうです。カバーは2種類あるようですが、アマゾンで買うときはどうも指定できそうじゃないですね。作者パトリック・ロスファスのサイトはこちら

しかし、The Name of the Wind というタイトルは、The Name of the Rose と The Shadow of the Wind を意識してるんでしょうか。

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Sunday, March 18, 2007

The Sound of Butterflies, by Rachael King

The Sound of Butterflies春だから蝶にちなんだ本というわけではないんですが、もうひとつ蝶の表紙を。こちらの蝶はなにやら痛みの象徴のようですね。

エドワード朝のイギリス人の主人公は、ゴムの景気に湧くブラジルへ、学術調査に行くチャンスをつかみます。目的は、新種の蝶を採集して妻の名前をつけること。ところが、戻ってきた主人公は、ひどくやつれて言葉もろくに話せません。ブラジルには一体どんな悲劇が待ち受けていたんでしょうか。

なんとも『闇の奥』な感じですが、ひょっとするとメアリ・ドリア・ラッセルの The Sparrow のようなインテンスなドラマが展開するのかもしれません。ちょっと気になりますね。まあ暗いだけだったら救われないような感じもしますけど。

作者のレイチェル・キングはニュージーランド人で、これがデビュー作。ブラジルへは行ったことがないそうですが、まあ歴史ものの場合は普通ですかね。インタヴュウがこちらで読めます。

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Saturday, March 17, 2007

The Amnesiac, by Sam Taylor

The AmnesiacRemainder とか The Raw Shark Texts に続いて、またまた記憶喪失の本ですよ……って、タイトルそのまんまじゃないですか。

とある町に住んでいたときの3年間の記憶がまるまる抜け落ちている主人公は、思い出すためにその町を訪れ、今は廃屋となった見覚えのある家に入り込むんですが、その壁紙には『ある殺人者の告白』という19世紀の三文小説の第1章が隠されていて……さて、いったい何が起こったんでしょう?

まあこのままだったら普通のミステリの導入部分ですが、作者サム・テイラーのデビュー作だった前作の The Republic of Trees が、親元を逃げ出して森の中で生活する子供たちの確執を描いたもので、ゴールディングの『蠅の王』を思わせる作品としてちょっと評判になりましたんで、多分こんどの作品もミステリらしい素直な終わり方はしないんでしょうね。

いやでも、これだけアムネジア小説がまとめて出てくるとなると、また sick lit のリストを更新したほうがいいのかも。

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WordWeb (English Dictionary, Thesaurus, and Word Finder)

WordWeb は、タスクトレイに常駐して、Ctrl+右クリックで他アプリ(インターネットとか、ワードとか、pdf とか、文字として認識できるものは何でも)の英単語を調べられる英英+類語辞典で、単語の発音も音声で出してくれる優れもののフリーソフトです。

不精者なので、ふだんは分からない単語はすっとばして読んじゃうんですが、ちょっと使ってみたカンジでは、これはけっこう便利です。

フリーでの使用条件が、環境に配慮することというのも、とっても好感が持てていいですね。

詳細は窓の杜で。

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Thursday, March 15, 2007

"Japanese Dreams" by Sean Wallace (Editor)

Japanese Dreamsなんだかこのタイトルは、ちょっと気になりますね~。

特色あるファンタジー系小出版社プライム・ブックスの創立者でもあるショーン・ウォレス編纂の、世界の神話や伝説をテーマにしたアンソロジー・シリーズ第一弾だそうです。キャノンゲイトの世界の神話シリーズのファンタジー作家版って感じでしょうか。

タイトルからすると今回は日本の神話特集なのか、それともいろいろな国の神話が混ざってるのか、情報不足でちょっと分かりませんが、この中に収録されているスティーヴ・バーマンの "A Troll on a Mountain with a Girl" は山姥のお話らしいです。作家陣の中には日本にちょこっと住んでいたヴァレンテなんかもいますね。

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Wednesday, March 14, 2007

Darkside, by Tom Becker

Darksideペーパーバック・オリジナルのファンタジイなんですが、イギリスの大手書店の Waterstone's が選ぶ児童書賞を受賞したりして、なかなか評判がいいようです。

主人公の少年が誘拐魔に追われて逃げ込んだ先が、切り裂きジャックの子孫が支配するもう一つのロンドンで、吸血鬼や人狼が跋扈するヴィクトリア朝の魔都を舞台に、ノワールな物語が展開するのだとか。

まあロンドンを舞台にしたファンタジイは、たいていパラレル・ワールドか擬似ヴィクトリア朝と決まっていて、それだけなら新味はないんですが、実際にロンドンに住んでいる人にとってみると、現実のロンドンとの対比が目に浮かぶような扱いがされていて、そこが大きな魅力となっているそうです。場所がキャラクターとしてうまく使われているということですね。ロンドンを舞台にした小説をコレクションしている知り合いのジェフ・コットンも褒めてました。

フィリップ・プルマンの作品やダレン・シャンあたりと比較すると、世界作りやホラーの点ではまだその域には達していないようではありますが、作者のトム・ベッカーは続編を執筆中ということで、有象無象のファンタジイからは一頭抜き出たものとして、かなり期待されているようです。オフィシャル・サイトはこちら。あんまりプロモーションにお金をかけているようには見えませんが、そんなあたりが逆に好感が持てます。

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Tuesday, March 13, 2007

Ghostwalk, by Rebecca Stott

Ghostwalkこれはちょっとすごく当たりのような気がするんですけど。

ケンブリッジに住む伝記作家が謎の水死を遂げて、息子と過去に恋愛関係にあった女性作家が、その息子に頼まれて、ゴーストライターとして未完のニュートンの伝記 Alchemist を完成させることになるんですが、執筆のために足を踏み入れた伝記作家のコテージというのが、なにやら怪しいところのようです。どんな幽霊が出てくるんでしょうね。

で、そのニュートンの伝記の中身というのも曲者で、17世紀の錬金術がらみの殺人事件を扱っていて、容疑者はなんとニュートンなんだとか。The Thirteenth Tale といい、伝記作家の受難が続きますが、ひょっとしてかなり危険な職業なんでしょうか。

ま、タイトルに "Ghost" が入っている本は、デイヴィッド・ミッチェルの Ghostwritten といいジョン・ハーウッドの The Ghost Writer といい、大当たりのケースが多いので期待しちゃいましょう。

作者のレベッカ・ストットは英文学の教授だそうですが、美術史や科学史も詳しいようですね。ダーウィンとフジツボの話はともかくとしても、このオイスターにまつわる文化史は面白そうかも。

[追記] こちらに感想上げました。(2007/4/16)

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Friday, March 09, 2007

The Secret of Lost Things, by Sheridan Hay

The Secret of Lost Things (uk)ニューヨークの大型書店を舞台にしたドラマで、メルヴィルの手稿をめぐるミステリ風の味付けもしてあるそうですよ。これはやはり書店で働く人には必読じゃないでしょうか^^)

母の遺骨とともにタスマニアから憧れのニューヨークにやってきたヒロインは、稀覯書からバーゲン本まで扱う大型書店に働き口を見つけますが、どうやらこの書店、オーナーから各部門の担当者までなかなか個性の強いキャラクターのようです。アルビノの副支配人の助手を務めることになったヒロインは、あるときメルヴィルの自筆の本 Isle of the Cross を買いたいという問い合わせに対応することになりますが……。どうやらこの貴重な本をめぐっての人間模様が繰り広げられるようですね。

ちなみに、Isle of the Cross という作品は実在したそうですが、出版されぬまま行方不明になってしまったそうですので、本屋に問い合わせて書店員さんを煩わせるのはやめましょう。いくら quark さんでもないものは出せません。

The Secret of Lost Things (us)オーストラリア生まれの作者シェリダン・ヘイのデビュー作ということですが、うちのブログでもおなじみのニューヨークの書店 Strand Books で働いていたことがあるそうで、そこをモデルにしているようですね。ひょっとしてプロモーションでもしているかと思って覗いてみたら、なにやら在庫がゼロになってます。好評で仕入れが間に合わないのか、それとも敬遠されてるのか、微妙に気になります(笑) メルヴィルの稀覯本というモチーフも、作者が実際にリサーチしているときに発見した書類に基づくものということで、書店員さんだけでなく、ビブリオマニアや文学好きにも受けそうな感じですね。

アメリカ版とイギリス版のカバーの違いが、この作品の両面を象徴しているようで面白いので、カバー・イメージは両方載せました。あ、本の置き方が The Thirteenth Tale の場合と逆になってる! ふうむ、わたしはUK版でしょうかね(といいながら、密かにUS版ふうの展開を期待してたりして)。

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Wednesday, March 07, 2007

"Edward Trencom's Nose: A Novel of History, Dark Intrigue and Cheese" by Giles Milton

Edward Trencom's Noseさむらいウィリアム―三浦按針の生きた時代』の邦訳があるイギリスの歴史家ジャイルズ・ミルトンが書いた初めてのフィクション、それもウッドハウス調のコメディだそうです。鼻がクローズアップされているだけに、何か臭ってきそうですね。

エドワード・トレンコムはロンドンにある老舗チーズ専門店の10代目で、彼は店だけでなく特徴ある鼻も先祖から受け継いでいます。ところが偶然発見したトレンコム家の家族史から、9人の祖先たちが皆その鼻のせいで、よくない死に方をしていることが明らかに! 彼の代でイギリス一の店に成功させたエドワードも、その呪い(?)から逃れられないのでしょうか。

歴史家だけあって、ビザンティンの歴史やギリシャの独立戦争などを絡めた、それでもちょっとおばかなミステリのようです。もちろんチーズもいっぱい出てくるようなのですが、チーズはやっぱり読むより食べるほうがいいですね。イアン・サンソム によるGuardian レヴューはこちら

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Tuesday, March 06, 2007

Alice in Sunderland, by Bryan Talbot

Alice in Sunderland (uk)表紙とタイトルで一目瞭然なように、アリスを主人公にしたグラフィック・ノベルだそうです。とはいっても中身はただのお話というよりは、ルイス・キャロルがしばしば訪れて原稿を書いたり想を練ったという、イングランド北部の北海に面したサンダランドの町にちなんだものとのこと。様々なスタイルの短編の形式で、サンダランドの風物や歴史を語っているようですね。

作者ブライアン・タルボットのファン・サイトでいくつかのページが見られますが、テニエルの絵のコラージュなども取り入れて、おなじみのアリスのイメージを損なわないような、なかなか魅力的な誌面作りになっています。色々なタッチの画風が混在しているようですが、ちょっとどれもよさそうですね。これは特にアリスのファンでなくても買うしかないでしょう。いや、表紙だけで手を出してしまう人もかなりいるかも^^) ちなみに US版はこちら

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Monday, March 05, 2007

The Nature of Monsters, by Clare Clark

The Nature of Monstersデビュー作のヴィクトリア朝のロンドンの下水を題材にした The Great Stink が、ほんとうに臭うような作品だということで評判になったクレア・クラークですが、今度は18世紀初頭の、人を人とも思わないような無茶苦茶な人体実験が行われていた時代が舞台のようです。

とはいっても、際物というよりはリアルな現実を描き出した歴史もので、堕胎のためにロンドンに出てきた少女が、母親の感情が生まれてくる子供に反映することを証明しようとしているアヘン中毒の薬剤師の餌食になって、犬や猿をけしかけられたり、いろいろとひどい目に遭うようです。猿に怯えたら子供が猿になるなんて、いくらなんでも……いや、ありそうな感じもしないでもないですけど^^; まあこれだけですと鬼畜本で終わりそうなんですが、どうなんでしょうねえ。

ま、物語は怪しい18世紀を描きながらも、人間的な方向に展開するようですので、ちょっと気になります。

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Sunday, March 04, 2007

Etched City Crack Doujinshi

The Etched CityK・J・ビショップの The Etched City について、ビアズリー風といわれていながら同性愛者が出てこないじゃないかというコメントに対し、なんでストレートばかりになってしまったのかといろいろ言い訳をしていますが、カーステンたら、とうとうオマケの同性愛のシーンを描いたドウジンシを始めちゃったみたいです^^;

"Thanks to the responses to this post I’ve started drawing omake of the missing gay scenes from the book. Which is so much more fun than trying to write novel#2."

Explicit Contentえ~と、露骨なシーンが出てくるので一応注意をば。こうしとけばみんな見るでしょう^^) 現在のところ4ページまで公開されてます。

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いやまあいいんですが、次の長編は一体どうなっちゃったんでしょう。

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"The Illusionist"(DVD) -- Adaptation of Millhauser???

an audience for einstein人様にお借りしたDVDにいちゃもん付けるのもなんですが、スティーヴン・ミルハウザー原作『幻影師、アイゼンハイム』の映画化……と思って観たこの "The Illusionist"、なんか全然違うストーリーなんですけど~。多少の改変であればとやかく言いませんが、ここまで別物にしてしまうのは罪ではないかと。原作を読んだのがかなり前だったので、自分の記憶違いかと思って思わず読み直してしまいました。

原作は、ハプスブルク帝国という華やかなひとつの時代の終焉と、迫り来る不穏な時代の狭間のウィーンの雰囲気を、華麗で人の心をざわつかせる奇術を行うアイゼンハイムという芸名のユダヤ人幻影師を通して描いてみせた作品。反ユダヤ主義のウィーン市長カール・ルエガーや、マイヤーリンク事件のマリー・ヴェッツェラなど、当時の世相を語るうえで重要な人物たちの名がきちんと盛り込まれていて、アイゼンハイムの奇術自体もその時代の人々の心理をとても上手く取り込んでいます(奇術は映画のほうでも同じものです)。

一方映画のほうは、ハプスブルク帝国皇太子レオポルト(←誰?)が求婚する貴族の女性とアイゼンハイムの身分違いのロマンスという、原作には全然ないアイディアがメイン・ストーリーとなっていてとってもびっくり。皇帝フランツ・ヨーゼフの名(と肖像画)が出てくるとはいえ、歴史的な事象には拘らず、ただひたすらアイゼンハイムの恋の行方を追うばかり。要は、アイゼンハイムの愛する人が高貴な人物のフィアンセであれば誰でもよかったわけで、原作から感じ取ることのできた危ない方向に進む時代の空気(個人的にはこれが重要だと思っているのですが)などは、取るに足らないこととして無視されちゃった気がします。レオポルトは実在のルドルフ皇太子で、例のマイヤーリンクのスキャンダルを別の形で見せたつもりだとは思うのですが、このヴァージョンはあまりにも単純すぎて何とも……。そしてこれが物語の中心となっているので、原作とは全く異なった趣の作品になってしまっています。アイゼンハイムがブラチスラバ出身のユダヤ人で、原作の最後であのようなマジックを見せたのも、とても象徴的なことだと思うんですけど、映画ではなんか全然違う方向にいっちゃいました。そもそもアイゼンハイムが警察にマークされたのも、出自とかが関係して大衆を扇動する危険があったからだと思うんですが、映画では皇太子の彼女(アイゼンハイムの幼なじみでもある)と仲がよかったからということになってます。

たとえミルハウザーの原作とは全く別物と考えても、ありきたりの「身分違いの恋」とロミオとジュリエットの下手くそな焼き直しのような展開、そして想像した通りの安易な結末(あまりにも予期していた通りなので、最後になってやっと気づいたウィーン警察署長のもったいぶった演技が、これまた苛つかせます)と、かなりお粗末と感じるのは私だけでしょうか。19世紀末前後の人が、ワイシャツ姿で腕まくりして奇術をするっていうのも、なんだかとっても違和感で、恋人のゾフィ役の女優さんは妙に現代的でミスマッチ。マジックも、原作で想像を膨らませて読むのと違って、たとえCGを使っても目の当たりにしてしまうとしょぼいです。

と、いろいろけなしてしまいましたが、Amazon.com とか見ても、すご~~く評判いいんですけど、なぜ??? でもでも、ミルハウザー・ファンの quark さんが見たら絶対怒っちゃうと思います。

注:日本未発売のため、リンクは Amazon.com です。

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Friday, March 02, 2007

The Raw Shark Texts, by Steven Hall

The Raw Shark Texts (uk)トム・マッカーシイの Remainder という、失った過去を金にあかせて再構築しようとする男の話がありましたけど、こちらもアムネジアがらみの、フィリップ・K・ディックの作品みたいな話のようですよ……と思ったら、マーク・ハッドンによれば、「マトリックス」と「ジョーズ」と「ダ・ヴィンチ・コード」から生まれた私生児って、なんですか、これ? 他にも「メメント」やマーク・Z・ダニエレブスキーが引き合いに出されてたりしますし、なにやら映画化も交渉中のようですね。

記憶を失った男が、過去の自分が残したメモを手掛かりに、人々の記憶を喰らう純粋に概念上の魚であるルドヴィシアンに追われながら、同様に形而上的な捕食者から逃げている女と共に、電話帳でできた地下の迷宮を彷徨い(文字情報がルドヴィシアンに対するバリアになるんだとか)、暗号のメッセージを解読しながら、ヘンテコな人々と遭遇し、最後の対決へと向かう話ということで……う、ほんとに「マトリックス」と「ジョーズ」と「ダ・ヴィンチ・コード」と「メメント」と『紙葉の家』そのもののお話みたい^^;The Raw Shark Texts (us)

その上タイポグラフィーの遊びがあるとなると、イドの底へ降りていくアルフレッド・ベスターの『ゴーレム100』のような雰囲気も。50ページに亙るサメのパラパラ漫画っていうのが気になります。オフィシャル・サイトに行くとタイポグラフィーのサメが襲ってきますけど、これがそうなんだろうか。

イギリス版のカバーもヘンテコですが、アメリカ版はもっとどうしようもなさそうですね。作者スティーヴン・ホールのマイスペースのページはこちら

[追記] こちらに感想上げました。(2007/4/25)

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Thursday, March 01, 2007

The Somnambulist, by Jonathan Barnes

The Somnambulistひょっとしてこれをまだ取り上げてませんでしたね。冒頭の主人公の口上を聞いたら、これはやはり読まずばなりますまい。

'Be warned. This book has no literary merit whatsoever. It is a lurid piece of nonsense, convoluted, implausible, peopled by unconvincing characters, written in drearily pedestrian prose, frequently ridiculous and wilfully bizarre. Needless to say, I doubt you'll believe a word of it.'

探偵のエドワード・ムーンが、相棒の Somnambulist(夢遊病者)とともに、ウィリアム・ブレイクの黙示録的な予言を現実のものとして、大英帝国を破滅させようという秘密結社の悪巧みに立ち向かう話だそうです。ヴィクトリア朝を舞台に旅のサーカスと生ける屍が出てきて、コリンズやディケンズやストーカーやコンラッドやメイヒューや(って、だれ?)マッケンやドイルやウェルズからのパクリが満載って……確かに前口上どおりみたいですね^^; で、この夢遊病者っていうのが口の利けないミルクが大好きな巨人って、またまた怪しいじゃないですか。

マーク・ガティスの The Vesuvius Club が好きな人にはオススメということですが、すいません、まだ読んでません^^; なにやらポール・マーズの Never the Bride みたいな臭いもプンプンしますが。スティーヴン・ハントの The Court of the Air もそろそろ出ますし、またヴィクトリア朝強化月間をやるようでしょうかね。

[追記] こちらに感想上げました。(2007/5/24)

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