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Tuesday, February 27, 2007

Carnivàle

アメリカ製のTVドラマですが、ものすごい傑作でした。1週間ほど前に見終わったんですけど、シェル・ショックがまだ抜けず、何を見てもゴミにしか見えない状態が依然として続いてるほどです^^;

Carnivale - Series 1 (PAL) @ amazon.co.uk大恐慌下の米中南部、砂嵐が吹き荒れるダスト・ボウルと呼ばれるオクラホマ、テキサス、ニュー・メキシコあたりを巡業する、旅のサーカス団に拾われたひとりの青年と、季節労働者相手の教会を作ろうと腐心する伝道師の、光りと闇の化身としての対立を描いたダーク・ファンタジイなんですが、登場人物それぞれのキャラクタ造型から、時代と土地の雰囲気をそのまま切り取ってきたかのような画面作りと、作品の隅々まで本物感に満ちていて、プロットを抜きにしても、片時も目を離せないようなインパクトのある作品です。

荒れ果てた荒野の一軒家で、助けを拒んで死んでいく母親を看取った脱獄囚ベン・ホーキンズは、借金の形に土地を取り上げ、家を取り壊そうとするブルドーザーと睨み合っているところを、通りかかった旅のサーカス一座に拾われます。小人の世話役を頭に、髭女やトカゲ男、ヘビ使いや接合双生児と、おなじみのフリークを擁したサーカスは、盲目の透視術者や、昏睡状態の母親の助けで占いを行うタロット占い師、クーチ・ダンスを見せるストリップ小屋の一家や、観覧車やメリー・ゴー・ラウンドの解体・設置を行う職人など、かなりの大所帯でした。ところが、すべてを取り仕切る支配人は、世話役を通して行き先の指示を出すだけで、トレーラーに篭ったまま誰にもその姿を見せません。

いっぽう、眠るたびに見知らぬ場所で兵士に追われる悪夢に魘されるベンも、本人にも理解できない秘密を抱えていました。幼いベンの腕の中で生き返った猫を、血相を変えて溺れさせてしまう母。そう、ベンにはヒーラーの能力があったのです。サーカスの倉庫の中で、なぜか若い頃の母の写真を見つけたベンは、すべての鍵を握る見知らぬ父の行方を捜し始めます。

そのころ、西海岸では、メソジスト派の牧師、ジャスティン・クロウが、姉のアイリスとともに、教区の信徒からはつまはじきにされている季節労働者を救済しようと、新しい教会作りに追われていました。中国人の娼館を目にして、神の啓示に打たれたジャスティンは、所有者に幻覚を見せ、その弱みに付け込んでそこを巻き上げます。ところが、町の有力者との軋轢の中、やっと教会の形を取り始めた娼館は、6人の子供を中に閉じ込めたまま放火にあい、放心状態のジャスティンは野に出ることを余儀なくされます。

Carnivale - Series 2 (PAL) @ amazon.co.ukということで、ストーリイは、セカンド・シーズンの最後でのベンとジャスティンの直接対決に向かって、少しずつ謎を明らかにしながらじわじわと進むわけですが、父の足跡を追いながら次第に自分の力を自覚していくベンと、ある種ピカレスクなジャスティン牧師の受難の二つのストーリイ・ラインと平行して、サーカスの内部でも、妻と娘の美人局をしているストリップ小屋の一家を中心に、ひざを砕かれてプロ野球を追われた職人のリーダーと、タロット占いの娘を交えたインテンスなドラマが繰り広げられます。

かなり色っぽいシーンや、ホラーがかった過激な場面も出てくるんですが、この作品の凄いところは、過度に特撮に頼るような安っぽいところが見当たらないことですね。やりすぎてばかばかしさを感じさせることの一切ない、大人向けのドラマになってます。じつは、ファースト・シーズンはビルド・アップのためのかなりスローな展開で、メイン・プロットが加速を始めるのはセカンド・シーズンになってからなんですが、一般には評価の高いセカンド・シーズンよりも、個人的にはさりげない描写でじわじわと話を進めていくファースト・シーズンにより惹かれました。

結末へ向けての怒涛の展開はトップ・クラスのホラーとして息をもつがせぬものがありますが、実際は最後の直接対決は並みのホラーと比べかなり地味に終結します。といって緊張感はいささかなりとも弱まることはありません。そこに至るまでの緻密な積み重ねが、過度の演出を必要としないんですね。正直、見るべきところは、クライマックスのドラマチックなシーンにではなく、その過程のディテールにあります。

弟を愛し、周りの人々に慈悲の心を向けながらも、時として冷酷な行為も厭わず、地獄で弟と再会することを覚悟しているジャスティンの姉の屈曲した性格など、ちょっと他では見ない凄みがありますが、アイリスに限らず、メインの登場人物のひとりひとりが、信じられないほどそれぞれの役にぴったりはまった演技をしてます。カリスマティックなジャスティン牧師のピカレスクな魅力はいうに及ばすですが、主役のベンも、線の細いナイーヴなキャラクタを最大限に生かして、自分の置かれた立場をよく理解できていない青年を完璧に表現しています。

いっぽう、サーカスの日常を描いた部分は、演出というよりも実際の作業シーンをそのまま撮影したようなリアリティを感じさせ、特に、汗と埃にまみれた擦り切れた作業服が、全然衣装に見えないという徹底ぶりには感服しました。すべてのシーンにこのリアリズムへのこだわりが発揮され、荒唐無稽になりかねない物語を地に繋ぎとめる役割を果たしてます。やりすぎていない音楽や効果音も見事ですね。どの点をとっても一級品で、文句のつけようのない映像作品っていうのは、初めて見たような気がします。ということで、ホラーやダーク・ファンタジイのファンであれば必見なのはもちろんですが、密度の高いドラマがお好きな方にも強くお薦めします。

じつはこの作品、当初は3部6シーズンで企画されていたそうなんですが、十分な視聴率が稼げず、1部が完結したセカンド・シーズンで打ち切りになったという、とても信じられない悲劇に見舞われています。ということで、かなりの謎を残したまま、続編への布石でセカンド・シーズンは終わるんですが、ともかくここまで見られただけでも幸運といえるかもしれません。続編でもこれ以上のものが出来るとは思えませんので。

シリーズの構成は1時間弱のエピソードが12編でワン・シーズンとなっていて、全部見ると20時間強の長丁場になるんですが、特にセカンド・シーズンは途中で置けないので、見始めるのにそれなりの覚悟が必要です。日本のアマゾンでも US版は手に入るようですが、本家アマゾンともどもかなり高いです。いっぽう、アマゾンUKでは PAL版がむちゃくちゃ安く手に入りますので、画像のリンクは UK版にしています。オフィシャル・サイトはこちら

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Comments

じつはティム・パワーズ風の物語という評判を目にして見ることにしたんですが、たしかに雰囲気似てますね。とくに Last Call 以降の作品。ダスト・ボウルにオーキーというあたりで、設定のベースは『怒りの葡萄』なんでしょうけど。

Posted by: a nanny mouse | Tuesday, February 27, 2007 21:54

うぅぅ、「ティム・パワーズ風」と言われると、どうしても見たくなっちゃいますね。でも、20時間ってすごすぎ。あ、「再開」だって(←重箱つつき)

Posted by: Lilith | Wednesday, February 28, 2007 22:39

うっ、せっかく頑張って書いたので直しました。

まあ少しずつ見ればいいんですけどね、途中からなかなか止まらなくなるんです。ともかくこういうものすごいものを見てしまったという感覚はなかなかないですね。

Posted by: a nanny mouse | Wednesday, February 28, 2007 23:00

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