"A Soul in a Bottle" by Tim Powers, J. K. Potter (Illustrator)
日本のあまぞんさまったら、なんでこんなマイナーな本を在庫するんでしょうねぇ。Subterranean からぱらぱら出ているパワーズの掌編や短篇は、そのうちまとまったら廉価版の短編集が出るに違いないと踏んで、ず~~~と辛抱強く待つつもりだったのに、「1点在庫あり」に思わず反射的にクリックしてしまった意思の弱い私……。これがしょうもない表紙だったらガマンできたハズなんですけど、ボトルの美女の誘いは拒めませんでした。タイトルもなにやら曰くありげだし~。
ジョージ・シドニーはチャイニーズ・シアターで魅力的な若い女に出会い、すぐさま恋に落ちる。なぜか彼女は観光スポットには場違いな、黒の(それも汚れた)フォーマルを着ていた。その後、何度か会話をする機会に恵まれたものの、彼女はいつもジョージの目の前からふっと消えてしまうのだ。ある日、貴重な古書を探し出しては知り合いの古本屋に売っていた彼は、1960年代に若くして自殺した女性詩人シャイアン・フレミングの初版本を見つける。それも彼女のものとしては珍しいサイン入りだ。驚いたことに妹レベッカに捧げられたその詩の最後の6行は、一般に知られているものとは全く異なっていた。
出会いの場面で突然、オマル・ハイヤムの『ルバイヤート』の詩の一節を口ずさむ女。難なくその続きを口にするジョージ。なんの脈絡もないようでいて、その直前の(チャイニーズ・シアターに手形と足形がある)ジーン・ハーロウについての会話とこの詩が、あとになってからとても重要だったことに気づかされます。もし始めに彼女がジョージに『ルバイヤート』を思い出させなければ、またはジョージが『ルバイヤート』を知らない青年であれば、またはジーン・ハーロウのことで分かった彼の気質がなければ、全く違った結末になっていたんじゃないでしょうか。というか、旅人が通りかかるたびに謎をかけたスフィンクスのように、暗唱できるほどルバイヤートに親しんでいる青年に出会うまで、彼女は手当たり次第に声をかけてはそのフレーズを繰り返していたかもしれません。読み終わってみると、その導入部で既に彼のその後の人生が決定づけられていたんじゃないかなと感じました。女性詩人の死にまつわるミステリに、ルバイヤートのスピリッツを加えたこのゴーストストーリーは、文学通でアヤシイもの好き(?)のパワーズらしさのよく出たファンタジー作品という印象です。
本自体は80ページのとても薄いハードカバーなのですが、字が大きくて行間も広いので、普通に活字を組んだらもっとずっと短くなるはず。最初はちょっと高いかな~と思いましたが、装幀(リトグラフのような装飾とか)が奇麗で、白黒だけどJKポターの美しいイラストがいくつも入っているので、これは買って正解でした(でも、パワーズ・ファンじゃなければ、怒っちゃうかも?)。
Publishers Weekly のレヴューはかなりネタバレなので、これから読む人は見ないことをオススメします。

Comments
おや、こんどはジンですか……って、違うか^^;
パワーズって、スピリッツも好きなんですけど、ビールとかワインとか、作品の中でアルコールが重要な位置を占めてる場合が多いんですよね。そのわりに本人は何年も前から禁酒しているとか。ううむ、カトリック作家はよくわかりませんね。
しかしでも、ちゃくちゃくとパワーズ・コレクターへの道を歩んでますね^^) きっと全作品を揃えて、そのうちサイン本で揃えたくなって、ついには限定版に手を出してしまうんですよ。いやでも、本物のポーカーチップとドル札を装丁に使った Last Call の特装版は見てみたいです。ん十万円するみたいですけど。
Posted by: a nanny mouse | Monday, February 12, 2007 at 22:01
ははは、既に Three Days to Never で限定本に走ってしまいました。というか、安いほうはなんであんなにしょうもない表紙なの?
今度出るリプリントの Expiration Date の表紙もどうしても許せないので、Earthquake Weather と一緒にハードカバーを Clarkesworld Books で注文してます(バーゲン価格!)。
ところで本物のドル札使ったら、財務省の人に怒られないんでしょうか?
Posted by: Lilith | Tuesday, February 13, 2007 at 22:07
おや、すでに遅しですか。
まあ Three Days to Never のカバーは出版社があまり一般向けには売れないと踏んだからでしょう。アマゾンのレヴュウが20件もあるのでかなり評判になってるのかと思ったら、ほとんどパワーズのファンの人ばかりですね。までも、それだけ根強いサポーターがいるということでもあります。
それでも、ほとんどの作品が絶版になっていた10年ほど前と比べれば、最近はかなり再版されてますよね。Expiration Date を書いてた頃は、ほんとに生活に困って、フィリップ・K・ディックのコレクションの一部を売って生活費に当てていたそうですよ。
ううむ、財務省は大物しか相手にしないんでしょう。
Posted by: a nanny mouse | Tuesday, February 13, 2007 at 23:15