Tideland
テリー・ギリアムが監督した作品だからではなくて、ミッチ・カリンの作品が原作なので、「ローズ・イン・タイドランド」、見ました。というのが、カリンの 2005年の作品、90歳になった晩年のシャーロック・ホームズの孤独を滋味深く綴った A Slight Trick of the Mind が、もう涙無くしては読めない年刊ベスト級の傑作で、『タイドランド』のほうも気になってたんですよね。
サザン・ゴシックのかなり暗い話を予想してたんですが、ギリアムの気質のせいなのか、それとも主役の女の子の突き抜けた明るさによるものなのか、底に暗いものは抱えながらも、映画のほうはグロテスク・ユーモアにいびつな美を掛け合わせたコメディーに終始してました。ファンタジイを現実のほうに引っ張って、わざわざ張りぼての作り物であることを意識させるギリアムのいつもの手法そのままの作品ですね。
突然死した母親の元を逃げ出すように、ヘロイン中毒のロックンローラー崩れの父親に引きずられて、祖母の残した荒野のあばら家へとやってきたローズは、頼りにならない両親をかいがいしく世話をする大人びたところを見せながらも、首だけもげたバービーを指人形にして一人遊びするハイパーアクティヴな少女。ほんとうに何もない荒野の限られた材用を、想像力過多なローズの幻想というフィルターがいかに変貌させるかというのが見どころになるんですが、じつは隣家に住む姉弟というのが強烈な個性の持ち主で、中盤以降は、この異常な姉弟の行動を、好奇心旺盛なローズの柔軟な精神がいかに緩和するかという視点に変わって行きます。
でまあ、いくらでも暗く出来そうな材料なんですが、ローズの生き生きとした演技がむちゃくちゃ上手くて、全然暗くなんないんですよね。までも逆に、ローズの見る楽しさに満ちた世界と、観客の眼に映る悲惨な現実のギャップを意図したんであれば、かなり薄められてしまっているようにも思います。結末部分ではねじ伏せられていた現実がどっとぶり返してくるんですが、テーマのほうは弱められていて、とってつけたような感じになっちゃってますね。
正直映画としては中途半端な感じで、プロセスを中心に楽しむ作品になってます。このあたりカリン自身が意図したものがそのまま反映しているのか、それとも別物なのか、やっぱり原作のほうもチェックしてみたくなりますね。A Slight Trick of the Mind を読んだ限りでは、ストーリーにもテーマにもかなりきちっと結びをつける作風のように思いましたので。

Comments
あ、“A Slight Trick of the Mind”よさそうですね。リンク先で、思わずジャケ買いしそうになりました。
Posted by: Gardener | Monday, January 29, 2007 at 11:21
わたしが買ったときにはこっちのあの~~~っていうようなジャケットでしたけど^^;
いや、ほんとにお薦めです。これを読んでミッチ・カリンはほとんどハードカバーで揃えたんですけどね、ううむ、いつ読むんだろう?
Posted by: a nanny mouse | Monday, January 29, 2007 at 21:45