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Sunday, January 14, 2007

The Gentle Axe, by R.N. Morris

The Gentle Axe1867年冬のサンクト・ペテルブルク。ペトロフスキイ公園で2体の遺体が見つかった。ひとりは頭を割られた小人、もうひとりは、その傍らの木で首を吊った男。男のベルトには血まみれの斧が差されていた……。

なんかマーティン・クルーズ・スミスの『ゴーリキー・パーク』を思い出してしまいますが、この明々白々な設定から入り組んだ犯罪を嗅ぎ出す探偵役は、『罪と罰』でラスコーリニコフを尋問した予審判事だそうです。

まあそういわれても、ん十年前に読んだ話ですから、そういえばしつこい刑事が出てきたなぐらいしか思い出しませんが、このポルフィーリイ・ペトローヴィチという判事、あれだけ有名な犯罪を手掛けたんですから、デュー警部なみに有能なんでしょうね^^)

それはともかく、19世紀のサンクト・ペテルブルクを舞台にしたということで、背景の描写がかなり楽しめそうです。ちょっと気になりますね。味見してくださる方は……なんか最初から決まってるような感じが(笑)

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Comments

捜査の過程で登場してくるのが、頭脳は明晰ながら貧乏に窮している学生ヴィルジンスキーと、汚れを知らぬ売春婦リリヤ。『罪と罰』の読者なら、この二人がラスコリーニコフとソーニャに瓜二つであることに気がつくはず。ラスコリーニコフと因縁浅からぬプロフィーリィとしては、ヴィルジンスキーの身の上が心配でならず、家賃を払ってやったり靴を調達してやったりするのですが、この学生のやつが本家に勝るとも劣らぬ偏屈屋で、ちっともこちらの言うことを聞いてくれない……(笑)。

とかく哲学的に語られがちなラスコリーニコフの犯罪を、当時のペテルスブルグを舞台にしたワン・オブ・ゼムの事件として捉え直そうとする試みなのかしら……と、前半部分を読んで期待したのですが、んん~、終わってみれば、普通のミステリーでしたね。テイストでいえば、ロス・マクドナルドに近いかな。三人称だけど。探偵の内面を前面に出さずに事件関係者を丹念に訪ね歩いて質問をぶつけていくという、わりと優等生的な調査ぶりでした。

ペテルブルグの描写という点でも、本家の『罪と罰』を読んだあとではさすがに見劣りがします。しかし、何よりも見劣りがするのは人物造形ですね。ソーニャの父親のマルメラードフや、義母のカチェリーナ・イヴァーノヴナといった悲劇的人物に比べると、誰も彼も書き割りのように見えてしまうのは仕方ありません。気楽に歴史ミステリを楽しみたいという方にはオススメですが、変に文学的なものを期待すると肩すかしを食うかもしれない一冊でした。マル。


Posted by: quark | Thursday, May 17, 2007 01:34

ふむ~、けっこう普通のミステリですか。ちょっと残念。ドストエーフスキイを引っ張り出してきた必然性とか、ちょっと変わったところを舞台にした歴史ものというところに期待していたんですが。ま、そのうち読んでみましょう。

知らなかったんですが、ポルフィーリイってあのコロンボ警部のモデルだったんですね。やっぱりここでもああいうキャラなんでしょうか。

Posted by: a nanny mouse | Thursday, May 17, 2007 21:23

アメリカ版が出たようで、NYタイムズに書評が載ってますが、ドストエーフスキイのイミテーションを意図したんじゃないとした上で、ごくポジティヴな評価をしてますね。Fingerpost や Alienist と違って、無理に時代がかった文体で逆に嘘くさくなっているよりは、自分のスタイルを通した点も誉めてます。

までも quark さんの言うように、ドストエーフスキイの世界に入っていくんでなければつまらないかも。

Posted by: a nanny mouse | Saturday, May 19, 2007 22:06

ふーん、そうか、こうやって褒めるんですね。勉強になります(笑)。

しかし、「ドストエフスキィの同時代に書かれたイミテーションのよう」というのは、明らかに言いすぎでしょう。基本となるプロットは、この百年間に練りあげられたミステリの定型そのものですし、登場人物たちの内面は十九世紀ではありえないような面が多々見られます。

結局この小説は、ドストエフスキィの作品に似ているというよりは、ここ数十年の間に書かれ、現在も書かれつつあり、未来も書かれつづけるであろう無数のミステリ小説に似ているのだと思います。

Posted by: quark | Sunday, May 20, 2007 01:48

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