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Sunday, October 22, 2006

Un Lun Dun, by China Mieville

Un Lun Dun来年2月発売の作品ですが、ARC を手に入れたので読んじゃいました。

いやもうこれが楽しいのなんのって、モンスターが大好きというだけあって、ヘンテコな怪物のオンパレードですね(こちらで作者自身の挿絵がいくつか見られます)。大人向きの作品ではいやというくらいに重厚な描写に凝る作家ですが、今回はYAものということで、それほどの書き込みも必然性も要らないためか、もう大はしゃぎで好き勝手やってます^^; さすがミエヴィルだけあって、並みの作家の何冊分かのアイデアを惜しげもなくつぎ込んで、おもちゃ箱をひっくり返したというより、トイザラスが竜巻にあったような楽しさです。

タイトルの Un Lun Dun は、やっぱり unLondon でした。ザンナとディーバという二人の少女が、動物にじっと観察されたり、傘の化け物を目撃したりという奇妙な出来事に遭遇したあと、unLondon にまぎれ込みます。ここでは手足の生えたゴミや、立派な車掌の乗った旧式の二階建てバスなど、こちらの世界で捨てられたもの、時代遅れになったものが命を得て、ヘンテコな住人たちと共にシュールな世界を作り上げていました。

ところが、スモッグという悪者が、毒ガスを手に町を手中に収めようと悪巧みをめぐらしています。じつは、ザンナは、予言書にある shwazzy(フランス語の choisi = chosen が訛ったものらしい)として、町を救うべくこの世界へ呼び寄せられたもののよう。ということで、二人の少女は、本の服を身に着けた男や親切な車掌とともに、半幽霊の少年にまとわれつかれながら、サカナの泳ぐ空を飛ぶダブルデッカーで巨大昆虫と空中戦をしたり、屋根の上に住む人々に助けられたしながら、宙に浮く巨大な橋を目指します。

でまあ、ここまでが冒頭の5分の1程度なので、とても全体のあらすじを紹介する元気はありません。意外にも、主役と思しきザンナが早々と引っ込んで、脇役だとばかり思っていたディーバがじつは主役だったりと、クリシェになれたこちらの読みを裏切る展開にはことかきません。日常生活や常識をコミカルに茶化すパロディと、言葉遊びへのこだわりは、たしかに『不思議の国のアリス』や Phantom Tollbooth の世界ですね。主人公のディーバの性格が、フィリップ・プルマンの無愛想なライラではなく、ジョーン・エイキンの元気なダイドーなのは、これだけでも二重丸でしょう。

余談ですが、ジョーン・エイキンのファンだと公言している作家には、ミエヴィルのほかにもケリー・リンクやエリザベス・ハンド、リズ・ウィリアムズなんかがいますが、みんなストーリー・テリングの名手ですね^^) さもありなんという感じですけど。

ということで、タイトな作品作りや、ミエヴィルのいつもの重層的な世界を期待すると面食らいますが、two-fisted rollicking fun romp を探している人にはもうピッタリです。ミエヴィル入門にもちょうどいいかも知れません。しかしでも、こんなに一度に大量のアイデアを放り込んでしまって大丈夫なのかと思ったら、この世界を舞台にした作品のアイデアはまだいくつもあるそうで、やっぱり化け物作家だけのことはあります^^)

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Comments

おお、これは楽しそうなので買っちゃいそうです。モンスターとか怪物というよりは、妖怪ってカンジですけど(親近感)。

表紙の女の子はどっちらなんでしょう? で、表紙もミエヴィル?(出版社サイトのとアマゾンのとは、ちょびっと違いますね~)

なんかさっき一瞬「重層的」が「重曹的」に見えちゃったんですけど、これも Un Lun Dun のワナでしょうか。

Posted by: Lilith | Monday, October 23, 2006 22:12

え、血が血を呼ぶっていうやつですか^^)<意味が違う。

表紙はよく分かりません。ARC の表紙はアマゾンにあるやつでしたけど、ミエヴィルの絵なのかどうかは不明です。

ザンナは金髪、ディーバは黒っぽい髪ということでしたけど、この表紙じゃどちらか分からないですね。わざとそうしてるのかもしれませんが。

文字が化けて見えるようになったら気をつけたほうがいいですよ。画面からワッと手が飛び出して、アチラの世界に連れて行かれちゃうかも。

Posted by: a nanny mouse | Tuesday, October 24, 2006 01:23

うぎゃ~、UK版は水木しげるが表紙です~~~! 楽しいな、楽しいな、オバケは死な~ない♪ さあ、みなさんはどちらを買います?

Posted by: Lilith | Saturday, December 16, 2006 22:03

どう考えても手を出さずにいられない趣味の悪さですね^^) もちろん両方そろえます。

Posted by: a nanny mouse | Saturday, December 16, 2006 22:18

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