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Sunday, October 29, 2006

"Remainder" by Tom McCarthy

Remainder以前、こちらで簡単な紹介のあった "Remainder" ですが、どうしようか迷ったあげく読んでみたら、これが大当たりでした。

空から何かが落ちてきた――主人公の男が覚えているのはそれだけで、事故以前の記憶はすっかり失ってしまう。そのときの怪我により簡単な動作もままならなくなった彼は、物を掴むにも手が動くその仕組みを理解することから始めなくてはならない。そのようにして頭で考えてから移るぎこちない自分の動作を彼は偽物と感じ、逆に芝居でしかない映画俳優のスムーズな動作を本物と思うようになる。

示談金850万ポンドという大金を得た彼は、その使い道を考えあぐねるが、ある日友人宅のトイレで目にした壁のひび割れに既視感を覚え、微かな記憶をもとに以前自分が住んでいたマンションを、金に糸目をつけず再現しようとする。

オーディションをしてマンションの住人まで再現しようとする彼の強迫観念はそれだけに留まらず、次から次へと新たなプロジェクトを生み出し、彼が「再演」と呼ぶそれらは、失った自分の過去を再構築するものから、徐々にエスカレートしていく。

記憶を失い周囲との接点を失った男が、大金を使い大勢を指揮し、まるでその穴埋めをするかのように繰り返し行う「再演」。強迫観念に駆られていく彼の心理と狂気が、一人称の形で淡々と語られていくさまは、けっこうスリリングでした。これが抑鬱的でなくかなりコミカルに書かれているので、それがまた彼の狂気の不気味さを際だたせているんですよね。なんとなく現代版実存主義文学という印象の作品でもありました。

これがマッカーシーのデビュー作とのことですが、1ページ目で本人に語らせる事故の説明の仕方からしてタダモノではない予感で、出だしから引き込まれてしまいました。今後も楽しみな作家です。

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Maddigan's Fantasia, by Margaret Mahy

Maddigan's Fantasiaこちらはマーガレット・マーヒーのSFチックなYAファンタジイのようですね。まあYAとはいいながら、マーヒーの場合は並みの大人向けの作品よりひねくってありますので、ありきたりのファンタジイじゃないだろうと思うんですが。

かろうじて絶滅をまぬがれた未来の地球で、疲弊した国土と人々の心を治癒して歩くファンタジアの一行は、魔術師やピエロ、空中ブランコ乗りや楽団ということなので、サーカス団が人々の心のよりどころになっているという設定なんでしょうかね。なにやらブラッドベリやスタージョンやトム・リーミイ、チャールズ・G・フィニーあたりの懐かしい雰囲気が……。

で、このサーカス団の団長の娘が、サーカスの新入りの特殊な能力を持った3人の少年と、怪しい冒険に巻き込まれるという話とのこと。秘密の使命を帯びたサーカス団という設定と、この表紙だけでも惹かれてしまいますね。

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The Wall and the Wing, by Laura Ruby

The Wall and the Wing面白そうな本をいただいたと大喜びしていたら、じつはすでに持っていたというよくある話^^; いやまあなんとなくタイトルに見覚えがあったんですけど。

いやでもこれは表紙もそそられますし(なにやらバカでかいネコがいるというのは置いといて)、ストーリーもかなりハチャハチャそうですよ。だれもが空を飛べる世界で、飛ぶ能力のない孤児の少女ガール(Gurl)が浮浪者として生活してるんですが、あるとき彼女は自分の姿を消せることに気づきます。ところがその能力を知った悪党に利用されて……という、なかなか大胆な児童書のようですね。

味方になってくれるのは飛ぶのを習い始めた少年バグ(Bug)。二人はギャングの親玉に追われながら、赤い目にヤスリで歯を尖らせたネズミ人間たちや、不思議な能力を持ったネコ、機械仕掛けのサルや、かなりアブナイ大学教授を相手に、ブラック・ユーモアの利いた活劇を繰り広げるのだとか。これは読んでみる価値ありそうです。

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Saturday, October 28, 2006

Godspeed, by Will Christopher Baer

Godspeedこの危なそうな本、11月発売予定だったので楽しみにしてたんですが、いつの間にか来年の3月に延期になったようですね。カバーもすごい好みの感じなんですが、ウィル・クリストファー・ベアの初めてのホラーとのこと。堕天使や悪魔の子供、不死人やゾンビーが巣食う煉獄を舞台に、過激な物語が展開しそうです。

ジャック・ウォマックやウィリアム・バロウズから、コーマック・マッカーシイ、デイヴ・エガーズ、チャック・パラニュークにウィリアム・T・ヴォルマンが引き合いに出されてますが、いったい何なんだ~、これは、という感じですね(いえまあ、このあたりの作家はほとんど読んでないんですけど、エガーズ以外はみんなブラックホール並みに暗そうですよ^^;)。ベアのブレイクアウト・ノヴェルになりそうですね~。

作者のサイトも危険な臭いがプンプンしてますが、鬼畜ミステリの3部作(Kiss Me Judas / Penny Dreadful / Hell's Half Acre)は Phineas Poe のタイトルで1冊本にまとまったようですね。quark さんが感心していたくらいなので、かなりえぐいみたいですが、そろそろどこかから邦訳出ないのかな?

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Thursday, October 26, 2006

Random Walk with a New Blog

以前からヘンな洋書店とか怪しい本が置いてあるとか、勝手なことを書いてきたあの京都寺町店があるランダムウォークですが、本のニュース中心の新しいブログが登場したようです^^) う~ん、表立って怪しいことは書けないんでしょうね、なにやら真面目な話題ばかり並んでますよ。いやまあイグノーベル賞はかなり怪しいですが。

おや~、リンクにこっそりうちのブログも紛れ込ませてありますね。これいじょう悪口書いたら抹消されたりして^^; 寺町店専用のブログというわけではないようですので、みんなでいろいろ要望書いたら本のセレクションに反映してくれるかもしれませんよ。チャイナ・ミエヴィルの特集やってほしいとか、リトル・ニモの大型本を立ち読みしたいとか^^) 更新を楽しみにしましょう。

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Tuesday, October 24, 2006

The Nebuly Coat, by John Meade Falkner

The Nebuly Coatウィルキー・コリンズの影響を受けて書かれた The Nebuly Coat という 1903年出版の有名なミステリがあるんですが、その朗読をパブリック・ドメインで提供してくれている人がいるみたいです。こちらのブログで The Nebuly Coat というタイトルのポストを探してみてください。現時点で14章まで来てますので、そろそろ完結のようです。

寂れた田舎町に教会を修復するために呼ばれた建築家が、領主の跡継ぎをめぐる陰謀に巻き込まれる、コメディでもあり、悲劇でもあるマーダー・ミステリだそうです。有名なわりには、邦訳はないようですね。

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Monday, October 23, 2006

His Majesty's Dragon, by Naomi Novik

His Majesty's Dragonアン・マキャフリイのパーンの竜騎士とパトリック・オブライアンの海洋冒険ものをミックスしたような作品で、ピーター・ジャクソンが映画化予定なんていったら、どうせお手軽な作りの薄っぺらな作品だろうと高をくくってたんですが、どうしてどうして、むちゃくちゃ面白かったです。

まあナポレオン戦争に竜が登場するというリージェンシーものといえる時代背景のため、同様にナポレオン戦争を題材にしたスザンナ・クラークの傑作 Jonathan Strange & Mr Norrell と比較される運命にはあるんですが、たしかに新しいアイデアも驚くような展開もなく、文章も回りくどさで時代の雰囲気を出したような並のレベルで、ファンタジイあるいは小説としては取り立てて見るべきものはありません。けど、冒険ものとしては文句のつけようがない楽しさなんですよね。

ナポレオンの軍勢がイギリスへ進出するのを押しとどめようと、ネルソン提督らが躍起になっている最中、イギリス海軍の船長ローレンスが、一隻のフランス船を拿捕します。一見何の変哲もない船ながら、船倉には巨大な竜の卵が積まれてました。戦闘用の竜の保有量ではフランスに大きく遅れを取るイギリスにとっては、竜の卵は貴重な戦利品でした。

ところが困ったことがひとつ。竜の卵がいまにも孵化しそうなのです。竜は誕生と同時にひとりの飛行士と絆を結び、その絆はどちらかが死ぬまで切れることはありません。そのため、竜を扱う精鋭部隊は空軍として独自の組織を持ち、ローレンスの属する海軍とは別の指揮系統下に置かれます。とはいえ、空軍基地に卵を送り届けているだけの時間はありません。やむなくクジで選んだ見習い船員を竜のパートナーにすることにします。

そして孵化した巨大な犬ほどの大きさの漆黒の竜。皆が見守る中、見習い船員が餌付けをしようとしますが、開口一番、竜が話しかけたのは船長のローレンスでした。卵の中で成長する間に外部の会話を耳にしてきた竜は、最初から流暢な英語を操ります。意を決して竜のパートナーとなったローレンスですが、それは海軍からの決別を意味しました。それだけではなく、つねに竜と行動を共にする飛行士は、まともな家庭も持てない運命にありました。大量に食料を摂取し日に日に巨大化する竜のテレメアとともに、婚約者とも別れ、空軍という新しい環境に放り込まれたローレンスの苦難の日々が始まります……。

とまあ、一旦は不運を覚悟したローレンスですが、じつはこの有名な戦艦の名前をもらったテメレアという竜がすごくいい子なんですよね。金の鎖をもらってはしゃいだり、ローレンスに本を読んでもらって見識を深めたり。最初は息子として、次には親友として、そして次第に絶対の信頼が置ける同僚として、パートナーの絆は深まっていきます。また、上下関係も緩く、ローレンスの目にはかなり風紀が乱れていると映った空軍も、テメレアのトレーニングを通して衝突を繰り返していくうちに、次第に身に馴染んでいきます。いっぽう、テメレアの素性についても、竜の権威に出会って、中国からの国外持ち出しは厳禁になっている、インペリアルという高度な知性を持つ希少種であることがわかります。じつは、中国からナポレオンへの献上品をイギリスが掻っ攫ったんでした。

次第にナポレオンの脅威が国土に迫る中、テメレアをまじえた若き竜たちの訓練の完了が急がれます。

一見お手軽な設定ながら、この作品が成功している理由のひとつは、組織の中で壁にぶつかりながらも、少々気短とはいえ辛抱強く自分の意思を通していくローレンスの小気味よさにあります。このあたりのドラマとカタルシスの開放は海洋冒険もの王道といえますね。また、成長すると体長10メートル、翼長30メートルに達する竜に小隊が乗り込んでの空中戦は、相手の竜に乗り移っての肉弾戦も含め、戦艦同士の海戦をそのままの迫力です。そして、船でありながら戦友である竜との心の交流も、ときにコミカル、ときにホロっとさせる魅力に満ちていて、ばかげた設定に見えながらも、逆に大きな強みになっています。

う~ん、男の世界……といいたいところですが、じつは竜によっては女性の飛行士しか受け付けないため、空軍には女性の兵士もいるんですよね。なにやら続巻以降ではローレンスのロマンスの気配も。このあたりは今風といえましょうか^^)

Temeraireともかく、海洋冒険ものの枠組みを十分に生かして、竜という花を添え、ごく丁寧に描かれたこの作品、映画化を待たずとも、翻訳されれば日本でもかなりのファンを獲得するんじゃないでしょうか。当初3部作といわれていましたが、作者のナオミ・ノヴィクは現在4作目を執筆中とのことで、ひょっとすると息の長いシリーズになるのかもしれません。オフィシャル・サイトには作者のブログも含めいろいろ補足情報があるようです。

ちなみにこの第1巻、アメリカ版はペーパーバックで出版され His Majesty's Dragon というタイトルですが、一足先に出たイギリス版は Temeraire というタイトルでハードバックになってます。このハードバックは今のうちに初版を押さえておいた方がよさそうですよ^^)

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Sunday, October 22, 2006

Un Lun Dun, by China Mieville

Un Lun Dun来年2月発売の作品ですが、ARC を手に入れたので読んじゃいました。

いやもうこれが楽しいのなんのって、モンスターが大好きというだけあって、ヘンテコな怪物のオンパレードですね(こちらで作者自身の挿絵がいくつか見られます)。大人向きの作品ではいやというくらいに重厚な描写に凝る作家ですが、今回はYAものということで、それほどの書き込みも必然性も要らないためか、もう大はしゃぎで好き勝手やってます^^; さすがミエヴィルだけあって、並みの作家の何冊分かのアイデアを惜しげもなくつぎ込んで、おもちゃ箱をひっくり返したというより、トイザラスが竜巻にあったような楽しさです。

タイトルの Un Lun Dun は、やっぱり unLondon でした。ザンナとディーバという二人の少女が、動物にじっと観察されたり、傘の化け物を目撃したりという奇妙な出来事に遭遇したあと、unLondon にまぎれ込みます。ここでは手足の生えたゴミや、立派な車掌の乗った旧式の二階建てバスなど、こちらの世界で捨てられたもの、時代遅れになったものが命を得て、ヘンテコな住人たちと共にシュールな世界を作り上げていました。

ところが、スモッグという悪者が、毒ガスを手に町を手中に収めようと悪巧みをめぐらしています。じつは、ザンナは、予言書にある shwazzy(フランス語の choisi = chosen が訛ったものらしい)として、町を救うべくこの世界へ呼び寄せられたもののよう。ということで、二人の少女は、本の服を身に着けた男や親切な車掌とともに、半幽霊の少年にまとわれつかれながら、サカナの泳ぐ空を飛ぶダブルデッカーで巨大昆虫と空中戦をしたり、屋根の上に住む人々に助けられたしながら、宙に浮く巨大な橋を目指します。

でまあ、ここまでが冒頭の5分の1程度なので、とても全体のあらすじを紹介する元気はありません。意外にも、主役と思しきザンナが早々と引っ込んで、脇役だとばかり思っていたディーバがじつは主役だったりと、クリシェになれたこちらの読みを裏切る展開にはことかきません。日常生活や常識をコミカルに茶化すパロディと、言葉遊びへのこだわりは、たしかに『不思議の国のアリス』や Phantom Tollbooth の世界ですね。主人公のディーバの性格が、フィリップ・プルマンの無愛想なライラではなく、ジョーン・エイキンの元気なダイドーなのは、これだけでも二重丸でしょう。

余談ですが、ジョーン・エイキンのファンだと公言している作家には、ミエヴィルのほかにもケリー・リンクやエリザベス・ハンド、リズ・ウィリアムズなんかがいますが、みんなストーリー・テリングの名手ですね^^) さもありなんという感じですけど。

ということで、タイトな作品作りや、ミエヴィルのいつもの重層的な世界を期待すると面食らいますが、two-fisted rollicking fun romp を探している人にはもうピッタリです。ミエヴィル入門にもちょうどいいかも知れません。しかしでも、こんなに一度に大量のアイデアを放り込んでしまって大丈夫なのかと思ったら、この世界を舞台にした作品のアイデアはまだいくつもあるそうで、やっぱり化け物作家だけのことはあります^^)

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Saturday, October 21, 2006

"Alabaster" by Caitlin R. Kiernan

Alabaster読みました~。なかなか好みだったです。

主人公はアルビーノでウサギのような赤い目を持つ少女ダンシー・フラマリオン。彼女は頭の中に鳴り響く「天使」の命を受け、ナイフ一本を携えモンスター退治のため、町から町へと流離います。この短編集には現時点で発表されているダンシー・シリーズの全5篇が収録されています。

最初の "Les Fleurs Empoisonnées" ではいきなり、短編集 To Charles Fort, with Love の "So Runs the World Away" に出てきたデッド・ガールとボビーに再会できて喜んでしまいました。この二人だけでもかなりアヤシイ……。彼女らが乗った車が拾ったヒッチハイカーの少女がダンシー。そしてその車が行き着いた先は、19世紀から代々子孫に受け継がれてきたお屋敷です。その女当主アラマットは The Stephens Ward Tea League and Society of Resurrectionists という女性だけの組織の長でもあります。そう、そこは女食屍鬼たちの館だったんです。これはダンシー対モンスターだけでなく、女食屍鬼同士の関係もけっこう楽しめる作品でした。

"The Well of Stars and Shadow" はダンシーが8歳のときの物語。アルビーノのダンシーは強い日差しを避けるため、夕暮れ時にならないと外に出ることができません。彼女は腰の辺りまで伸びた草を掻き分け、湖の畔にある黒人のジューブ爺さんの小屋まで遊びに行きます。そこで起こった奇怪な出来事…………。最初はほのぼのしていた子供と老人のやりとりだったのが、ミスター・ジューブは何かを察知すると緊張感を高め、ダンシーを護ろうとします。自然とともに生きる老人の知恵みたいなものがとてもよく描かれていて、かなり気に入った作品です。

"Waycross" は、ガイナンダーというモンスターの美しい小箱がダンシー見せた奇妙な物語。

表題作 "Alabaster" は、ダンシーがトイレに立ち寄ったガソリンスタンドが舞台。そこには Live Panther-Deadly Man Eater の看板があり、スタンドのおやじは本物のヒョウを飼っていると言い張ります。ダンシーは見たくてたまらないのですが、見物料を出さないと見せてくれないという。お金の無いダンシーがトイレの帰りにキャンベルスープをくすね、裏から出ようとすると……。

最後の "Bainbridge" は、19世紀末に建てられ、たくさんの霊が封印されている朽ちかけた教会に押し入るダンシー、闇の女王と天使の戦い("Murder of Angels" を読んでいると分かりやすいようです)、1982年フロリダのペンサコラ・ビーチをさまよう自殺願望の少女ジュリア・フラマリオン(!)、この時代も場所も異なる3つの物語が同時に語られ、それらが徐々に交わって行くちょっと複雑な構成の作品なのですが、これでダンシー・シリーズのおおまかな設定が分かるようになっています。

どれも、最初から敵が分かっていてダンシーが退治に行くというのではなく、天使のお告げの通りThresholdそこに行くとヘンなもんに出くわしてしまったという感じなのですが、読者側でも、いつどんなモンスターが出てくるのか最初は分からないので、これが逆によかったです。モンスターを次々と退治していく物語というと単純に思えるかもしれませんが、モンスター退治の場面はかなりあっさりしています。それよりも、アルビーノで特別な使命を課せられたダンシーの心理、エニグマティックな事象、そしてダンシーと他の登場人物(モンスターや物も含む)とのやりとりなどが楽しめる作品集でした。

ちなみに上記は収録されている順番にご紹介しましたが、年代順の目次というのもあってダンシーの子供時代から順に読むのもOK。ただ作者は上の順番が気に入っているそうで、私もこの順で読むのが最良だと思いました。

ダンシーが出てくる 2001年の長篇 "Threshold" のマスマーケット版が来年1月に出るみたいですね。

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The Keep, by Jennifer Egan

The Keepけっこう評判いいようなんですが、個人的には外れでした。ゴシックの古城を舞台にした幽霊劇と、メタフィクショナルな仕掛けっていうのが期待持たせたんですが、キャラクタに魅力がないしストーリーはどっちでもいいし、どうも合いませんね。

首になりかけのシステム屋さんが、欧州のとある国の古城をホテルに作り変えるという裕福な従兄弟の誘いに乗って、ネットとの接続を確保するための衛星受信のパラボラ・アンテナを抱えてやってくるんですが、その従兄弟というのが、昔遊び仲間と洞窟に置き去りにした相手で、果たして好意で呼んでくれたのか、それとも別に真意があるのか、二十年ぶりともなるとちょっと安心できません。

従兄弟の電話によれば、ドイツなのか、オーストリアなのか、はたまたチェコなのか、国境線が不安定なので定かでないという、人里離れた古城にやっと辿り着いた主人公は、テレビも電話も置かない、現代生活から隔絶したことを売り物にするホテルへの改装に携わるスタッフとともに、いささか不安な生活を始めますが、塔に居座って出てこないという元の持ち主の男爵夫人と出会ったあたりから、だんだん怪しい話に引き込まれていきます。

……というのが、刑務所で創作講座を受講する囚人が書き始めた物語。女性講師に手ほどきを受けて創作に目覚めた語り手は、無為の時間を埋め尽くすべくタイプをたたき続けます。

微妙にゴシックなモチーフを散りばめた話中話の部分と枠物語の部分が、最後につながってあっとびっくり! けどまあ真相は最後まで曖昧のまま……という仕掛けなんですが、ま、そのあたりはいいとしても、ストーリーの部分が今ふうに気取ってて、中途半端に表現上の小細工をするのでかなり興醒めなんですよね。コメディとしてもあんまり面白くないし。

いっそのことアンドリュウ・クルーミイにように飛んでしまうか、二コール・クラウスやカルロス・ルイス・サフォンのようにくさーい人情もの(褒めてます)にしてくれたらよかったんですけどね。まあさすがにジェレミー・ドロンフィールドみたいに器だけで中身なし(って、The Alchemist's Apprentice しか読んでないですけど)というほどではなくて、それなりの物語にはなってるし、様々な形の牢獄からの開放という、テーマ的にもプロット的にもちゃんと片はつけてるんですけど。ジャンルものの切れ味がないくせに小賢しいというのがいまひとつ乗れない理由でしょうか。

他の人の感想も聞いてみたいですね。まあジェニファー・イーガンならそのうち邦訳が出そうな感じですけど。

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Friday, October 20, 2006

Farewell Summer, by Ray Bradbury

Farewell Summer届いたんで一気に読んじゃいました^^;

う~ん、何もいうことはないですね。作品としてはそれほど出来がいいとも思いませんが、あの続編が読めるというだけでもう満足。散文詩のような文章は健在で、いかにもブラッドベリらしいイメージとアイデアがふんだんに散りばめられています。

夏が終わり、ふと、死の気配を感じたダグラスは、弟のトムや遊び仲間と、死を体現する老人たちや、死をもたらす時との戦いに挑みます。心臓の鼓動を忘れないようにメトロノームを身近から離さない老人をオモチャの鉄砲で撃ち殺し、その相棒を自転車で襲って脚を折らせたダグラスたちは、年を取らないためにお菓子を食べるのをやめたり、時計台に忍び込んで花火で時計を壊したりするんですが……このあたりのイメージ、懐かしいですね^^)

とはいえ、対する老人たちも負けてばかりではなく、心理戦で少年たちに年を取らせる作戦に出るんですが……このあたりの切り返しは、お約束とはいえ微笑ましいですね。まあ少女の登場や、死に対する生の連鎖のイメージはいまひとつですが、締めくくりの老人と少年の言葉を超えた対話が、どちらもブラッドベリを象徴してるみたいな感じで、なんとも印象的です。

しかしでも、『たんぽぽのお酒』を最後に読んだのはもうン十年も前なので、今読んだらどんな感じがするんでしょうね。

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Thursday, October 19, 2006

Do the Creepy Thing, by Graham Joyce

Do the Creepy Thingグレアム・ジョイスの TWOC に続く児童書第2弾です。

前作は少年が主人公でしたが、こんどの主人公は女の子。ものわかりのいい母親と二人暮らしで、なんでも一緒にする親友もいるし、ボーイフレンド(らしきもの)にもことかかない、まあそれほど悩みもないふつーの少女です。

けど、普通だからといって問題がまったくないということじゃないんです。母親はボーイフレンドだといって、よりにもよって主人公が通う中学校の数学の先生を連れてくるし(まー悪い人じゃないんですけど、これはどーかと思いますよね)、ボーイフレンドもうじうじしてるばかりで頼りないし、親友の家庭は飲んだくれの父親のせいでひどいことになってるみたいだし。

で、そんな主人公が親友と二人でときどきする冒険が、真夜中に他人の家に忍び込んで、眠っている人の顔に鼻を近づけて15秒数えるという、肝試しのような creepy thing という遊び。人のものを盗むわけではないし、まだ一度も見つかったことはないので、なにも悪いことをしているという意識はありません。

ところが、ある老女の家に忍び込み、15秒数え終わったかと思ったときに、突然老女が目を見開き、主人公の腕をぐいとつかんで銀のブレスレットをはめてしまいます。ほうほうの体で逃げ出した主人公ですが、どうあがいてもブレスレットは取れません。さらに悪いことに、次の日の朝起きてみると、ブレスレットは消えたものの、代わりに刺青のような痕がうっすらと残っていました。

ということで、老女にかけられた呪いを背負って、主人公の苦難が始まります。

刺青を消すための資金稼ぎに、親友と二人でバーのグラスを片付けるアルバイトを始めれば、酔っ払いにはからまれるし、やっとお金が溜まって刺青を消してもらおうとすれば、高価なレーザー治療器は轟音と共に壊れてしまうし、母のボーイフレンド(つまり学校の先生)に連れられていった教会では、牧師に悪魔が憑いていると罵られるし、へんなサングラスの女には付きまとわれるし……。

老女に取り入って解いてもらおうにも、ジプシーにかけられた呪いを何十年ぶりかで他人に押し付けた老女は、主人公をお手伝いのようにこき使うばかりでせいせいした顔。

けど、ブレスレットの力は、けっして呪いなんかではありませんでした。しだいに人のこころの動きが感じられるようになった主人公は、周囲の人々の真意や弱点を理解するにつれて、逆に自分から働きかけることの重要性に気づいていきます。

ううむ、やっぱり典型的なグレアム・ジョイスの作品(vintage Joyce)ですね。超自然な要素がけっして悪意の発露ではなく、重荷として受けとめた主人公の真摯な行動が、最後には開放へと向かわせるポジティヴな展開は、いつもどおりに読んでいて気持ちがいいです。

まあ大人向けの作品と比べるとあっさりはしてますけど、TWOC のように特殊な状況を相手にしなくても、ごく普通の日常に繊細な視線を向けて、そこに潜むわだかまりをつかみ出し、逆に肯定的なパワーに変えてしまうジョイスの心霊治療師的な手際は、相変わらず見事です。

なんかこの人って、傑作以外書けないんですかね^^)

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Wednesday, October 18, 2006

The Stone Ship, by Peter Raftos

The Stone ShipInternational Horror Guild Awards の候補にもなっている作品ですが、オーストラリアの小出版社から出た新人作家のものということで、ネットの口コミで話題にならなかったら、人知れず消えてしまったかもしれません。そんなあたりも含めて、かなり obscure な本です。

結婚したばかりの妻を亡くし悲嘆にくれる主人公は、いずことも知れぬ孤島を訪れ死のうとしますが、そこには先住者がいました。つまりはまあ、主人公と同じことを考え、自ら命を絶った男が、成仏できずに幽霊としてくすぶっていたんですね。主人公は、どうせ死ぬつもりなら、幽霊からすべてを奪ったある大学教授に復讐する手助けをして欲しいと頼まれます。出鼻をくじかれた形の主人公は、思い切って死ぬこともできず、このかなり怪しい幽霊の依頼に乗ってみることにします。う~ん、このなさけない主人公のキャラクタ設定がなんとも秀逸。

二人が向かった先は、いずことも知れぬ国の海辺にある、ただ「大学」とのみ呼ばれる巨大な施設でした。ただひとつの橋により浜辺と結ばれ、海中にそびえる大学は、さながら表紙で描かれたバベルの塔のおもむき(モン・サン・ミッシェルみたいな感じなんですかね)。いっぽう、海辺には、入学許可を待つ学生や使用人への志願者で、大きな町ができていました。主人公は使用人としてもぐりこもうとしますが、お役所仕事を絵に描いたようなこの町では、申し込みをするだけでもあちこちの窓口をたらい回しされ、一向に埒が明きません。とはいえ、もともと官吏出身の主人公、賄賂の使い方はお手のものでした。

首尾よく図書館の雑用係として採用された主人公ですが、早々に迷路のような図書館で阿鼻叫喚の騒乱に巻き込まれます。この図書館では、哲学の奥の院を筆頭に、最下層の辺縁に配置された人文科学まで、ジャンルによる階級体制が敷かれ、ときどき行われる階級の入れ替えに、図書館員たちが暴動を起こしていたのでした。難を逃れた学生たちとともに、図書館の地下へと向かった主人公は、廃れてしまった学説や流行遅れの文学が、インクを吸い取られ白紙の本へと変えられていく様子を目にします……。

ということで、官僚主義のはびこる大学を皮肉ったリアリズム……いえ、パロディですが、基本的に寓話というよりは、グロテスクでお馬鹿な逸脱を楽しむタイプの本ですね。カフカ風の官僚主義の悪夢というよりは、ゴーメンガーストの醜怪な奇想といいますか。200年以上もこの世界を牛耳る学長や、大学の地下に棲む死肉喰らいの怪物も登場しますよ。でまあ、幽霊の復讐譚もじつのところマクガフィンで、当然のことながらアンチ・クライマックスな展開に向かうんですが、最後の最後で見せるスペクタクルにはウケちゃいました。

大向うを唸らせるような傑作とはいいませんけど、ゴシックな暗い笑いが好きな人、とくにジェフリイ・フォードの『白い果実』なんかに目がない人なら、泣いて喜ぶような作品でしょう。

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"And Only to Deceive" by Tasha Alexander

And Only to Deceiveヴィクトリア時代の女性といえば、社会的権利が認められていず、抑圧された存在という印象がありますが、この "And Only to Deceive" の主人公エミリーは結婚後半年で好きでもなかった貴族階級の夫を亡くし、遺産と自由を同時に手にしたという羨ましい……じゃなくて、可哀相な……でもないですねぇ。まぁ、突然お金持ちになっちゃうというのは、いかにもヴィクトリア時代小説の人?And Only to Deceive

ところが夫の死後、彼の古代ギリシャ文学や骨董品への情熱を知ると、エミリーは亡き夫に初めて興味を持ちだし、夫の交友関係などからアフリカのサファリでの彼の死は事故ではなかったのではと疑い始めることに。

これにロマンスやら、古代ギリシャの文学やら美術やらの蘊蓄が絡んでくる、ヴィクトリア時代の雰囲気をかなり味わえるミステリのようです。

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Tuesday, October 17, 2006

"Frank Was a Monster Who Wanted to Dance" by Keith Graves

Frank Was a Monster Who Wanted to Danceハロウィーンも近いということで、こんな絵本はどうでしょ?

フランケンシュタインみたいなツギハギ顔のフランク。彼の夢はスポットライトを浴びて踊ること。テレビで「ソウルトレイン」を見てたら無性に踊りたくなっちゃって、車で劇場までひとっ走り、ステージに上ってとうとう踊り出しちゃったそうです。

夢を追うモンスターっていうのもいいですね~。でも、なんかとんでもないことになる予感が……。アマゾンで中を少し見れるのですが、フランクのペットの猫もユニークですね。

隠れカエル・コレクターがいるという噂を聞いていますが、そういう方には同じキース・グレイヴズのイラストの "Too Many Frogs" なんてのもありますよ~。

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Monday, October 16, 2006

Never the Bride, by Paul Magrs

Never the Brideなかなか楽しかったですよ。

北海沿岸のタラの水揚げで有名な港町ウィットビイで、波乱万丈の生活から足を洗って、余生は静かに暮らしたいというブレンダが、念願のベッド・アンド・ブレックファストを開きます。友達はといえば、隣の骨董屋の女主人エフィ。ところが老女の願いとは裏腹に、二人のまわりで起きるのはヘンテコな出来事ばかり。

突然若返った知り合いの謎を追ってビューティー・パーラーに潜入すれば怪しい陰謀がうごめいているし、クリスマス・エルフの衣装を着た若者を侍らせているホテルの女支配人の周りでは行方不明が続出するし、人里はなれた田舎から出てきたというB&Bの泊り客の一家はなにやら人間離れしてるし、ブレンダの父親がテレビのイカサマ霊媒師の口を借りて、地獄の口が開こうとしているので気をつけろと警告を発するし……。

ところがこのブレンダ、ミス・マープル風の設定かと思いきや、かなりの肉体派。若返り機は壊してしまうし、光線銃の攻撃からは身を挺してエフィを守るし、並大抵の作りではないのです。それもそのはず、ブレンダはじつはXXXなのでした(いちおう伏字にしておきます^^)。ううむ、顔の縫い目は濃い化粧で隠しているし、両手両足のサイズの違いはそれほど目立つわけでもないんですけどね。いっぽう、エフィのほうも、本人は知ってか知らずか、やはり並みの人間ではない様子。

ということで、この老女のコンビが、地獄の口が開くのに合わせて町へとやってくる怪人怪物に伍して、人類の危機を救う大活躍をするんですが、やむなく事件に巻き込まれるブレンダの奥ゆかしさと、エフィののほほんさがなんとも魅力的。続編も用意されているということなので楽しみです。ちなみにウィットビイはブラム・ストーカーの故郷ということで、当然おなじみの怪人も登場します。

設定としてはハロウィンに合わせて怪人が大集合する手の作品と同系列なんですが、大きく違うのは、作者が英国産の怪物に拘っていることですかね。アメリカ的なホラー色を廃して、シェリー、ストーカーからスティーヴンスン、ウェルズと、怪奇小説の根っ子はイギリスにあるんだといわんばかりに、古典からパルプ・フィクションまでのモチーフを次々と繰り出してきます。まあこのあたりの古典にはあまり詳しくないので、実際はわたしが気づいた以上に色々な古典からの借用が隠されていそうです。

ジャスパー・フォードがもう少し高級な文芸作品のパロディを手掛けているのに対し、こちらは大衆小説で同じことをやろうとしているようですね。フォードほどの新奇さはありませんが、かなり気まぐれな展開というか、素人臭さが味になっているフォードに対し、こちらは手馴れた上手さを感じます。

作者のポール・マーズ(あるいはモーズ)は、本職は大学の創作講座の教師で、1969年生まれとまだ若いながら、ドクター・フーの脚本やフランチャイズものを手掛けたり、児童書でもごく良質の作品を書いているという(Exchange はかなりよかったですよ)かなりのベテラン。この作品でブレイクしなかったとしても、いつかは傑作をものする人じゃないでしょうか。ともかく楽しみなシリーズがひとつ増えました。

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Thursday, October 12, 2006

2006 National Book Award Finalists

こちらは今年の全米図書賞の候補作。フィクション部門のみリストしておきます。去年はほんとに知らない作家ばかりでしたが、今年はその反動のように人気作家の作品ばかりが並びます。The Zero

いちおうマーク・ダニエレヴスキーとリチャード・パワーズとジェス・ウォルターのものは入手済みか入手予定なんですが、果たして読むんでしょうか^^; 受賞作の発表は 11/15 とのこと。

ちなみに、児童書部門の Gene Luen Yang の American Born Chinese は、候補作としては初めてのグラフィック・ノヴェルだそうです。

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2006 Man Booker Prize Winner

The Inheritance of Loss遅ればせながら、こちらの受賞作はキラン・デサイの The Inheritance of Loss でした。前評判の高かったサラ・ウォーターズはだめだったんですね。

ふむ~、イギリスで教育を受けた判事が、インドを追われて、移り住んだニューヨークでも疎外されるという、正統派の小説みたいですね。う~ん、怪しいインドの話なら好きなんですけど(『真夜中の子供たち』とか)、これはやっぱりパスかな~。

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2006 Nobel Prize in Literature Goes to Orhan Pamuk

雪待ちに待ったオルハン・パムクです。やっと~という感じですね^^) よかったよかった。

オフィシャルなアナウンスはこちら

日本語訳はいまのところ『わたしの名は「紅」』『雪』だけですね。『わたしの名は「紅」』は読みましたけど、むちゃくちゃお薦めです(日本語訳はかなりひどい文章ということでしたが、英訳もぎごちなくて、ほんとはもっと滑らかな翻訳が欲しいんですけど)。My Name Is Red

英訳ではかなりの作品が手に入ります。

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Tuesday, October 10, 2006

The Great Victorian Collection, by Brian Moore

The Great Victorian Collectionということで読みましたが、ううむ、なんか微妙。

ヴィクトリア朝を専門とする美術の教授が、学会で訪れたついでに泊まったカリフォルニアのカーメルのモーテルで奇妙な夢を見るんですが……。前の晩、モーテルの隣の広大な空き地だったはずのところを埋め尽くすのは、まるで骨董市が引っ越してきたかのようなヴィクトリア朝の美術品の数々。

ところがこの宝の山、目を覚まして消えるどころか、世界中の美術館や著名なコレクターが所蔵する逸品と寸分の違いもない粋を集めたものだった。なかには記録に残っているだけで散逸してしまったと思しき品も混じっていたり、一画にはポルノがびっしり詰まった隠し部屋がしつらえてあったりと、疑いもなくヴィクトリア朝の家具調度、書籍、美術品の世界一のコレクションだった。

ということで、夢のようなというより、夢から生まれたヴィクトリア朝の一大コレクションが、専門家の手により紛れもない本物であることが立証されるんですが、ここに困ったことがひとつ。教授が町を離れようとすると、一部が日本製の粗悪な模造品に変わったり、雨が降ってきたりするんですね。でまあモーテルでずっと過ごすことになった教授、コレクションの一部とも見紛うような新聞記者のガールフレンドに横恋慕し、秘書に仕立て上げるんですが……。

まあミイラ取りがミイラになったようなコメディではあるんですが、じつのところかなりポイントレスな話で、なんとも身も蓋もない結末が待ってます。ま、チャーミングといえなくないこともないんですが、同じムーアでもクリストファー・ムーアあたりがこの設定で書いてくれたほうが、もっとオフビートで楽しいものになったかもと思わせるような作品でした。なんとなくタイトル負けしてます。

作者のブライアン・ムーアは、ブッカー賞に3度もノミネートされたというかなりの大家みたいですので、他の作品はもっと力作なのかもしれないですね。

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Sunday, October 08, 2006

Frankenstein Makes a Sandwich, by Adam Rex

Frankenstein Makes a Sandwichサンドイッチを作ろうと材料を買いに出かけたフランケンシュタイン。ところが町の人たちは、彼の姿に怯えてゴミを投げつけます。果たして材料は手に入ったんでしょうか? 透明人間の散髪シーンなんて、なんともコミカルな情景が頭に浮かび……ませんね^^;

怪物たちをテーマにした詩の絵本だそうです。オペラ座の怪人やドラキュラ、イェティやゾンビー、はたまたゴジラ(ふむ、まあ怪物には違いない)といったおなじみのキャラクターがいったいどんな目にあうのか、それぞれにタッチを変えた絵との組み合わせというのも気になります。センダックの Mommy? を買っちゃった人は、やっぱりこれも買わざるを得ないんじゃないでしょうか^^)

作者のサイトには、微妙に濃い絵がいろいろありますが、ものによってはなかなかいいですね。

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Saturday, October 07, 2006

The Absolute Sandman Vol. 1, by Neil Gaiman

The Absolute Sandman, Vol. 1作家としてのニール・ゲイマンはあんまり買っていないんですけど(あ、いえ、本は買ってるし長編は全部読んでますが、上手さの点でトップ・クラスとは言い難いという意味で)、じつはサンドマンを読んでないんですよね。

ということで、今度出た全4巻の完全版で揃えようかと思ってます。までも、日本のアマゾンだと死ぬほど高いので、これは割引率の高い本家に注文したほうがまだよさそうですね。たぶんバラバラで集めてもかなりの値段になりそうですので、悪くないんじゃないでしょうか。けど4巻となると……やっぱりかなりの散財^^;

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Thursday, October 05, 2006

An Incomplete History of the Art of Funerary Violin, by Rohan Kriwaczek

An Incomplete History of the Art of Funerary Violin19世紀初頭のヨーロッパでは、それぞれの町や村に葬送のためのバイオリン弾きがいて、独自の音楽を培ってきたんですが、これをこころよく思わない教会の弾圧に遭って、1830-40年代の大葬式粛清時代にほとんど姿を消したそうです。この作品は、細々と現代まで生き延びた葬送バイオリニスト・ギルドに属する作者が、秘史ともいえる葬送バイオリンと時代とのかかわりに光りを当てたノンフィクションだそうです。

とまあ、これだけではフーンでおしまいになってしまう話なんですけど、アマゾンでも売ってるこの本、その存在自体がまったくのデマなんだとか。こちらのNYタイムズの記事に詳しいですが、この作品のアメリカでの出版社のカタログを見て、ある書店が音楽史の専門家に葬送バイオリンについて問い合わせたのが事の発端で、そんな史実はないと知らされた出版社が作者に確認して、まったくの冗談であることが判明したというもの。イギリスの出版社と作者の手の込んだジョークだったんですね。

An Incomplete History of the Art of Funerary Violinちなみに、作者のサイトには、葬送バイオリニスト・ギルドやこの本の紹介がまことしやかに書かれています。で、気になるのがアマゾンUKで現在セールス・ランク 104位のこの本が、果たして手に入るのかどうかということ。記事を見てジョークで注文した人がかなりいるんでしょうか。注文が集まったからと、案外ジョークで出版されちゃったなんていうことも起こるかもしれません^^) いちおう日本のアマゾンでもリストされてますので、だれか注文してみませんか? いえ、わたしの場合、こういうしょうもない話題にするのもバカらしい本に手を出す趣味はまったくありません……けど、気になりますね^^;

おっと、アメリカ版もリストされてました。こっちのカバーのほうがよさそうですね。

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Wednesday, October 04, 2006

Flotsam, by David Wiesner

Flotsamなんかこの真っ赤なサカナの表紙が呼んでるんですけど~。

少年が海辺で拾った貝殻のこびりついた旧式のカメラ。中に残っていたフィルムを現像してみると、安楽椅子に座った(?)タコがお話の会を開いてたり、緑のエイリアンの旅行者がタツノオトシゴを眺めてたり、ゼンマイ仕掛けのサカナが泳いでたり、カメの背中に街が出来てたり……。中身もなんかものすご~く面白そうですよ。Night of the Gargoyles

出版社のサイトがありましたが、この三匹のコブタの表紙は見覚えがありますね。までもこれじゃああんまり今月向きではありませんので、こちらの Night of the Gargoyles か、なにやら怪しそうな Tuesday なんてどうでしょう。ううむ、この立派なカエルでは、買うなといっても買ってしまいますね。

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Tuesday, October 03, 2006

"Jabberwocky" by Lewis Carroll, Joel Stewart (Illustrator)

Jabberwockyヴィクトリア朝強化月間(?)ということで、出たのは2003年とちょっと古いですが、お馴染みルイス・キャロルの『ジャバーウォック』の絵本なんていかがでしょう?(←無理矢理こじつけ)

イラストはジョエル・スチュワート。この本、最近買ったんですが、絵がとってもかわいくて、すごーく気に入っています。表紙の色といい、縁飾りといい、まるであの時代の絵本みたい(一瞬、怪獣カネゴンかと思っちゃいましたけど)。タイトルページをめくって出てくるのはいかにもヴィクトリアンなお父さんと子供のイラスト。オマケにこれまたヴィクトリアンなエドワード・リア調の、人間の顔をしたヘンテコな動物も出てきて、ナンセンスさが光ってます。そしてなによりいいのは、少年の表情と動き。それらがジャバーウォックの詩にぴったり合ってます。Moon Zoo

ジョエル・スチュワートの絵本は、あと "Moon Zoo" も買ったのですが、キャロル・アン・ダフィーの詩にイラストをつけた、タイトル通り月の動物園を描いたこの絵本も、とっても夢があってよかったです。同じコンビの "Underwater Farmyard" も欲しかったのですが、絶版のようで残念です。

あと "The Adventures of a Nose" なんていう、鼻が自分の落ち着き先を探しに旅に出るお話もあって、これも楽しそう。出版日は今年になっていますが、2003年の再版のようです。

ジョエル・スチュワートご本人のサイトで、各絵本の中を少し見ることができます。

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Monday, October 02, 2006

Ghosthunters, by Cornelia Funke

Ghosthunters And The Incredibly Revolting Ghostコルネーリア・フンケがこんなシリーズを始めたなんて知りませんでした。

妹にまでバカにされるような臆病な少年トムが、祖母の知り合いのゴーストハンター、ヘッティ・ヒソップから幽霊退治の方法を伝授されて、地下室に巣くう並みのオバケを片付けに向かうんですが……なにやら大物に出くわしてしまったみたいですね。

Ghosthunters And The Gruesome Invincible Lightning GhostGhosthunters And The Totally Moldy Baroness!トムとヘッティと並みのオバケのヒューゴーのゴーストハンター・トリオのシリーズは、今月2巻目が出て、来年の1月には3巻目が予定されているようです。ふむ、なかなかかわいい感じがよろしいんじゃないでしょうか。

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Sunday, October 01, 2006

Hagakure in End of the World Blues

End of the World Bluesquark さん命名の nawa-no-ukiyo が、ジョン・コートネイ・グリムウッドの新作 End of the World Blues に登場することは以前お伝えしましたが、その現物を手に入れました。

じつは何を隠そう、神出鬼没の quark さんとわたしは忍者の末裔で(嘘)、葉隠れに関する権威でもあるので(大嘘)、グリムウッドのたっての頼みで(誇張)、作品に登場する葉隠れからの引用を正しく英語にする手伝いをしたのでした(ちょっとホント)。

で、そのグリムウッドですが、なんともうれしいことに、巻末の謝辞の冒頭で、そのことに触れてくれています^^)

Acknowledgements

(a nanny mouse) and (quark) for translating lines from Yamamoto Tsunemoto's Hagakure Kikigaki. Without this help writing EWB would have been much harder. Also my thanks for their help in coming up with a suitable Japanese term for 'floating rope world...' (All of the suggestions were excellent, but nawa-no-ukiyo caught exactly the right combination of history and artistic subversion.)

ううむ、そんな大それたことをしでかした……いえ、たいした事をしたわけではないんですが、あれでよかったんでしょうか^^; いやまあ、うまく行ってるところはわたしのおかげで、まずいところは quark さんのせいなのは確かなんですけど。はてさて、読んで確かめてみましょうかね。

[追記] こちらに感想上げました。(2007/4/22)

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The Great Victorian Collection Month

はてさて、やっと夏ともおさらばして読書の秋ですね。と同時に10月はホラーの月でもあります。ということで、今月はテーマを設けましょう。題して "The Great Victorian Collection Month"

というのが、このところヴィクトリア朝ものが流行りで、この秋にも The Meaning of Night とか The Glass Books of the Dream Eaters なんていう大作が登場してますし、ここ数年ホラーの世界で主流になっているゴースト・ストーリーも、もとはといえばヴィクトリア朝時代に盛んになったもので、The Thirteenth Tale なども、舞台は現代でありながらヴィクトリア朝の幽霊物語の面影を色濃く示すといわれています。あるいはちょっと時代を遡って19世紀初頭のリージェンシー時代に目を移すと、Temeraire なんていう竜の出てくるナポレオン戦争の物語もありますし。The Great Victorian Collection

そんなわけで今月はヴィクトリア朝ものとホラーをメインに読む月といたします。ただしまあ、上述の大作は他の方にお任せして、ちょっと古い作品になりますが、わたしはブライアン・ムーアの The Great Victorian Collection でお茶を濁すことに……なんせ 200ページ程度と手ごろな長さだし、面白そうだし……。ううむ、月のあたまから詐欺を働いてどうする^^;

いえ、まじに読めたらこの秋の話題作をカバーしていきましょう。ご協力お願いします。

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