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Monday, October 23, 2006

His Majesty's Dragon, by Naomi Novik

His Majesty's Dragonアン・マキャフリイのパーンの竜騎士とパトリック・オブライアンの海洋冒険ものをミックスしたような作品で、ピーター・ジャクソンが映画化予定なんていったら、どうせお手軽な作りの薄っぺらな作品だろうと高をくくってたんですが、どうしてどうして、むちゃくちゃ面白かったです。

まあナポレオン戦争に竜が登場するというリージェンシーものといえる時代背景のため、同様にナポレオン戦争を題材にしたスザンナ・クラークの傑作 Jonathan Strange & Mr Norrell と比較される運命にはあるんですが、たしかに新しいアイデアも驚くような展開もなく、文章も回りくどさで時代の雰囲気を出したような並のレベルで、ファンタジイあるいは小説としては取り立てて見るべきものはありません。けど、冒険ものとしては文句のつけようがない楽しさなんですよね。

ナポレオンの軍勢がイギリスへ進出するのを押しとどめようと、ネルソン提督らが躍起になっている最中、イギリス海軍の船長ローレンスが、一隻のフランス船を拿捕します。一見何の変哲もない船ながら、船倉には巨大な竜の卵が積まれてました。戦闘用の竜の保有量ではフランスに大きく遅れを取るイギリスにとっては、竜の卵は貴重な戦利品でした。

ところが困ったことがひとつ。竜の卵がいまにも孵化しそうなのです。竜は誕生と同時にひとりの飛行士と絆を結び、その絆はどちらかが死ぬまで切れることはありません。そのため、竜を扱う精鋭部隊は空軍として独自の組織を持ち、ローレンスの属する海軍とは別の指揮系統下に置かれます。とはいえ、空軍基地に卵を送り届けているだけの時間はありません。やむなくクジで選んだ見習い船員を竜のパートナーにすることにします。

そして孵化した巨大な犬ほどの大きさの漆黒の竜。皆が見守る中、見習い船員が餌付けをしようとしますが、開口一番、竜が話しかけたのは船長のローレンスでした。卵の中で成長する間に外部の会話を耳にしてきた竜は、最初から流暢な英語を操ります。意を決して竜のパートナーとなったローレンスですが、それは海軍からの決別を意味しました。それだけではなく、つねに竜と行動を共にする飛行士は、まともな家庭も持てない運命にありました。大量に食料を摂取し日に日に巨大化する竜のテレメアとともに、婚約者とも別れ、空軍という新しい環境に放り込まれたローレンスの苦難の日々が始まります……。

とまあ、一旦は不運を覚悟したローレンスですが、じつはこの有名な戦艦の名前をもらったテメレアという竜がすごくいい子なんですよね。金の鎖をもらってはしゃいだり、ローレンスに本を読んでもらって見識を深めたり。最初は息子として、次には親友として、そして次第に絶対の信頼が置ける同僚として、パートナーの絆は深まっていきます。また、上下関係も緩く、ローレンスの目にはかなり風紀が乱れていると映った空軍も、テメレアのトレーニングを通して衝突を繰り返していくうちに、次第に身に馴染んでいきます。いっぽう、テメレアの素性についても、竜の権威に出会って、中国からの国外持ち出しは厳禁になっている、インペリアルという高度な知性を持つ希少種であることがわかります。じつは、中国からナポレオンへの献上品をイギリスが掻っ攫ったんでした。

次第にナポレオンの脅威が国土に迫る中、テメレアをまじえた若き竜たちの訓練の完了が急がれます。

一見お手軽な設定ながら、この作品が成功している理由のひとつは、組織の中で壁にぶつかりながらも、少々気短とはいえ辛抱強く自分の意思を通していくローレンスの小気味よさにあります。このあたりのドラマとカタルシスの開放は海洋冒険もの王道といえますね。また、成長すると体長10メートル、翼長30メートルに達する竜に小隊が乗り込んでの空中戦は、相手の竜に乗り移っての肉弾戦も含め、戦艦同士の海戦をそのままの迫力です。そして、船でありながら戦友である竜との心の交流も、ときにコミカル、ときにホロっとさせる魅力に満ちていて、ばかげた設定に見えながらも、逆に大きな強みになっています。

う~ん、男の世界……といいたいところですが、じつは竜によっては女性の飛行士しか受け付けないため、空軍には女性の兵士もいるんですよね。なにやら続巻以降ではローレンスのロマンスの気配も。このあたりは今風といえましょうか^^)

Temeraireともかく、海洋冒険ものの枠組みを十分に生かして、竜という花を添え、ごく丁寧に描かれたこの作品、映画化を待たずとも、翻訳されれば日本でもかなりのファンを獲得するんじゃないでしょうか。当初3部作といわれていましたが、作者のナオミ・ノヴィクは現在4作目を執筆中とのことで、ひょっとすると息の長いシリーズになるのかもしれません。オフィシャル・サイトには作者のブログも含めいろいろ補足情報があるようです。

ちなみにこの第1巻、アメリカ版はペーパーバックで出版され His Majesty's Dragon というタイトルですが、一足先に出たイギリス版は Temeraire というタイトルでハードバックになってます。このハードバックは今のうちに初版を押さえておいた方がよさそうですよ^^)

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Comments

何トンもある竜がこの程度の翼で飛べるというのは納得できないんですが、いちおうなんか体内に浮き袋があるとかいう描写がありました。までも、反重力装置かなんかなかったら無理だと思いますけど^^)

なんか bumpkin さん好みのような気がすごくするんですけど、いかがでしょう。

Posted by: a nanny mouse | Tuesday, October 24, 2006 at 01:28

体内に浮き袋。すると撃墜されたらしぼんで小さくなっちゃうんでしょうか。あるいはヒンデンブルグみたいに爆発するとか。

とっても面白そうですが、読みたい本が多すぎて^^;
帆船・ドラゴン・痛快冒険ときてピーター・ジャクソンなら、これはむしろ映画を楽しみに待とうと思います。

Posted by: bumpkin | Tuesday, October 24, 2006 at 21:45

いやでも、渋い主人公ですよ。竜も素直なかわいい子ですよ。古風なつくりのところもなかなかいいですし。

絶体絶命のところで、テメレアが○ャオスになってしまうのはつい笑ってしまいましたけど^^)

Posted by: a nanny mouse | Tuesday, October 24, 2006 at 22:14

おおっ、○ャオス! これはますます映画で見たいです。こういうのなら、田舎のシネコンにも絶対きますし。というか、こういうのしかきませんし。うむむ。

Posted by: bumpkin | Wednesday, October 25, 2006 at 23:28

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