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Saturday, September 30, 2006

Atwood Wields the LongPen

LongPen以前 quark さんがご紹介していたマーガレット・アトウッドの遠隔サイン機ですが、LongPen の名前で実用化され、ほんとうに使ってるみたいですね。とはいいなら、いろいろトラブルは多いようで、いざ本番というときに、人ゴミによる熱気でコンピュータが故障したりとか、なかなかスリリングなようです。

今回はスコットランドでのサイン会の様子をアトウッドが紹介してますが、(モデルじゃない『ラビリンス』の作者の)ケイト・モスがロンドンからトロントのファンにサインしたりと、意外にもうまく行ってしまってなにやら拍子抜けのご様子。下品なバラッドなんかこしらえてオチャメですね^^)

We sign'd it ance, we sign'd it twice,
We sign'd it four times forty;
And all wha' said it wud nae wurk
Can stuff it up their shortie.

最初にこの話を聞いた時に、ジョークだと信じて疑わなかったわたしは素直に脱帽します。いえ、依然としておバカだとは思いますが、そのおバカなことをほんとうにやってしまうなんてやっぱりエライです^^;

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2006 Guardian Children's Fiction Prize Winner

A Darkling Plainふむふむ、今年はフィリップ・リーヴの A Darkling Plain受賞でしたか。狙ったわけではないでしょうけど、シリーズ第1巻の『移動都市』our comments)の邦訳が出たばかりということで幸先がよさそうですね。

ううむ、この世界では都市ダーウィニズムの象徴として、なんでもむさぼり食らう八本腕の女神サッチャーが崇拝されているんですか^^; ちょっと住みたくはないかも。

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Wednesday, September 27, 2006

"Horns and Wrinkles" by Joseph Helgerson, Nicoletta Ceccoli (Illustrator)

Horns and Wrinkles以前、絵本をご紹介したニコレッタ・チェッコリが表紙とイラストを担当している児童書です。ミシシッピ川にまつわるファンタジーって、なんか珍しいですね。

いじめっ子のデュークは鼻から角を生やしちゃうし、デュークの両親は突然石に変わっちゃうし、ミシシッピ川沿いの町で不思議なことが起こり始めます。そこでデュークと冒険大好きないとこのクレアが奇妙なトロール3人組(!)と共に、その謎を解きにミシシッピ川に漕ぎ出します。

ミシシッピ川にトロールがいたとは初耳ですね。それもなんかちょっと妙な出で立ちをしているようで。スピード感のある、ユーモラスな物語ということなので、チェッコリの挿絵もついてるし、買っちゃうかも~。

前は無かったのに、いつの間にかニコレッタ・チェッコリのサイトができていました。

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Tuesday, September 26, 2006

A Madman Dreams of Turing Machines, by Janna Levin

ええと、ホラーは10月用にとって置くとして、なんだかよく分からないんですけど、ちょっと面白そうな本を1冊。

A Madman Dreams of Turing Machinesこのところ科学者を主人公にした伝記ともフィクションともポピュラー・サイエンスともつかないような作品が多いですけど、これは不完全性定理のクルト・ゲーデルと、チューリング・マシンやエニグマを解読したコロッサスで有名なアラン・チューリングという、共に自殺でその生涯を終えた2人の天才を追ったものだとか。

どこがよく分からないかというと、紹介やレヴュウを読む限り、どうも明確な小説の形を成していないようなんですね。アイデアと2人の生き方から、読者が哲学的な意味を読み取れということなのか、なにやら気になります。

じつはこのジャナ・レヴィンという作者、本職は宇宙物理学者で、日常的な視点から宇宙論を展開した How the Universe Got Its Spots という、これまた魅力的なタイトルのエッセイともポピュラー・サイエンスともつかないような作品も手掛けています。かなり評判になった本なので、こちらはそろそろ日本語訳でも出るんじゃないでしょうかね。

ちょっとかわいいオフィシャル・サイトとか見ると、かなり多才な人のようですね。なにやらグレッグ・イーガンの『万物理論』の主役でも務まりそうな感じです^^)

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Sunday, September 24, 2006

Moomin: The Complete Tove Jansson Comic Strip - Book One

Moomin: The Complete Tove Jansson Comic Strip - Book Oneムーミンに4コマ漫画があったなんて知りませんでした。1953年から 60年まで、ロンドンのイヴニング・ニュースに連載されたそうです。英語圏ではムーミンはそれほど知れられていないという印象ですが、そんな時代もあったんですね。

こんど出る全集は、100ページほどの5巻本に完全収録で、第1巻が10月発売とのこと。う~ん、来月はゲイマンのサンドマンの総集編も買わなきゃいけないのに、またまた散財ですね^^;

出版社のサイト6ページの見本がダウンロードできますが、買うつもりのない人は絶対見ないほうがいいですよ~。見たら間違いなく注文してしまいますので^^) こちらで1編づつ読むというのもなかなかオツかも。

しかしこの出版社の Drawn & Quarterly っていう名前、しゃれてますね。"Hung, drawn and quartered" に掛けてあるんですけど^^)

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Saturday, September 23, 2006

Songs From a Series of Unfortunate Events: The Tragic Treasury, by Gothic Archies

Songs From a Series of Unfortunate Events: The Tragic Treasuryレモニー・スニケットの「世にも不幸なできごと」のシリーズをテーマにしたアルバムだそうです。ゴシック・アーチーズなんていう得体の知れないアーティストですが、じつは Magnetic Fields のステファン・メリットが、ダニエル・ハンドラーと組んだバンドなんですね。

で、ダニエル・ハンドラーはといえば、ご存知レモニー・スニケットの別名で、Magnetic Fields にはしばしばアコーディオン弾きとして参加してますので、仲間内の遊びみたいなノリで作ってしまったんでしょうか。そのあたりの背景は、こちらのガーディアンの記事に詳しく……ないですね、これは。なんかわけのわからない漫才やってます^^; までも、音楽のほうは超一流なのは間違いないので、期待しておきましょう。

The End (A Series of Unfortunate Events, Book 13)しかし、スニケットのシリーズももう13巻目の最終巻が出るんですね。タイトルもそのものズバリの The End だ^^; 世界的にはハリー・ポッターの次に読まれているシリーズなんですが、日本ではあんまり受けなかったんですかね~。映画も公開されてますけど、なんとシリーズ名も「世にも不幸せな物語」なんて変わっちゃってますし。まあ児童書の出版社が手掛けたというのが不幸だったんでしょうけど。

とかいいながら、わたしも1巻目しか読んでなかったりして^^; それどころか最近は買ってもいないんでした。まあ全部まとめて読んでもそれほどの量ではないんで、そのうちなんとかしなきゃいけませんね。

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Friday, September 22, 2006

"Japan: As Viewed by 17 Creators" by Frederic Boilet, Taiyo Matsumoto, Benoit Peeters, Francois Shuiten, et al

Japan: As Viewed by 17 Creators「うう、かわいい表紙、なになにこれ?!」
と、チェックしてみたら、日本の漫画家9人とフランスの漫画家8人による、日本を題材にした漫画のアンソロジーだそうです。フランスの8人にはなんと、ちゃんと日本に滞在して描いてもらったそうです。すごい!

作品を寄せているのは、安野モヨコ、松本大洋、花輪和一、谷口ジロー、高浜寛、五十嵐大介、沓澤龍一郎、フレデリック・ボワレ、オレリア・オリタ、エティエンヌ・ダヴォドー、エマニュエル・ギベール、ジョアン・スファール、ダヴィッド・プリュドム、ニコラ・ド・クレシー、ファブリス・ノー、シュイテン&ペータース。JAPON―Japan×France manga collection

ふふふ、私としては松本大洋がいるだけで買いですね。シュイテンとペータースは marginalia で以前ご紹介した "Les Cités Obscures" のコンビで、こちらもどんな作品を描いたのか気になります。

ところで、英語版、フランス語版は10月発売なのですが、日本語版は昨年の12月にとっくに出てたんですね~。全然知りませんでした。どなたかもうお読みになった方、いますでしょうか?

しかし、日本語版の表紙はセンスないですね~。

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Thursday, September 21, 2006

St. Lucy's Home for Girls Raised by Wolves, by Karen Russell

St. Lucy's Home for Girls Raised by Wolvesカレン・ラッセルなんて初めて聞く名前でしたが、ケリー・リンク風の短編集といわれてつい買ってしまいました。

タイトルからしてヘンテコですが、ほんとうに人狼の娘たちが教育を受ける学校を舞台にしているとか。他にもミノタウロスの娘が出てきたり、ゴースト・ハンティングの話があったりと、子供を主人公に据えていびつな現実に光りを当てていくタイプの作品集のようですね。

23才でニューヨーカーにデビューして、24才でこの短編集ということは、相当期待されてるんでしょうね。おなじみのジョージ・ソーンダーズとかジョナサン・サフラン・フォアが引き合いに出されたり、ベン・マーカスに褒められたりと、それだけでも気になります。

短編のタイトルもちょっと目を引くものが並んでますよ。"Ava Wrestles the Alligator" とか "Lady Yeti and the Palace of Artificial Snows" なんて、いったいどんな話かと思いますね。ニューヨーカーで "Haunting Olivia""Accident Brief" が読めますので、買う前にとりあえず味見というのもよろしいかと。いえ、わたしはまだ全然読んでないんですけど^^;

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Wednesday, September 20, 2006

The Mystery of the Sardine, by Stefan Themerson

The Mystery of the Sardineポーランド出身のイギリス作家の20年前の作品の再版だそうですが、怪しいタイトルに呼ばれてしまいました。

アマゾンには内容紹介がないようなんですが、ドーキー古文書にはタイトル以上に怪しいあらすじがありました。哲学教授の家の裏庭で起きたプードル爆発事件の謎を追って、12才の数学者とその母、恋人の手相占い師、不可知大臣の一行が、論理やオカルト、直感を頼りに、マジョルカからローマ、ワルシャワ、ロンドン、そして遥か理性の彼方へと旅をするそうです。事件は無事に解決するんでしょうかね。

どう考えてもわけわかんなそうですが、これはやはり手を出さないわけにはいかないでしょう。

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Tuesday, September 19, 2006

The Meaning of Night, by Michael Cox

The Meaning of Night今年のブリティッシュ・ミステリで、おそらく一番の大作がこの作品のようですね。

ヴィクトリア朝に生きた殺人者の手記が発見されたという設定で、時代の雰囲気ばかりか文体まで再現した、込み入った展開の復讐譚だそうです。なじみのない言葉や事柄には脚注が多用され、多分ディケンズやウィルキー・コリンズを読むような印象なんでしょうね。

50才半ばだという作者のマイクル・コックスは、小説家としてはこれがデビュー作ですが、イギリスの文学史上最高額の50万ポンド(1億円超えてますね^^;)というアドバンスを手にしたとのこと。というのがこの人、怪奇小説のアンソロジイやM・R・ジェイムズの伝記などで知られた、ヴィクトリア朝の権威だそうです(無知なわたしは知らなかったりして^^;)。

作者がこの小説を書き上げた理由というのがちょっとシリアスで、ガンによる失明の危機にさらされて、30年間温めてきた構想を、目が見えなくなる前になんとしてでも作品としてまとめ上げたいという執念で完成させたものだとか。

ディケンズやコリンズを髣髴とさせる、話題の大作歴史ミステリと強調しておけば、うちのブログでも若干2名の人が放って置きそうにありませんね^^) 感想を期待しておきましょう。

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Monday, September 18, 2006

The Eye of Argon, by Jim Theis

The Eye of Argonなんと~、ごく有名な作品ながら、いままでオリジナルが行方不明で、コピーのみがファンの間で流通していたという伝説のファンタジイが、とうとう出版されるそうです。オリジナルが掲載された1970年のファンジンが昨年発見されて(ジャック・ウィリアムスンが大学に寄贈した資料の中から現れたとか)、結末もきちんと復元されたようですね。

で、この作品、有名は有名なんですけど、じつは史上最悪のファンタジイとして有名なんです。当時16才の作者が書いた文章というのが、意図したとしてもここまで不適当な単語が並べられるだろうかという代物で、本人がマジなだけにその迫力たるやもう……ダン・ブラウンの文章なんか比べ物にならないくらい凄いんです。

SFのコンヴェンションでは、しばしばこの作品の朗読のコンテストが行われ、書かれている通りに、しかも途中で吹き出さずにどこまで読めるか競うのがはやったそうです。正式ルールでは、1ページきちんと読めた人はプロの朗読者かトレーニングをしてきたものと見做され、そこでアウトなんだとか。

じつはこの作品、ウェブ上でもコピーが公開されてるんですが、ファンタジイ読みたるもの、やはり1冊は持っておきたいですね。ともかく、ブルックスやエディングス、ジョーダンやグッドカインドがどうしょうもないゴミだと思っている方は、この作品を読んで認識を改めましょう^^)

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Sunday, September 17, 2006

"Postcard From Vienna" By Dave McKean

Postcard_from_vienna_1 アマゾンでは扱っていないのですが、デイヴ・マッキーンのモノクロスケッチ集が今月出たようです。タイトル通り、2005年12月30日から今年1月にかけてのウィーン滞在中に描かれたもので、エゴン・シーレ、ルイーズ・ブルジョワ、エルンスト・バルラハなど、ウィーン出身のアーティストたちの芸術に感化されたものだそうです。ウィーン好きの、そしてシーレの大ファンの私にとっては、とっても嬉しい企画ですね。

そう、マッキーンのイラストを見ていると、ときどき「おぉ、シーレ!」と思うのがありますよね。

今回は白黒だから名前が出ていませんが、マッキーンのカラー作品で、赤や青や緑が強烈な印象を与える色遣いなどは、これまたウィーン人のルドルフ・ハウスナーとか、フンデルトヴァッサーとかの影響が入ってる気がするのは私だけでしょうか。

あと、このスケッチ集には、ジョナサン・キャロルからの昔の絵はがきも2枚ついてるみたいです。

Bud Plant で買えば、マッキーンのサイン付きですよ~。>ファンのみなさま

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Saturday, September 16, 2006

Don't You Want To Show Up in Ambergris?

クラリオン・ワークショップが資金集めのためにオークションを開いています。たしかスポンサーがなくなってしまって有志で頑張ってるんですよね。

Jeff VanderMeerほとんどは作家から寄贈されたサイン本なんですが、中にはジェフ・ヴァンダーミアのアンバーグリスものの短編に名前が登場する権利とか、ジェイムズ・パトリック・ケリーのボートに乗る権利、ハワード・ウォルドロップがピーター・ローレの物まねをしたテレホン・メッセージなんていうヘンテコなものもあるみたいですね。eBay のサーチで "Clarion Auction" で検索すると、オークション中のものが見つかります。

う~ん、ケリー・リンクの短編に登場する権利はまだリストされてないみたいですけど、いったいいくらぐらいになるんでしょう。アンバーグリスですでに100ドルを超えてるので、まあちょっと手が届きそうにありませんが(半分マジに考えてたりして^^;)。

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2006 Man Booker Prize Shortlist

The Night Watchということで、Black Swan Green のいないショートリストですね。

サラ・ウォーターズ以外買ってもいませんでした。まあウォーターズはほとんど悪い評判を聞きませんので、今年はこれで決まりでしょうか。受賞作の発表は 10/10 とのこと。

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Friday, September 15, 2006

Amazing Leonardo da Vinci Inventions You Can Build Yourself

Amazing Leonardo da Vinci Inventions You Can Build Yourselfそれじゃあわたしはもう少しお手軽価格のものを。

ダ・ヴィンチのスケッチと解説に、手近なもので工作をするための図解が付いてるみたいです。いやまあ水路とか戦車とか潜水服なんて特に作りたくもないですけど、螺旋コプターは欲しいかも。Amazing Leonardo da Vinci Inventions You Can Build Yourself

なにやらこのシリーズ、他にも Amazing Maya Inventions You Can Build Yourself とか Great Ancient Egypt Projects You Can Build Yourself など、いろいろあるみたいですね。ひょっとして時々ヘンなモンが置いてあるあの京都の洋書専門店なら売ってるでしょうか。

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Thursday, September 14, 2006

"The Museum of Lost Wonder: A Graphic Guide to Reawakening the Human Imagination" by Jeff Hoke

The Museum of Lost Wonder1600年代の cabinet of curiosities のイメージで、錬金術師が科学者だった時代に戻ろうという趣向の、作者による怪しいイラスト満載の本のようです。出版元の説明によると、グラフィックノヴェル+量子物理学+神話の世界+霊魂だそうな。これは気になります。

本は、錬金術の7工程を象徴する7つのホールから成り立っているというから、徹底していますね。オマケについている "Do-It-Yourself Model of the Universe" などの7つの紙の模型を自分で作って遊べるというのもそそります。

詳細はオフィシャル・サイトで。

ジェフ・ホウクは、博物館や水族館のデザイナーをしている人だそうです。そのうち、実物を作っちゃったりして。

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Wednesday, September 13, 2006

World War Z, by Max Brooks

World War Z世界は10年前にゾンビーに占領されていたなんて知ってました?

この本はその危機を生き延びた人々が語った体験談を集めたものだそうです。時系列に並べられた様々な人物のインタヴュウや手記は、中国で発生したゾンビーが密かに世界各地へと伝播し、人類を滅亡の瀬戸際まで追い詰めた状況と、いかにして人々がそれを鎮圧したかを生々しく伝えているとのこと。

作者のマックス・ブルックスは、実用書の The Zombie Survival Guide も手掛けた人で、あの映画監督のメル・ブルックスの息子とのこと。ううむ、『フランケンシュタインの作り方』じゃないところがちょっと不思議ですけど、妙に納得ですね^^)

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Tuesday, September 12, 2006

Black Swan Green, by David Mitchell

Black Swan Greenデイヴィッド・ミッチェルは最初に手にした Cloud Atlas がむちゃくちゃ気に入って、発表順の逆に読んで行ったんですが、number9dream はいまひとつかなと思っていたところが、デビュウ作の Ghostwritten でぶっとんで、お気に入りの作家のひとりになってます。

とはいえ今年の Black Swan Green は半自叙伝的な少年時代ものということで、あまり触手が伸びず……、じゃなくって、食指が動かず躊躇してたんですが、ブラッドベリの『たんぽぽのお酒』とかマキャモンの『少年時代』のように、幻想が忍び寄るような作品の可能性もあるじゃないかと思い直し、手を出してみることにしました。実際は幻想的なところはほとんどなく、あからさまなギミックを廃したストレートな少年期もので、けっして悪くはないんですけどね、わたしがミッチェルに期待するような作品ではありませんでした。まあ作者が意図していないところをあげつらってケチをつけるなと書いたばかりですが、いまひとつインパクトに欠ける作品です。

1983年の1月から翌年の1月まで、イギリス中部の田舎町ブラック・スワン・グリーンを舞台に、13才の少年の13ヶ月を13のエピソードで綴ったという、短編を積み重ねたような構成は作者のいつものパターン。ただ、今回はミッチェルのものとしては珍しく、主人公のジェイスン・テイラーは素直に感情移入できる引っ込み思案な少年という設定で、物語はジェイスンの日常を離れることはない。大手スーパー・チェーンのやり手のマネージャの父親と、趣味で始めたアート・ギャラリーが軌道に乗り始めた母親、大学進学が決まった皮肉屋の姉という家族の元で、一見何不自由のない生活を送っている。

ところがこのジェイスン、町の少年たちの間ではペッキング・オーダーの下から数えたほうが早い位置に甘んじていて、いつ苛められっ子になってもおかしくないような不安定な存在。なぜかといえば、ジェイスンが少々どもるからだった。「ハングマン」と名づけた悪意に満ちた存在が、油断をしている隙を狙って、n や s といった子音のスムーズな発音を妨げるのである。

さらに悪いことに、ジェイスンは本好きだった。ナヨナヨしているというだけでゲイとみなされ迫害を受ける子供社会において、本好きというのは致命的な欠点だった。その上、ジェイスンは誰にもいえない秘密を抱えていた。エリオット・ボリヴァーのという名前で、教区のパンフレットにこっそりと詩を投稿していたのである。詩を書いているなんていうことがばれたら、仲間たちから袋叩きにされるのは確実だった。

そして、ジェイスンに恐怖の時が訪れる。よりにもよって、隣町で母親と映画館に入るところを、少年のひとりに見つかってしまったのである……。

ということで、コンプレックスを抱えた多感な少年が、自然や町の人々とのやりとり、学校生活を背景に、いじめへの恐怖や男勝りの少女への憧れ、父親への幻滅と両親の不和を経験していく、ごく等身大の日常が全体の大部分を占めた作品。とはいえ、ノスタルジイにおもねるというよりは、ジェイスンの目を通して、遠景となるサッチャー政権下の影の部分である不況や、弱者に冷たい社会、フォークランド戦争、消費主義の台頭といった社会の変化を巧みに照らし出し、ある時代の記録を意識した作りにもなっている。

ただしまあ、ジェイスンもひ弱なばかりの少年というわけではなく、好奇心の赴くままに危うい行動をして、傍から見ればユーモラスとしか思えない状況に自ら陥るといった具合で、本人にしてみればシリアスな出来事が、読者の目にはファースとして映り、逆になんでもない描写にはっとさせられる二重性はなかなかなもの。

そして、どもりの原因となる単語を避けるために、常に別の言葉を探るジェイスンは、必然的に言葉と表現に敏感になる。マダム・クロムリンクという奇妙な老婦人にエリオット・ボリヴァーであることを看破されたジェイスンは、「クラウド・アトラス6重奏曲」の鳴り響く婦人の居間で、今まで自分の書いていた詩が飾りだらけの真似事に過ぎなかったことを思い知らされる(そうそう、Cloud Atlas に登場した老作曲家の娘が、こんなところに顔を出してるんですね。ほかにもジョン・レノンの number9dream が思いもかけないところで登場したりと、このあたりはミッチェルのファンならではの楽しみです)。

そう、主人公の作家としての成長の物語が、この作品のテーマのひとつとなっているのだ。ただし、13才という年齢設定に合わせた扱いのため、この部分はかなりベーシックで、いまひとつ中途半端という感じは否めない。それよりは、作品全体が1982年当時のイギリス中部の田舎の少年たちの間で使われた言葉で彩られていることのほうが、言葉というモチーフに直結しているだろうか。何かといえば "ace" や "epic" を連発するジェイスンのモノローグは、なかなか生きのいい語りの空間を作り出している。

さらに、意図的にばら撒かれた当時のテレビ番組や映画、ゲームやファッション、若者たちのアイドルに菓子類といったポップ・カルチャーへの言及が、ジェイスンの日常にアクセントを与えている。とくにポピュラー・ソングの扱いは徹底していて、80年代初頭の「ブリティッシュ・インヴェイジョン」という言葉に聞き覚えのある人であれば、曲のタイトルだけでメロディが頭の中で鳴り響くというなんともうれしい構成となっている(ほとんどの曲がすぐさま思い浮かぶので、自分でもびっくりしました。ひとつひとつの曲に明確な個性があった時代、そしてみんなが同じ曲を聴いていた時代だったんですね)。

さて、お目当ての幻想に彩られた場面はあったかといえば、冒頭に置かれた、凍った湖で足をくじいた少年が、見知らぬ老婆に湿布してもらうエピソードは、グリム童話の森を舞台にしたかのような恐怖譚のおもむきで期待させるし、ところどころにジェイスンのキャラクターから滲み出す詩的なシーンや、小説上の仕掛けから導き出される意外性が顔を出すものの、基本的には普通の思春期の少年の等身大の日常を描いた小説という枠から大きく踏み出すことはない。

この、「普通の思春期の少年」の「等身大の日常」を描いた「小説」ということが、よくも悪くもこの作品の枠となっているように思える。ポジティヴな側面としては、現実に徹することで、大仰な仕掛けに頼ることなく、登場人物の日常に寄り添って、丁寧に扱ったささいなディテールから人と社会、時代を再構築していることが見受けられ、これはいわばミッチェルが今まで批判されてきた人物造型の弱さや日常性の不在に焦点を当てた結果であり、その意味では成功しているといえる。

しかしながら、「普通の思春期の少年」というのは、少女も同様だが、それ自体はけっしてスリリングな存在ではない。「等身大の日常」は、逆に捉えれば、大きな飛躍はできないということだ。「小説」であるということは、いかにうまく書かれていようと、現実の迫真性を放棄したということである。現実的な少年の視点に縛られたことで、結果として人や社会、時代を描く筆も制限を受け、作者が重要視していると思われる「若き作家の肖像」の部分も、いまひとつ竜頭蛇尾の感が否めない。

作者の実体験だという「どもり」を切り口としたわけだが、これもいささか手法としては弱いといわざるを得ない。例えば、同様の視点で成功したマーク・ハッドンの『夜中に犬に起こった奇妙な事件』や、ジョナサン・レセムの『マザーレス・ブルックリン』は、普通ではない主人公を設定することで、見慣れた日常にスリルを持ち込んだ。DBC・ピエールの Vernon God Little は、主人公のハイパーアクティヴともいえる大仰な語りでスラップスティックを通した社会風刺を実現している。あるいは、ミッチェルがこの作品を半自伝的な小説ではなく、メモワールとして書いたのであれば、作者の実像がもっと真摯に伝わってくるものとなったかもしれない。さらにいえば、『たんぽぽのお酒』や『少年時代』、あるいはグレアム・ジョイスの Tooth Fairy や The Facts of Life のように、現実を補強する幻想を梃子にすれば、よりダイナミックな作品作りができたのではないだろうか。

ベストセラーや長く読み継がれる作品には、欠点があったとしても何らかのオーラやカリスマが宿っていると思っているが、どうもミッチェルの Black Swan Green には、これといった欠点はないものの、そのカリスマが感じられない。残念ながら上述の作品と並べられるほどの傑作とはいえないようだ。

とまあ、どうも後半は勝手な期待による文句ばかり並べてしまいましたが、作品としてはけっしてつまらないものではなく、十分楽しめるし、読む価値はあります。ただまあこれがブッカー賞の最有力候補とはとても思えないですね。逆に、ミッチェルのファンとしては、この作品で受賞して欲しくはないです。ショートリストの発表がもうすぐですが、番狂わせで選から漏れてもわたしは驚きませんぞ(いやまあこっそりとがっかりはしますけど)。

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Monday, September 11, 2006

2006 Guardian Children's Fiction Prize Shortlist

ガーディアン賞のショートリストが 9/9 に発表されました。A Darkling PlainBlown Away

しばらく児童書から遠ざかっている間に、なんか流れはファンタジイ中心からSF・冒険ものに変わりつつあるようですね。今回は2冊がSFで、フランク・コットレル・ボイスの Framed はミステリ・タッチでしょうか。フランセス・ハーディンジの Fly By Night はファンタジイではあるんですけど、いや、これはかなりの曲者で、並みのファンタジイと片付けていい作品じゃなさそうですよ(ちょっと読みかけのまま眠ってます^^;)。

FramedFly By Nightふむむ、最近は児童書はほとんど買ってないといいながら、4冊ともサイン本を持ってるのは何故でしょう^^; 受賞作は 9/28 発表とのこと。個人的な勘では、ずば抜けてヘンということでハーディンジですかね(自慢じゃないですがわたしの勘はよく外れるので、あまり信用なさらないように)。

ちなみにフィリップ・リーヴの A Darkling Plain は4部作の完結編で、第1巻の Mortal Engines の邦訳が『移動都市』のタイトルで今月出版されます。あ、昔書いたレヴュウがありました。

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Sunday, September 10, 2006

Leonardo, the Terrible Monster, by Mo Willems

Leonardo, the Terrible Monster怖がってもらえないのはオオカミだけじゃないみたいですよ。

去年出た絵本なんですが、こちらでは誰も怖がってくれないモンスターが、弱虫の少年を見つけておどかしてやろうとするのですが、首尾よく泣き出したと思ったら、あれやこれやとひどい目にあってる少年なんですよね。同情したレオナルドは少年をなぐさめる羽目に……。

かわいいモンスターと優しい色調のシンプルな絵がなかなかいいんですよ。作者のモー・ウィレムズは、Don't Let the Pigeon Drive the Bus! のシリーズで有名な人ですね。おや、新刊の Edwina, the Dinosaur Who Didn't Know She Was Extinct もなにやら面白そう^^)

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"The Big Bad Wolf and Me" by Delphine Perret

The Big Bad Wolf and Me「うがぁ~~~!!!」
「……」

大きな口を開けて、今にも襲いかかりそうなオオカミに、怯えるどころか、なにやら思案顔の坊や。あれ? 赤頭巾とか3匹の子豚とか、オオカミって童話の世界では一番恐ろしい動物のはずなのに、この無反応はなに?

と、かなり気になる表紙ですが、実はこのオオカミ、最近だれも怖がってくれない~と自信喪失に陥っていて、不憫に思ったこの坊やが、コワイオオカミになれるよう特訓してくれるというお話の絵本だそうです。

シンプルな線描と、なんとなく懐かしいカンジの色合いがなかなかいいですね。文と絵のデルフィーヌ・ペレは、ストラスブールの美術学校出身で、フランス語では3冊くらい絵本を出しているようです。

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Saturday, September 09, 2006

Banksy Punked Paris Hilton

Parisちょっと趣向を変えてセレブの話題などいかがでしょう^^)

以前作品集を紹介したイギリスのグラフィティ・アーティストの Banksy ですが、こんどはパリス・ヒルトンをターゲットにして話題になっています。なんでもイギリス各地のレコード・ショップで、パリスのデビュウCDを、バンクシイお手製のカバーをつけたリミックスにすりかえたとのこと。500枚といえばそうとう手間がかかったでしょうね。

で、その中身はといえば、こちらで改竄された内容が見られます。すりかえの様子はこちらで。

だれも返品した人はいないということですが、eBay あたりでかなりの高値になっていそうですね。Banksy の「作品」だったらわたしも欲しいかも^^)

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John Updike's Rules for Reviewing

ジョン・アップダイクの31年前の評論集 Picked Up Pieces の前書きに書かれたものということですが、こちらでレヴュウの心得6項目が紹介されてます。

とくに最初の項目、

1. Try to understand what the author wished to do, and do not blame him for not achieving what he did not attempt.
(作者がなにをしようとしているのか理解するように務め、作者が試みていないことが達成されていないからといって非難しないこと。)

これはついついやってしまいますよね。どうしても自分に引きつけて、自分の思い込みで読み進めて、結局は「自分が」面白かったかどうかだけで評価をしておしまいというのが素人のレヴュウじゃないでしょうか。

時には作品について語るんでなく、作品を自分のことを語る踏み台にしてしまうという、レヴュウ以前のものもありますし。いやまあ自分がいかに理解できていないか、どれだけバカなのかを披露するのがレヴュウなんだという開き直りもできないことはないですけど^^;

ということで、もうひとつあげておきましょう。

5. If the book is judged deficient, cite a successful example along the same lines, from the author's ouevre or elsewhere. Try to understand the failure. Sure it's his and not yours?
(失敗作だと結論付けるなら、著者の作品などから同様のケースで成功している例を参照として上げること。失敗を理解するように務めること。力不足なのは、あなたではなく、ほんとに作者のほうなのか?)

そして、批判するよりは賞賛を共有すること、レヴュウというのは読むことの喜びを分かち合うことが前提になっていることを忘れないようにと結んでいます。

本人が作家なので、かなり作家寄りの立場という感じもありますが、大事なことですので常に意識しておきたいですね。自戒をこめて。

まあわたしの場合は、こちらの読書感想文の書き方のほうがレベル的にはぴったりですけど^^;

ちなみに、この Critical Mass というおしゃれなダブル・ミーニングのタイトルのサイトは、全米批評家協会の執行部によって運営されているそうで、プロのレヴュアによる最新のレヴュウ関係のニュースが満載です。

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Friday, September 08, 2006

"The Wave Theory of Angels" by Alison MacLeod

The Wave Theory of Angels13世紀フランス、宗教的異端者の彫刻家ギル(Giles)の娘クリスティーナと、21世紀シカゴ、異端の量子物理学者ジャイルズ(Giles)の娘クリスティーナのパートが平行して語られる、ちょっと哲学的な、そしてメインストリームの人も楽しめるファンタジーだそうです。

このふたりともが昏睡状態に陥り、前者は聖ピエール教会の倒壊とともに目覚め、後者は9.11のツイン・タワーの倒壊の前に目覚めたというから、この時と場所を隔てたふたりのクリスティーナにはなにか繋がりがありそうです。お父さんが量子物理学者というところがポイントでしょうか。時を越えて両者の間を行き来する、エンジェルという名の青年が出てくるというのもおもしろそう。

あの惨事からもうすぐ5年になりますが、この物語はただのファンタジーではなく、9.11後に私たちが示した反応の根拠を、歴史の中に求めようと試みた作品でもあるようです。

ハードカバーは昨年出版されています。

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Wednesday, September 06, 2006

Great Minds Think Alike

ワシントン・ポストのレヴュウなんですが、うれしくなってしまうようなレヴュアと作品の組み合わせが2つもありました。

ひとつはこのブログのお気に入りのジェイムズ・モロウが、ティム・パワーズの新作の Three Days to Never を紹介したもので、なんかレヴュウというより賞賛ですね。読むとかえってどんな作品だか分からなくなってしまいそうな、ごくごく楽しい気軽なエッセイになってます。このレヴュウだけでも読む価値ありますよ。

Three Days to Never

"Three Days to Never is a beguiling genre omelet, a mélange of forms ranging from alternate history to science fiction, urban fantasy to occult cliffhanger, espionage adventure to Ross Macdonald-style Southern California hardboiled detective thriller."

"At first blush, Three Days to Never looks like the sort of fast-paced confection that reviewers routinely compare to roller-coaster rides, but Powers's novel is more like a ride on a roller coaster affixed to a centrifuge plummeting from the top of Mt. Shasta."

もうひとつはロス・キングがリチャード・グラントの Another Green World をレヴュウしたものですが、こちらはさすが、作者の意図をしっかりと汲み取ってる印象ですね。いくつかレヴュウを読んでピンとこなかったのが、やっとどんな作品なのか分かったような気がします。Another Green World

"In a war novel that bristles with ideas and allusions, Grant uses this grim landscape to explore the power of myth and the 'folklore of atrocity.'"

"It's fitting that Grant, one of fantasy literature's most eloquent and erudite practitioners, should tackle the role played by mythmaking in politics and war."

ロス・キングがリチャード・グラントの過去のファンタジイを読んで賞賛してるなんて、すごく意外なんですが、作家が好む作品っていうのは、やっぱり力作が多いんですよ。

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Tuesday, September 05, 2006

The Thirteenth Tale, by Diane Setterfield

The Thirteenth Tale伝記作家にまつわる胡散臭い話題がありましたけど、こちらは伝記作家が巻き込まれる怪しい話のようで、かなり話題になってるみたいです。

ずっと作り話で自分の過去を隠してきた女性作家が、死期を間近に控え、本当のことを話すという名目で伝記作家を屋敷に招き入れます。ところが、話を作ることにかけてはお手のものの作家のこと、どうも俄かには信じられないような身の上話が滔々と語られて、伝記作家は真相を探ろうと調査を始めるのですが……。どうも伝記作家の側にも秘密があるみたいですね。

当てにならない語り手の傍証を得ようとする伝記作家の物語というと、こういうのはポストモダンなゴシックっていうんでしょうか(笑)。タイトルにある13番目の話っていうのがどういうものなのか気になります。

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Monday, September 04, 2006

Mommy?, by Maurice Sendak, Arthur Yorinks, Matthew Reinhart

Mommy?なんかもうこれは買うっきゃない絵本が出てしまいました! あのモーリス・センダックが、アーサー・ヨリンクスマシュー・ラインハートと組んで、なんとポップアップ絵本ですよ。

お化け屋敷に入り込んだ男の子が母親を探して歩くんですが、"mommy?" と呼びかける相手はおなじみのホラー映画の登場人物ばかり。ところがこの男の子、マックス同様負けてはいないみたいですね。Mommy?

最初から最後まで、出てくる言葉は "mommy" だけだそうでが、果たして少年は無事に mommy を見つけることができるんでしょうか。まあなんとなくオチは想像できそうですけど^^)

クリスマス用に、早めに何冊か仕入れておいたほうがよさそうですね。いえまあわたしは自分用に買うんですけど^^;

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Sovereign, by C.J. Sansom

Sovereign2作目もまだ読んでないんですが、もう3作目が出てしまいましたね。相容れない上司や、これはこれで危なっかしい手下を抱えて、意に染まない役目を押し付けられて、犯罪者のほうに同情してしまうという困った主人公、マシュウ・シャードレイクですが、今回はさらに傑作との評判が高く、もう歴史ミステリの代表的なシリーズのひとつとなったといっていいんじゃないでしょうか。年1冊のペースを保ちながら(それどころかスペインを舞台にしたシリーズ外の作品まで出していて)、レベルが落ちないどころか上がっていくというのは凄いですね。

なんか元上司のトマス・クロムウェルは処刑され、シャードレイクの立場はさらに悪くなってるみたいですね。ヘンリー8世の仰せで、反逆者をロンドン塔まで護送する羽目になったシャードレイクと手下のバラクは、例によってまたどちらが悪なんだかわからない陰謀に巻き込まれ、すさんだ世界でなんとか人間性と正義を守り抜こうと苦悩するんでしょうね。いやもうこの奥ゆかしい主人公は一度出会ったら絶対ファンになりますよ……っていうくらいだったら早く読めばいいんですけど^^;

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Sunday, September 03, 2006

"Going Under" by Kathe Koja

Going UnderGoing Under のタイトルと柘榴の実の絵となれば、ギリシャ神話の冥界の女王ペルセフォネを暗示していること間違いなしですね。

というわけで、デビュー作『虚ろな穴』が1992年にローカス賞とブラム・ストーカー賞の新人賞を取ったほか、最近では児童書でもいくつかの賞にノミメートされているキャシー・コージャの新作は、ペルセフォネとナルキッソスの神話を思わせるYA作品だそうです。

家で親から教育を受け、二人だけの世界を作っていたアイヴァンとヒリーの兄妹ですが、その殻を破ってヒリーが地元の高校で文学誌の制作を手伝い始めてからは、二人の距離はどんどん離れていくばかり。文学誌作りで知り合った友人の自殺にショックを受けたヒリーが鬱に陥いり精神科医にかかるようになると、ヒリーに裏切られたと感じていたアイヴァンはなにやら策をめぐらし始めるようです。姉弟の特殊な愛の形を扱った作品みたいで、ちょっとおもしろそうです。ヒリーがペルセフォネでアイヴァンがナルキッソスかもの予感ですが、神話をどのようにアレンジしているのかも気になります。

コージャは大人向けホラーでデビューしたものの、最近YA作品が多いですが、自分のサイトでも Young Adult Author と名乗っているところをみると、YAに転向したようですね。

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Unca Harlan Groped Auntie Connie

ヒューゴー賞のセレモニーで、エリスンじいちゃんがウィリスおばちゃんの胸をつかんだというのが、今年のワールドコンの最大の話題みたいですが、エリスンじいちゃんのボードではまだ熱が冷めやらぬ様子ですね^^; とてもじゃないですが全部読む気にもなれないので、ダトロウおばちゃんのコメントを。

I was offline for a day or two after the con and then when I got back I discovered this whole brouhaha over Harlan's baby schtick -and that's what it was. A schtick of Harlan acting like a baby. Thus, he went up to the mike when Connie called him up--he put the mike (a round one) into his mouth, swallowing it like a lollipop, Connie took it gently out of his mouth and wiped it off. He gurgled --like a baby-- and then grabbed her breast like a baby and she smacked his hand off. A few seconds later she kissed him....Cmon people. Please put this into perspective. It was NOT sexual assault. It was a joke/schtick gone a bit over the top. I was not offended as a woman watching this. I thought it was silly (but yes, I admit I personally thoughth the schtick funny). I also know that Connie and Harlan have a history of ribbing each other. I've seen it in the past. So please keep the incident in context and calm down.

ううむ、ムアコックじいさんまでコメントしてる^^;

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Betjeman Rolls in His Grave ... with Giggles

イギリスっていうのはなんか面白い国ですね。つい先日は判事が判決文の中に暗号を隠していたのが話題になりましたが、こんどは伝記のなかのラブレターだそうですよ。それも伝記の作者はまったく気づいておらず、あるジャーナリストに指摘されて始めて嵌められたことを知ったというなんとも傑作……いや、かわいそうなお話。

Betjemanで、話題になってるのがこの A.N. Wilson という有名な伝記作家・文化史家の手による桂冠詩人ジョン・ベッジェマンの伝記なんですが(じつは、ウィルスンの名前は知っててもベッジェマンなんて初めて聞く名前だったりして^^;)、ここに収められたベッジェマンが愛人に宛てた手紙というのがじつは真っ赤な偽物だったとのこと。

2年前に知り合いを通じてこの手紙を入手したウィルスンは、ベッジェマンの人となりを表すものとして収録したんですが、事件の発覚後手紙の提供者だというフランス人イヴ・ド・アルバン(Eve de Harben)にコンタクトしようとしたところ、問い合わせの手紙は該当人なしで戻ってきたそうです。

でまあ件の手紙の中身なんですけど、たしかに普通に読んだら普通の手紙ですね。

Darling Honor,

I loved yesterday. All day, I've thought of nothing else. No other love I've had means so much. Was it just an aberration on your part, or will you meet me at Mrs Holmes's again - say on Saturday? I won't be able to sleep until I have your answer.

Love has given me a miss for so long, and now this miracle has happened. Sex is a part of it, of course, but I have a Romaunt of the Rose feeling about it too. On Saturday we could have lunch at Fortt's, then go back to Mrs H's. Never mind if you can't make it then. I am free on Sunday too or Sunday week. Signal me tomorrow as to whether and when you can come.

Anthony Powell has written to me, and mentions you admiringly. Some of his comments about the Army are v funny. He's somebody I'd like to know better when the war is over. I find his letters funnier than his books. Tinkerty-tonk, my darling. I pray I'll hear from you tomorrow. If I don't I'll visit your office in a fake beard.

All love, JB

ところが、各文の初めの文字を拾ってつなげると……(笑)。そのうえ、Eve de Harben というのは、"Ever been had?"(引っ掛けられたことはある?)のアナグラムになっているという凝りよう。

John Betjeman: The Biographyこの手の込んだ笑い話……じゃない、詐欺の犯人はまだ分かってないそうですが、自分が書いた伝記をウィルスンにこき下ろされたことがあるベッジェマンの公式伝記作家ビーヴィス・ヒリヤー(Bevis Hillier)の仕業じゃないかというのがもっぱらの噂。本人は否定しているそうですが、フランスから発信されたはずの手紙に、ヒリヤーの住んでいるウィンチェスターの消印があったということで、ううむ、疑うなというほうが無理かも^^)

伝記という、事実が重要な役目を担う分野を舞台に、なんとも愉快な……いや、不謹慎な出来事ですが、思わぬ宣伝効果で2人ともかなり得したんじゃないですかね^^) 気の毒なのは今年生誕100年を迎えたベッジェマンですけど、1984年に亡くなったそうなんで、ま、今頃はたぶん腹を抱えて笑っているんじゃないでしょうか。

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Saturday, September 02, 2006

The Medici Giraffe, by Marina Belozerskaya

The Medici Giraffeなんか最近キリンの本が目に付きませんか? 気のせいかな……。いやでも、このブログでも3~4冊にふれたような記憶がありますけど。まあなんにせよあの無駄に長い首は気になりますよね。

メディチ家のキリンなんていう魅力的なタイトルに、カバーもかわいいのでチェックしてみたところ、紀元前300年のアレキサンドリアから始まって、歴史の各場面で珍しい動物がいかに政治的な道具として使われてきたかを綴ったノンフィクションだそうです。ローマ時代のコロシアム、ルドルフ2世やナポレオン時代の動物園、現代ではニクソンが毛沢東から贈られたパンダの話とか、なかなか視点として面白そうです。新聞王のハーストも、自宅を動物園みたいにしちゃってたんですね。

作者の本職は美術史家だということなんですが、珍獣っていうのはやっぱり美術品なんでしょうか^^)

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Friday, September 01, 2006

The Interpretation of Murder, by Jed Rubenfeld

The Interpretation of Murderユングなんかをお供に連れてアメリカを講演旅行中のフロイトが、殺人事件に巻き込まれて、記憶喪失になった生存者から犯人の手がかりを引き出そうというミステリだそうです。まあ主人公は弟子の精神科医で、フロイトはアドバイザー的な役割のようですが、その掛け合いのところでフロイトの思考や手法を真面目に提示しているようです。

20世紀初頭のニューヨークという時代背景もしっかり描かれていて、ノンフィクション的な側面も持ちながら、ミステリとしてもよく考えられているそうですけど、その分複雑なプロットになっているという評も見かけました。作者はイェール大の法学の教授ということで、評判どおりストーリイのほうも面白いのであればかなり期待できるかも。

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