« "The Adventuress" by Audrey Niffenegger | Main | "Best New Horror", by Joe Hill »

Monday, August 07, 2006

"CommComm", by George Saunders

ジョージ・ソーンダース(ソーンダーズが正しいと思いますが)の World Fantasy Award の候補になっている短編 "CommComm" がニューヨーカーにありましたので読んでみました。

ビーバーの生息地にある軍の施設で、危険区域にビーバーが入り込まないように除去するはずの職員が、大量にビーバーを毒殺してしまう。主人公は地域住民の感情をなだめる役目の軍の広報官。あくまで環境を保護するために除去が必要であること、またビーバーのためには別に繁殖地を準備している旨を当たり障りなく説明した声明で、なんとか騒ぎをくい止める。

この「生かすために殺す」というモチーフを冒頭に据え、ストーリーはそれぞれに家庭の悲劇を抱えた広報部員たちを追う。寝たきりになった妻を看病する口うるさい上司、何かにつけ神の助けを口にする同僚。主人公はといえば、家に帰れば撃ち殺された両親の幽霊が待っているのだった。

あるとき、オフィスが強烈な異臭に包まれる。上司の打ち明け話によれば、施設の敷地内で昔の遺骸が掘り出されたのだという。これが公になれば、ただでさえ煙たがられている施設が、遺跡保護の名目で移転を余儀なくされることは目に見えている。崩れかけた家庭と職場を守ろうと主人公に助けを求める上司のせいで、軋んでいた歯車の狂いがさらに増幅されていく……。

プロット自身はブラッドベリあたりでも書きそうな、いわばゴースト・ストーリーの一種なんですが、現実とは微妙にズレたちょいと先の未来を思わせるような皮肉な手触りがこの人の特徴なんでしょうか。テーマ的にもグロテスクな現実に直結してますし。結末で、「生かすために殺す」というモチーフをさらっと反転させる手際はたしかに納得できるんですが、どうもファンタジイとして読むには地に縛られ過ぎてる感じですね。ごく評判のいい作品のようですので、わたしの感覚がずれてるのだろうとは思いますけど。

In Persuasion Nationまあニューヨーカーの短編はスティーヴン・ミルハウザーケヴィン・ブロックマイヤーチャールズ・ダンブロージオのものなどいくつか拾い読みしてきたんですけど、なんか中年のホワイトカラーの都市生活者に焦点を絞っている印象が強いですね。実験的側面も弱いし。たしかにしっかりしたテーマはあるんですが、現実を意識させるものばかりで、少なくとも最近の作品は正直あんまり好みじゃないです。このあたりがニューヨーカーの特徴なんでしょうか。quark さんが解説/反論してくれるかな?

ちなみにこの作品、4月に出た第3短編集 In Persuasion Nation の巻末に置かれ、ソーンダースの代表作のひとつとなっているようです。前作はそのうち読もうと積んではあるんですが、どうもあんまり好みの作家じゃないような気がしてきました……などと書いたら、Gardener さんあたりからボロクソに叩かれたりして^^; まじに他の方の感想を訊きたいですね。

|

« "The Adventuress" by Audrey Niffenegger | Main | "Best New Horror", by Joe Hill »

Comments

へい。呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンでございます。

この短篇はまだ読んでおりませんので、何とも申せませんが、ソーンダースが「現実とは微妙にズレたちょいと先の未来を思わせるような皮肉な手触り」が特徴なのはおっしゃる通りですし、ニューヨーカーの作品が「中年のホワイトカラーの都市生活者に焦点を絞っている」ってのも、まあ昔から言われてることで反論の余地もございません。

私もインターネットが使えるようになった当時は、毎週ニューヨーカーの短篇を読むのを楽しみにしてたんですけど、いつの間にかやめちゃいましたね。

いらぬコメントをする前に、まずはこの短篇を読んでみます。

Posted by: quark | Monday, August 07, 2006 23:18

ええっと、わたしも『パストラリア』を読んだかぎりでは、いまひとつ、ぴんときませんでした(ついでに、ソウンダースという日本語表記にも)。というか、ほんとど忘却のかなた。
ちょうどいい機会なので、"CommComm" を読んでみようと思います。

Posted by: Gardener | Tuesday, August 08, 2006 09:52

あ、意外にも同志が二人(笑)

よく話題に上がるのでもう少し面白いのかと思ったら……っていう感じですね。

1編読んだだけでケチつけるのも失礼かと思い、他にもいくつか読んでみました。

"Adams"
"Bohemians"
"Sea Oak"

"Adams" はシンプルな反転ものですね。"Bohemians" は変人ばかり登場させておいて実は……というやつ。"Sea Oak" も同じパターンでしょうか。笑わせておいてしみじみのあとの2編はなかなかいいですけど、"Bohemians" は無駄に変人を投入している割には普通の話で、けっこう下手ですね^^)

どの作品も口調で勝負しておいて予想の範囲内に落とす感じでしょうか。そういう意味では "CommComm" の意外だけれど納得のいく結末は珍しいのかもしれません。

う~ん、やっぱりわたしにはリンクやヴクサヴィッチのほうが向いているみたいです(笑)

Posted by: a nanny mouse | Tuesday, August 08, 2006 20:34

ありゃりゃ、イマイチでした。

『パストラリア』を読んだ時は、結構気に入ったんですけどねぇ。死んだはずのおばあさんがずっと生きてる話とか。

Posted by: quark | Wednesday, August 09, 2006 20:05

それはラファティ、じゃない、quark さん、それ思いっきりネタバレ^^; 伏字に変えておいたほうがいいと思うんですけど(笑)

それは読んだうちのひとつなんですけど、筒井康隆あたりが書いてそうなやつですね。う~ん、やっぱり "CommComm" はいまひとつでしたか。

Posted by: a nanny mouse | Wednesday, August 09, 2006 22:30

急にいそがしくなって、まだ読めていません>“CommComm”。
岸本佐知子訳で“The Brief and Frightening Reign of Phil”が出るそうなのですが、そっちのほうが先にならないようにしたいところです。これ、おもしろそうなんですよね。

Posted by: Gardener | Wednesday, August 23, 2006 16:29

あ、こっちのほうが面白そうですね。そりゃまあディックに統治されたら国民は大変でしょう……って、別のフィルですか^^;

Posted by: a nanny mouse | Wednesday, August 23, 2006 22:36

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference "CommComm", by George Saunders:

« "The Adventuress" by Audrey Niffenegger | Main | "Best New Horror", by Joe Hill »