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Tuesday, August 08, 2006

"Best New Horror", by Joe Hill

Postscripts 3ジョウ・ヒルの短編集はスリップケース入りの豪華本を買ってしまったので大事に保管してるので(箱に詰めたまま行方不明ともいう)、たまたま出てきた Postscripts 3 に載っている World Fantasy Award の短編部門の候補作を読んでみました(PS Publishing にある目次はかなり現物と違ってて、ジョウ・ヒルの名前さえ出てきませんが、ちゃんと掲載されてます)。うむむ、これはファンタジイというよりはタイトルそのまんまの作品じゃないですか^^;

ホラーの新人作家の年刊ベスト・アンソロジイ Best New Horror を16年にわたって編んできた主人公、最近はマンネリ化してほとほと嫌気がさしている。ところが、年刊ベストの選考用に送られてきたある大学の学内誌に、荒削りながらホラーの真髄を体現したような新しい才能を発見する。じつは、その作品を掲載した編集者が、あまりの不道徳な内容にその職を追われたといういわく付きのものだった。

……大男に拉致された少女が放り込まれた車のバックシートには、両目を刳り抜かれ瞼をスマイリー・バッジで止められた少年が乗っていた。舌を切り取られながらも辛うじて逃れた少女は、十年の辛酸ののち、再び悲劇へと導かれる。そこには見えざる恐怖が現実の姿をとって現れたというある種の充足感があるのだった……

主人公は作者とコンタクトを取るべく方々を当たるが、奇矯な噂を耳にするばかりで一向に要領を得ない。だが、作者の故郷で開かれたホラーのコンヴェンションに出向いた主人公は、ついにその足取りをつかんで……。う~ん、あとは読んでのお楽しみですね。いやまあ、ご想像通りの結末ですけど(笑)

すっきりとした文章で、じわじわと恐怖を盛り上げていく描写もなかなかで、たしかに評判になるだけのことはありますね。メタフィクショナルな要素も強く、作中でホラーに惹かれる理由や、ホラーの書き方についてそれとなく解説しているあたりも説得力があります。バーカーやゲイマンやリンク、あるいは「たたり」や「キャリー」など、実際の作家や映画に言及してみたり、13歳の年に読んだ『ゲイルズバーグの春を愛す』でファンタジイに開眼したくだりなど、自伝的な要素も微笑ましく、ちゃっかりとワールド・ファンタジイコンの名前も出してたりとなかなかお茶目。きちんとしたホラーを書きながら、こうした細部に目配りが利いているところが評価を得ているんでしょうか。

ずば抜けた傑作というよりはよくまとまった佳品という印象ですが、たしかに期待したくなる作家ですね。でもやっぱり、ファンタジイ好きよりはホラー・ファン向けだと思いますけど。ちゃんと警告しましたから、読んで怖かったといってわたしに文句いわないでくださいね。

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Comments

げー、マジのホラーでしたか。もしかしてゴーストも? ひぇ~。

Posted by: Lilith | Wednesday, August 09, 2006 22:03

いやまあ鬼畜なのは作中で言及される "Buttonboy" っていう短編の中身なので、地の部分では押さえてあるんですよ。そうすることでの効果についても主人公の編集者の口を借りて説明しているんですが……なおさらたちが悪いといえますね^^)

Posted by: a nanny mouse | Wednesday, August 09, 2006 22:43

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