DeVotchKa
DeVotchKa に憑り付かれてしまい、手に入るものはすべて買ってしまいました。といっても、フル・アルバムが3枚に、今年出たEPとサウンドトラックだけなんですけど。
新譜のEP、Curse Your Little Heart は、オリジナルが2曲、カバーが3曲、トラディショナルが1曲という構成で、やっぱりちょっと短いですかね、フルに魅力を発揮とは行かず中途半端です。それでもスージー&ザ・バンシーズのカバーの "The Last Beat of My Heart" がむちゃくちゃいいので、これだけでも買う価値ありますね。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの "Venus and Furs" もアラブ風の音作りが聴きものです。
やっぱりでも、DeVotchKa 入門にはフル・アルバムのどれか1枚を聴いたほうがいいですね。とくにタイトル・トラックが印象的な How It Ends は涙なくして聴けない1枚です(<ちょっと大げさ)。いくつかの傾向の音が同居しているため、すべての曲が好みというほどではないんですが、いい曲はもうむちゃくちゃいいです。東欧風のジプシー音楽をベースに、マリアッチやタンゴ、時にはマカロニ・ウェスタンが顔を出すというなんとも奇妙な取り合わせの音は、ともかく聴いてみないとその魅力はわからないでしょう。わたしもこんな音が自分の好みだったなんて初めて気付かされました。
哀愁を帯びたヴァイオリンに、街角の楽隊を思わせるトランペットとアコーディオン、効果的に使われるピアノの音に、ミュージック・ソーならぬテルミンを使ってるんですね。甘く歌い上げるリード・ヴォーカルの抱えているギターがヘンテコな形をしていると思ったら、ギリシャのブズーキという弦楽器だそうです。紅一点のコントラバス奏者は、ときどき電飾に彩られたスーザフォンを体に巻きつけて舞台に登場するのだとか。ライヴが見てみたいバンドですね、ほんと。
まあ Gogol Bordello のような本格的なジプシー音楽よりはポップな聴きやすい音作りですので、より万人向けといえますね。一方で、今年話題の Beirut よりもしっかりと練られた演奏で、もう文句のつけようがないです。ほとんど知られてないというのがなんとも不思議。
とはいえ、封切られたばかりの Little Miss Sunshine という映画で DeVotchKa の音楽がメインにフィーチャーされてますので、今年は人気に火がつくことになるのかも。サウンドトラックには "How It Ends" を含む数曲とアレンジしたインストルメンタル版、この映画のために書き下ろされた新曲の "Til the End of Time" が入ってます。既存のものですが、スフィアン・スティーヴンズの2曲もなかなかチャーミングです。
物語のほうは、バラバラだった3世代家族が、娘の Little Miss Sunshine ページェント出場の夢をかなえるために道行を共にする中で、家族の絆を再発見していくロード・ムーヴィとのこと。ストーリイはありきたりの感じですが、トレイラーとか見るとすごく期待できそうですよ。黄色いフォルクスワーゲンのボックスカーも印象的ですし(これ欲しい!)。だいいち DeVotchKa の音楽が随所に顔を出すというだけで、なにか特別なものに変わっていそうな感じがします。けど、"How It Ends" はどういうふうに使われるんでしょうかね。 "You already know how this will end" っていう不吉なリフレインなんですよ^^;
ちなみに、DeVotchKa というバンド名は、アンソニイ・バージェスの『時計じかけのオレンジ』に登場する、少女を意味するロシア語をベースとした造語から取られたものとのこと。そのまま読むと「デヴォッチカ」になってしまいますが、ロシア語的に「デヴォーチカ」って発音するんでしょうね。"devote" とも掛けてあるんでしょうし。
- Official Site
- MySpace ("How It Ends" download)
- Little Miss Sunshine Official Site
- Little Miss Sunshine @ MySpace
- Trailer featuring "Til the End of Time" (official)
例によって Youtube では映画のトレイラーとか、"How It Ends" を使ったクリップとか(レズのカップルの悲恋ものです^^;)いろいろ見られます。あ、下のリンクは "Til the End of Time" をフィーチャーしたトレイラーですので、安心して見てください。
The comments to this entry are closed.
Comments
ふふふ、実は "How It Ends" やっと届いたので、今日通勤の帰りに聴いたのでした。なかなか好みでしたよ~。なんかあのインストゥルメンタルの曲とかすごくよかったです。
しかし、スージーのカバーもやってるなんて! これは聴きたい!! オリジナルの "The Last Beat of My Heart" が入ってる Siouxsie & The Banshees のアルバム "Peep Show" は、とってもアヤシくて(タイトルも怪しいけど)すっごいオススメなんですけど。
テルミン使ってるっていうのも泣けますね。全然関係ないけど、「テルミン」ていう映画に、トッド・ラングレンがちょこっと出てくるんですよ~。
Posted by: Lilith | Monday, July 31, 2006 22:07
> 「テルミン」ていう映画に、トッド・ラングレンがちょこっと出てくるんですよ~。
う、すごいトリヴィア^^;
いやでも、やみつきになる音ですよ。映画もちょっと期待してしまうな。いえ、テルミンじゃなくて Little Miss Sunshine のほうです。
Posted by: a nanny mouse | Monday, July 31, 2006 22:17
インストゥルメンタルの曲って、メリー・ゴー・ラウンドに乗ってるみたいな真夜中のシャルロットのほうですか、それともジプシーだか中近東だかわからない読めないタイトルのほうですか? ううむ、Lilith さんのことだから後のほうの曲のことでしょうけど^^;
Posted by: a nanny mouse | Monday, July 31, 2006 22:24
残念でした。シャルロットのほうでした~。ああいうアコーディオンには弱いです。もうひとつのほうは……覚えていないです。
あと、"Twenty-six Temptations" とか、アレとか(iPod で聴いたので、タイトルをチェックしてない)もよかったです。
Posted by: Lilith | Tuesday, August 01, 2006 22:34
「リトル・ミス・サンシャイン」、12/23 より日本でも一般公開されるみたいです。う、アメリカ版の DVD の発送の連絡が昨日あったばかりだ^^;
Posted by: a nanny mouse | Saturday, December 16, 2006 21:22
みたいですね。第19回東京国際映画祭では三冠達成とか。DeVotchKa もブレイクするかも。
Posted by: Lilith | Saturday, December 16, 2006 22:02
おーや、すごい評価高いんですね。
しかし、トレイラーの音楽が Flaming Lips と Sufjan Stevens で、DeVotchKa が使ってないじゃないですか! むむむ……
Posted by: a nanny mouse | Saturday, December 16, 2006 23:11
「リトル・ミス・サンシャイン」、DVD が届いたんでさっそく見ちゃいました。
細かいところまであんまり注意を払ってないし、語りの上での仕掛けが見えてしまうタイプのラフな作りなんですけど、逆にそこが自然体の味になっている感じですね。大傑作には一歩及ばない出来ですが、ごくごくチャーミングな作品です。
DeVotchKa の曲は、フルに使われるというよりは断片が顔を出す程度で、あまりでしゃばらない感じなので、これはやっぱりサウンドトラックを買って、映画とは別にたっぷり楽しむ価値がありますよ。
Posted by: a nanny mouse | Thursday, December 21, 2006 23:34
見ました~♪ けっこう素朴でかなりおばかなんですけど、とっても気持ちのいい(ヘンテコ一家の)家族愛の物語で、最後とかじ~んと来ちゃいました。コンテストは、ああいう現実的な結末でよかった。ちょっぴり太めだけど一生懸命な女の子はかわいかったです。
音楽は、DeVotchKa しか気が付きませんでしたが、すご~く合ってましたね。
Posted by: Lilith | Sunday, March 04, 2007 21:58
そうそう、どんな結末にするんだろうと思ってたら、あれですもんね。ウケました。
Posted by: a nanny mouse | Monday, March 05, 2007 19:56