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Monday, April 10, 2006

"Volunteers" by Alexander C. Irvine

scifiction

 少年は幼い頃母を失った。そのとき父は他の女と一緒にいた。それはずっと少年の心の中で蟠りとなっていた。

 少年が一歳のとき、巨大隕石が地球に衝突する危機が迫った。同じ頃、三匹の地球外生命体が発見され、四次元航法で宇宙空間を移動する彼らを利用し、人々を地球から避難させる計画が持ち上がった。しかし操縦には宇宙人に好かれた者が〈子宮〉と呼ばれる船室に入り、宇宙人と心を通わせる必要がある。宇宙人エヴリンに選ばれたのは、息子を授かったばかりの父だった。愛する家族を救うため、彼自身もその宇宙船の船長になることを志願する。だが〈子宮〉の中は安全で居心地がよすぎた――微睡みの中で彼は乗員の生命維持装置の確認を怠り、惑星カナンに降り立てたのは二千人のうち約四百人。母もこのとき死んだのだ。

 父の置かれた状況は特殊だ。だが作者は平行して、新天地で地球の古き良き五〇年代を模倣する移民たちの退行振りを描き、安全なコクーンの中に籠もるのが人間全般の有害な性向であることを示唆する。

 物語は謎めいていた事柄を徐々に明かしながら進行し、ラストで病んだ社会から同じ宇宙船に乗って脱出する少年の姿を当時の父に重ね合わせて、見事にその心理を解き明かす。

 二〇〇二年のデビュー作 "A Scattering of Jades" が高い評価を受けたあとも、良質の長篇・短篇を間断なく発表しているアーヴィンは、日本でも積極的に紹介されて欲しい作家のひとりだ。

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Comments

あ、今回はSFなんですね。まあきっとひねりがあるんでしょうけど。

Posted by: a nanny mouse | Tuesday, April 11, 2006 00:17

ひねりはないですが、構成は凝っているし、文もよかったし、私はけっこう好きでした。

Posted by: Lilith | Tuesday, April 11, 2006 22:41

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