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Monday, April 03, 2006

"The Brief History of the Dead" by Kevin Brockmeier

The Brief History of the Deadケヴィン・ブロックマイアの新作長編に対するパトリック・マグラアの否定的な書評がちょっと話題になってます。感情移入できる登場人物がいないので折角のアイデアを無駄にしてしまったというかなりきつ~いコメントなんですが、マグラアを除くと総じて評判はいいようですね。

ということで気になってるんですが、注文した本はまだ海の上(のはず)なので、ウェブで読めるこの長編のベースとなった 2003年のニューヨーカーの同名の短編を味見してみました。長編では冒頭の一章として使われているようです。

あるものは砂漠に飲まれ、あるものは海で溺れ、またあるものは高い木に絡め取られてと、様々な道のりを経て死者が集まる無名の町。死ぬときに見た光景は人それぞれでも、この町にやってきた者が共通して経験したのは、低い太鼓の響き、あるいは巨人の心臓の鼓動のようなドン、ドンという音だった。あるものは今でもその音が時折聞こえるという。

どこか懐かしいような田舎町のたたずまいを見せるこの世界では、これといった事件が起こるでもなく、平凡な日常が流れていた。ただひとつの変化は、どこからともなく新しい人々が現れて、いつのまにかいずこかへ去っていくこと。時によりやってくる人々の数が急激に増え、同時に多くが足早に消えていく……。

生きている人々の記憶に留まっているあいだだけ死者が逗留する境界地帯という設定で、そこを行き来する人々のあやふやな話から、生者の世界での出来事が間接的にほの見えてくるという構成です。世界各地での紛争が徐々に激しさを増し、いずこかの国が解き放った致死性のウィルスが蔓延した暗い近未来像が焦点を結んでいきます。いとおしげに描かれた平凡な日常との対比がかなりインパクトがありますね。

この短編を見る限りでは、ジャンル色を弱めたテッド・チャンか、あからさまなユーモアを控えたジェイムズ・モロウのような雰囲気です。あるいは、奇妙な状況に置かれた庶民の物語ということで、ジョゼ・サラマーゴの『白い闇』のような感じもありますね。感情移入できる物語かどうかは、客観描写による寓意的なこの短編だけでは判断できないといったところ。

長編では、南極で遭難したためにウイルスの感染を免れた女性と、その女性の記憶のみに支えられた一握りの死者の物語がメインになるようです。どう考えてもハッピー・エンドにはなりそうにないですが、先行きが気になるので、やっぱり読んでしまいそう。

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Comments

あ、この短篇は、以前ensambleのメーリングリストで紹介したんですよ([ksf:431])。リンク張っただけですけど……。書きかけだったレヴューもどこにいったかわかんない∩( ・ ω・)∩。

そういえば全然関係ないんですけど、David Mitchellの新作がもうすぐ出るんですね。なんだか自伝的要素を含んだ普通小説のようですけど、前評判はどうなんでしょう?

Posted by: quark | Monday, April 03, 2006 23:15

あ、印象だけでも思い出してください。

ミッチェルはずいぶん前からプルーフが積んであるんですが……積んだままです。自伝的な普通小説ということだったんですが、なんか登場人物が 150人なんていう噂もありますし、やっぱり普通の普通小説じゃないんじゃないでしょうか。

Posted by: a nanny mouse | Monday, April 03, 2006 23:24

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