Sunday, April 30, 2006
イギリスで行われていた『ダ・ヴィンチ・コード』の裁判で、判事が判決文の中に暗号を隠していたそうです。最初読んだときジョークかと思ったんですが、どうもほんとみたい。
判決文に一部イタリックになった文字があって、それを拾っていくと "SMITHCODE" の文字列が! この判事、Peter Smith っていう名前なんですよね(ありきたりすぎてまるで偽名みたい^^;)。さらに追っていくと、そのままでは意味を成さない文字列が並ぶんですが、ガーディアンにも寄稿している弁護士 Dan Tench は、フィボナッチ数列を適用することを思いつき、見事 "Jackie Fisher, who are you? Dreadnought" というフレーズを導き出したそうです。ちなみにフィッシャー提督はドレッドノートを考案した人で、とくにそれ以上の意味はないようですね。
しかしでも、連続したフィボナッチ数列で32文字をカバーしようとすると、2,178,309文字(1ワード4文字、1ページ400ワードで 1,362ページ)をイタリックにする必要があるようですので、やっぱりセクション毎に最初に戻ったとかなんでしょうね。それにしても、手作業だとしたら、作るほうも解くほうもむちゃくちゃ時間がかかったんじゃないでしょうか。なんともご苦労さまです。
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受賞記念ということで、タダで読める短篇のご紹介。
先頃、長篇 "The Girl in the Glass" が、米国の優れた推理小説に贈られるMWA賞のペーパーバック・オリジナル部門を受賞し、ミステリの世界でも認められた形のフォードだが、この短篇もまたファンタジー色の強い、味わい深いミステリ作品に仕上がっている。
光の魔術師ラーチクロフトは、光の特性を利用したあらゆるマジックをやってのける。ある日、新聞記者のオーガストがこの人気絶頂の大物魔術師にインタヴューを申し込んだところ、なぜかすんなり受諾の返事が返ってきた。
インタヴューの当日、現れたのは浮遊するラーチクロフトの頭だけだった。ここでも彼は光のマジックを披露したのだ。いざインタヴューとなると頭だけのラーチクロフトは、オーガストの月並みな質問を退け、夢で見たという不思議な殺人事件の話を始める。
その後、専門の光の話題に入るのだが、彼によれば太陽や蝋燭の〈外の光〉とは別に、体内から発する〈内なる光〉があり、彼はオーガストのような記者を〈内なる光〉のメッセンジャーにしたいという。そのメッセンジャーの出入りのために、彼は眉間に穴を穿っていた。さらには光と闇の戦いに話は及び……。
光の魔術師が語る摩訶不思議な物語。それが現実としてオーガストに降りかかるとき、読者はまるでエッシャーの絵を見たときのような、奇妙な感覚にとらわれるだろう。『アイスクリームの帝国』同様、こちらも独特の雰囲気が魅力のフォードらしい作品だ。
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Saturday, April 29, 2006
イギリスの書店ウォーターストーンが、見落とされている傑作30作を全店舗でプロモートするというキャンペーンを行っています。店員の意見をベースに選んだものということですが、たしかにいつものベストセラー・リストとは違って、面白そうなタイトルが並んでますね。
ヴォネガットの『スローターハウス5』などの有名な作品もリストされてますが、全体的な印象は alternative literature とでもいえそうな感じ。スーザン・クーパーの「闇の戦い」のシリーズは、ファンタジイ・ブームなのにプッシュしそこねたんでしょうか。
ラッセル・ホーバンの Ridley Walker やニコラス・クリストファーの A Trip To The Stars が入っているのはちょっとうれしい^^) ロバートスン・デイヴィーズやブローティガン、サラマーゴあたりも読まないとな~~と、こういうリストを見ると罪悪感に駆られますね。ファンタジイからはチャイナ・ミエヴィル、ジュリエット・マリリア、ジョナサン・キャロル、マリオン・ジマー・ブラッドリなんかが採られてます。
このキャンペーンにあわせ、25人の作家や有名人が選ぶ推薦作も公開されてますが、カルロス・ルイス・サフォンがヒョーツバーグの『堕ちる天使』、デイヴィッド・ミッチェルがノーテボームの『これから話す物語』なんかを薦めてますね。
ガーディアンのブログ culture vulture では(ううむ、むちゃくちゃいい名前)、コメントに読者の推薦作が延々と並んでいますので、ここから宝を掘り出すのも楽しいかも。
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Friday, April 28, 2006
なんとなんとなんと、ジェフリイ・フォードの The Girl in the Glass が、MWA賞のペーパーバック・オリジナル部門を受賞したそうです。ううむ、いい作品だとは思いましたけど、ミステリの読者にはどう受けとめられるのか不安なところはあったんですが、完全に杞憂でしたね。おめでとう!!
いやもうこれで邦訳が出るのは間違いないでしょうし、アメリカでもジャンル内の評価だけでなく、一般読者にも認知されて、ブラッドベリのような国民的作家として読まれるようになるんじゃないでしょうか。本来そうあるべきなんですよね。こうなってみると、当初ハードカバーの予定だったものが、ペーパーバックに格下げされて出版されたのは、かえってラッキーだったかもしれません。
うちのブログでの紹介はこちらになります。MWA賞の他の受賞作はこちらへ。いやまあほんとうはメインの受賞者のほうも紹介すべきでしょうけど、最近はあまり本格的なミステリはチェックしてませんのでご容赦を。大御所・大物4人を押さえて受賞のジェス・ウォルターなんて、ちょっと気になりますけど。
ちなみに、直接おめでとうを言いたい方はフォードのブログのほうへどうぞ。
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パブリッシャーズ・ウィークリイにウェブでのプロモーションで成功をおさめている作家の記事が載ってましたが(そのうち読めなくなるかもしれません)、おなじみの作家の名前が多数登場してますね。
ブログをキーにして大手出版社への道を開いたジェフ・ヴァンダーミアは、あの手この手のアイデアで読者を巻き込んでいくのをたっぷり楽しんでいる様子。新作 Shriek のアメリカ・リリースに向けて 10分ほどのミニ・フィルムを製作中です。
デビュー作がヒューゴー賞にノミネートされているSF界の話題の新人ジョン・スカルジ(John Scalzi)は、自分のサイトで公開した作品が編集者の目に止まり、大手 TOR から登場したもの。順調に TOR からの第2作と、旧作の Subterranean からの出版をものにし、ブログのほうもいまや日々 12,000-20,000人が訪れるという繁盛ぶり。シェリー・プリースト(Cherie Priest)もウェブ出身の成功例として紹介されています。
カナダのYAファンタジイ作家マギー・ウッド(Maggie Wood)は、自分の作品を核にした子供向きのブック・クラブをウェブで展開し、読者の作品に手作りの人形で報いて人気を集めているそうです。また、ミリタリーSFの Baen (わたしには縁のないだれかさん御用達のところですね^^)は、一部の作品をウェブでフリーに提供することで読者を集め、デジタル版の販売に成功をおさめたほぼ唯一の出版社ですけど、ここにきて大手の Tor もこのビジネス・モデルを踏襲することになりました。
とはいえ、ウェブでのプロモーションの先駆者は、なんといっても元祖ブロガのコリイ・ドクトロウでしょう。Boing Boing を維持する傍ら、自分の作品紹介のサイトでは、本の出版と同時にフリーのデジタル版を提供するという、まかり間違えれば自殺行為にもなりかねない荒業を敢行した人ですが、結果は見事に成功。長編第1作は直接のダウンロードだけでも 65万件に達し、同時に書籍版のほうも現在6刷という好セールスを記録中だそうです。著作権を維持しながらフリーなディストリビューションを保証するクリエイティヴ・コモンズが機能することを証明した重要な実例のひとつといえるでしょうか。
さて、記事では触れられてませんが、プロモーションの成功の裏には、やっぱりポロモートされる作品それ自体が評価に値するものであるというごくシンプルな事実があるんじゃないでしょうか。いろいろな話題で楽しませてくれた上に、書いてる作品が面白いときては、何らかの形でサポートしてやろうと思うのが心情ですよね。で、人のいい読者は次々と本の山を築くことになるのでした。
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Thursday, April 27, 2006
なんと~、ティプトリー賞、英国SF協会賞につづいて、クラーク賞もジェフ・ライマンの Air でした。どうも昨年の(アメリカ版は 2004年ですけど)ナンバーワンSFなのは確実なようですね。ここまできたら、邦訳の可能性も相当高くなったといえるんじゃないでしょうか。
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なんとなんと、ジョン・クロウリーがブログを始めたんですね。
こんなこと初めてなんで慣れてないんだといいながら、たしかにとりとめのないどっちでもいいことを書き散らしてますが、なんかそんなあたりがシュールでいいですね。まあけっこう計算してるのかもしれませんけど、アラスター・グレイの強い個性とはまた違った独特の味を出してます。
たぶん役に立つことはほとんど書かないんだろうな~と思いながらも、ときどき覗きたいサイトです。
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Wednesday, April 26, 2006
17才の少女が 50万ドルのアドバンスを手にしたという話題のデビュー作が、盗作騒ぎで揺れているようです。
現在 19才のハーヴァード大学生 Kaavya Viswanathan の How Opal Mehta Got Kissed, Got Wild, and Got A Life という学生生活を描いた作品がそれですが、あるYA作家の作品から一部のフレーズが借用されているのを学生たちが発見し、ハーヴァード大の学生新聞で報道されたことから騒ぎに火がついたようです。
ガーディアンの記事では、盗作の度合いや、相手の作家や双方の出版社がどう対処するつもりなのか不明ですが、なにやら Amazon.com の読者評は早々と 2ch 状態と化しているようです(いつもといっしょじゃない……というのはさておいて)。
う~ん、両極端に二分されていた当初の評価が、4/24 を境に盗作糾弾の組織票へと変わって行っているようですね。興味のある方は今のうちに押さえておいた方がよろしいかも。いえ、あわててサイン本を注文したなんてことはしてません。ほんとです、そんな趣味の悪い。単にサーチしてみただけですってば^^;
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おっと、また表紙に呼ばれてしまそうです。
ゴーレムやらディー博士やらついでにリリスまで出てくる(らしい) "The Book of Splendor" が好評だったフランシス・シャーウッドの新作は、1519年にスペインのコルテスに征服されたアステカが舞台。
コルテスを、神話に出てくる神ケツァルコアトルと思いこんだアステカ王。一度はスペイン軍を追い出したものの、結局は負けて滅ぼされてしまいます。その経緯を、奴隷として売られコルテスの通訳兼愛人となり国を裏切った原住民マリンチェとコルテスの双方から見た物語だとか。
ふつうだと征服者のスペインが一方的に責められるのですが、アステカも野蛮な習慣を持っていたわけで、その辺が中立的に書かれているというのが興味深いです。マリンチェという女性は実在の人物で、コルテスとの間に子供ももうけているんですね。
タイトルの Night of Sorrows(La noche triste)ですが、最初にアステカがスペインを破った戦いをこう呼ぶのだそうです。
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Tuesday, April 25, 2006
いまや現代SFの代表選手となったストロスの長編第1作のレヴュウを引っ張り出してみました。
事の起こりは空から降ってきた無数の電話だった。鄙びた植民惑星ロウチャード星で、工業製品とは縁のない生活を送る田舎町ノーヴィイ・ペトログラードの住民たちは、おそるおそる電話を取り上げる。聞こえてきたのは「楽しませてくれないかい?」という得体の知れない声。何か話を聞かせれば、三つの願いを叶えてくれるというのである。人々は物語を語り、空からは食料や自転車が降りそそいだ。宇宙空間では、闖入者の宇宙船が、植民惑星の月をせっせと工業製品に作り変えていた。
封建領主制でロウチャード星を縛るニュー・リパブリックの帝政に対し、密かに反抗心をつのらせる面々は、電話に向かって革命理論を語り、万能物質変換機を手に入れる。農民の反乱の始まりだった。ひねくれた民話をプロローグとした物語は、未知の来訪者「フェスティヴァル」と、前近代化社会を維持する帝国の闘争という、ロシア革命のパロディへと姿を変えていく。帝国軍は重装備を備えた船団を植民惑星に送り込む。ジャンプ・ドライブによるタイム・トラベルで過去に遡り、「フェスティヴァル」の到来を迎え撃とうというのだ。
とまあ、ここまでなら旧弊なミリタリーSFの定石で、せいぜいジョー・ホールドマンの『終りなき戦い』の焼き直しといったところだが、ポスト・シンギュラリティが表看板のストロスのこと、ありきたりのスペース・オペラでは終わらない。この作品の舞台は、ヴァーナー・ヴィンジのいうシンギュラリティが起こったあとの世界なのである。
21世紀半ば、急速な技術の発展により、究極のAI、エシャトンが出現し、世界は一変した。なんの説明もなく、エシャトンは地球の人口の九割をワームホールを通じて銀河の各地に植民させたのだ。それから四百年、東欧出身者が植民したニュー・リパブリックは19世紀の政体に退行した。いっぽう、電脳空間にアップロードされた人類は、宇宙を巡って各地の文化や人類以外の意識を取り込んで「フェスティヴァル」を形成した。(このあたりの設定はヴィンジの『遠き神々の炎』を連想させるが、イデオロギーの対立の図式や多彩な意識の形態といった点で、ケン・マクラウドやアレステア・レナルズなど、ストロスと同郷のイギリス作家とも呼応をみせていて、ちょっと面白いところ。)
物語は、宇宙船のエンジンの修理のために帝国の本拠を訪れたマーティンと、情勢を探るため国連から送り込まれたレイチェルという二人の地球人を軸に展開する。エシャトンは人々の行動に干渉することはなかったが、因果律の否定に対しては容赦なく対処した。因果律を破る文明があれば、星系もろとも葬り去ってしまうのだ。タイム・トラベルという禁じ手を使えば、ニュー・リパブリックも破壊されかねない。250光年離れた地球への影響を恐れたレイチェルは、押しとどめようと画策する。いっぽう、マーティンも無害な技術者の仮面の裏にある使命を秘めていた。だが、バルチック艦隊を思わせる帝国軍は、小刻みにジャンプを繰り返し、刻一刻と「フェスティヴァル」との決戦の地へと向かう。
2001年からアシモフ誌に掲載されている「ロブスター」に始まる「アッチェレランド」の連作短編で、一躍時代の寵児と化したストロスだが、この長篇第一作の出版にはかなりの紆余曲折があったようだ。執筆時期は96年から98年と「ロブスター」以前に遡るが、編集者のもとで2年間店晒しにされたあと、ようやく買い手がついたと思ったのもつかの間、Festival of Foolsというタイトルで出版を予定していたBig Engineは昨年倒産し、やっと2003年になって老舗のエースからお目見えしたというもの。正直なところ、やはり本領発揮以前の作品らしく、話運びはいまひとつといった感はぬぐえない。とはいえ、大技小技の連続に皮肉の利いたユーモア、時折見せる詩情に、ニヤッとさせられるトリヴィアの数々と、過剰なまでの情報の奔流に、作者の才気が漲った力作である。
86年のデビュー以来、IT産業に身をおきながら細々と短編を発表してきたストロスだが、ブレイク後は大忙しで、本作の続編や「アッチェレランド」の長篇化、歴史改変もののシリーズなど、今後二年ほどの間に七冊の長篇の出版予定があるという。「短編の名手」という枕詞が「SF界の第一人者」という呼称に取って代わられるのもそう遠いことではなさそうだ。(2003/12/9)
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Monday, April 24, 2006
ヴァンダーミアのサイトで、彼の考えるファンタジイの全体像をとらえるための必読書 60冊がリストされてます。ファンタジイを書こうとする人向け、とは銘打たれてますが、読者向けと捉えても特に問題はないでしょう。
FANTASY: ESSENTIAL READING
- Pale Fire, Vladimir Nabokov (『青白い炎』ウラジミール・ナボコフ)
- The Gormenghast Trilogy, Mervyn Peake (「ゴーメンガースト三部作」マーヴィン・ピーク)
- Lanark, Alasdair Gray (『ラナーク』アラスター・グレイ(近刊))
- Jerusalem Poker, Edward Whittemore
- The Chess Garden, Brooks Hansen
- The Infernal Desire Machines of Doctor Hoffman, Angela Carter
- Alice in Wonderland, Lewis Carroll (『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル)
- Ficciones, Jorge Luis Borges (『伝奇集』ホルヘ・ルイス・ボルヘス)
- Nights at the Circus, Angela Carter (『夜ごとのサーカス』アンジェラ・カーター)
- Observatory Mansions, Edward Carey (『望楼館追想』エドワード・ケアリー)
- Possession, A.S. Byatt (『抱擁』A・S・バイアット)
- In Viriconium, M. John Harrison
- Arc d'X, Steve Erickson (『Xのアーチ』スティーブ・エリクソン)
- V, Thomas Pynchon (『V.』トマス・ピンチョン)
- Sinai Tapestry, Edward Whittemore
- Quin’s Shanghai Circus, Edward Whittemore
- If Upon a Winter's Night a Traveler..., Italo Calvino (『冬の夜ひとりの旅人が』イタロ・カルヴィーノ)
- Collected Stories, Franz Kafka (「カフカ短編集」フランツ・カフカ)
- The Master & Margarita, Mikhail Bulgakov (『巨匠とマルガリータ』ミハイル・ブルガーコフ)
- Mother London, Michael Moorcock
- The Collected Stories, J.G. Ballard (「バラード短編集」J・G・バラード)
- A Fine and Private Place, Peter S. Beagle (『心地よく秘密めいたところ』ピーター・S・ビーグル)
- The New York Trilogy, Paul Auster (「ニューヨーク三部作」ポール・オースター)
- Blood Meridian, Cormac McCarthy
- The Birth of the People's Republic of Antarctica, John Calvin Bachelor
- House of Leaves, Mark Danielewski (『紙葉の家』マーク・Z・ダニエレブスキー)
- The Riddle Master Trilogy, Patricia McKillip (「イルスの竪琴シリーズ」パトリシア・A・マキリップ)
- The Baron in the Trees, Italo Calvino (『木のぼり男爵』イタロ・カルヴィーノ)
- The Other Side, Alfred Kubin (『対極』アルフレート・クービン)
- The Circus of Doctor Lao, Charles Finney (『ラーオ博士のサーカス』C・G・フィニー)
- A Voyage to Arcturus, David Lindsay (『アルクトゥールスへの旅』デイヴィッド・リンゼイ)
- The Circus of the Earth & the Air, Brooke Stevens
- Gulliver's Travels, Jonathan Swift (『ガリヴァー旅行記』ジョナサン・スウィフト)
- Dictionary of the Khazars, Milorad Pavic (『ハザール事典』ミロラド・パヴィッチ)
- At Swim-Two-Birds, Flann O'Brian (『スウィム=トゥー=バーズにて』フラン・オブライエン)
- The Troika, Stepan Chapman
- The Fan-maker’s Inquisition, Rikki Ducornet
- Solomon Gursky Was Here, Mordechai Richler
- Darconville's Cat, Alexander Theroux
- Don Quixote, Cervantes (『ドン・キホーテ』セルヴァンテス)
- Poor Things, Alasdair Gray
- Geek Love, Katherine Dunn (『異形の愛』キャサリン・ダン)
- The Land of Laughs, Jonathan Carroll (『死者の書』ジョナサン・キャロル)
- The Wizard of Earthsea Trilogy, Ursula K. LeGuin (「アースシー三部作」アーシュラ・K・ル=グイン)
- The House on the Borderland, William Hope Hodgson (『異次元を覗く家』ウィリアム・ホープ・ホジソン)
- Little, Big, John Crowley (『リトル、ビッグ』ジョン・クロウリー)
- One Hundred Years of Solitude, Gabriel Garcia Marquez (『百年の孤独』ガブリエル・ガルシア・マルケス)
- The General in His Labyrinth, Gabriel Garcia Marquez (『将軍の迷宮』ガブリエル・ガルシア・マルケス)
- The Seven Who Fled, Frederick Prokosch
- Already Dead, Denis Johnson
- The Portrait of Mrs. Charbuque, Jeffrey Ford
- Phosphor in Dreamland, Rikki Ducornet
- The Passion of New Eve, Angela Carter
- Views From the Oldest House, Richard Grant
- Life During Wartime, Lucius Shepard (『戦時生活』ルーシャス・シェパード)
- The Chronicles of Master Li and Number Ten Ox, Barry Hughart (『鳥姫伝』他 バリー・ヒューガート)
- The Famished Road, Ben Okri (『満たされぬ道』ベン・オクリ)
- Altmann’s Tongue, Brian Evenson
- Girl Imagined by Chance, Lance Olsen
- The Fantasy Writer’s Assistant & Other Stories, Jeffrey Ford
じつはこれ、3年ほど前にもヴァンダーミアが持ち出したもので、これをベースに大勢の人がそれぞれがベストだと考える作品をあげて、なかなか活発な議論に発展したんですが、その結果がメインのリストに続く 400冊を超える comprehensive list となったのでした。ただの人気投票ではなく、かなりのジャンルの読み手/書き手によって練られたリストなので、ゴミはふるい落とされてます。じつはわたしがあげた作品も何冊かこの中に含まれているんですけど^^;
ざっと見ただけでも、広く捉えたファンタジイというのがむちゃくちゃ豊かな世界だというのがよくわかりますが、ヴァンダーミア自身のリストはかなりスタイル重視の作品に偏ってますし、400冊並べても英語圏偏重で、ファンタジイ全体を語るには、まだまだ足りないような感じもするんですよね。
ということで、ここから宝を掘り出すのもいいんですけど、ヴァンダーミアはまた議論の再開を狙っているようですので、このリストから漏れている重要な作品や、なんでこんな作品が入っているんだという文句をコメントしてみても面白いんじゃないでしょうか。ちなみに、ここ 10年ほどの作品はまだ評価が定まっていないため避けるという前提で、英語で読めるものという暗黙の了解もありましたが、どちらもかなりゆるく適用されてます。
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Sunday, April 23, 2006
久しぶりに本屋に行ったら、なんと~、トーベ・ヤンソンの挿絵の『不思議の国のアリス』がありました。こんな本があったなんて全く知らなかったので即散財。なんかアリスがムーミン谷に迷い込んだみたいで不思議な雰囲気ですね。
ウェブで探したら、イラストが公開されてました。いやもう、素晴らしい。
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Saturday, April 22, 2006
マシュー・パールの『ダンテ・クラブ』は、ミステリとしては弱かったし、話運びもぎごちない感じがしましたが、「神曲」を翻訳出版しようとする主人公たちの人間くさいところが、南北戦争後の混乱期という時代背景と相まって、情感に訴えてくるようないい作品でした。
新作はポーの死の謎にまつわるミステリということで、酒の飲みすぎで死んだという公式見解にどうしても納得できないポーのファンの弁護士が真相を探る話とのこと。主人公がわざわざフランスにまで赴いて頼ったのは、なんと、オーギュスト・デュパンのモデルだという探偵。ところが、我こそが本当のモデルだと言い張るデュパン男爵も二人を追いかけてきて、奇妙な探偵ごっこが始まるようです。なんかこんどもミステリよりは時代背景とキャラクタの物語のようですね。期待してしまおう。
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Friday, April 21, 2006
なにやら暗そうな短編集ですよ。全編救いようのない話みたいです。
8編のうち6編がニューヨーカーに発表されたものということで、探せばいくつかはオンラインで読めるようです:
ダンブロージオの暗い張り詰めた文章が物語を棺桶の釘のように打ち込む……なんていわれると、読むのが怖いようなやっぱり読みたいような……と書いておけば、きっと誰かがチェックしてくれるでしょう^^)
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Thursday, April 20, 2006
フランスの歴史ミステリ作家ギョーム・プレヴォーが書いた、初のYA向けファンタジー The Book of Time Trilogy の1巻目 "The Stone Statue" が、来年の秋に英語圏で出版されるそうです。
本国フランスでは Le Livre du Temps シリーズの1巻目 "La Pierre Sculptée" として今年2月に発売されているのですが、結構評判がいいようです。ひとことで言うとダ・ヴィンチ・コード+ドラキュラ+タイム・トラベラーズ・ワイフだとか。なんかこれを聞いただけでも、ヒット間違い無しという気がしますね。
作者のプレヴォーは、フランスのル・アーヴル大学で歴史を教えているそうなので、内容的にもしっかりしているのではないでしょうか。
詳細はこちら。(注:上の画像とリンクは、アマゾン・フランスのフランス語版です)
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マクスウィーニイからまたヘンな本^^;
子供向きの科学絵本で、専門家によるイカの生態についてということなんですが、中身はかなり怪しそう。イカのデートのときの作法とか、なぜイカは白黒テレビが見られないかとか、塩水のミュージカル劇場に対する長期的な影響について解説しているそうで、むちゃくちゃ役に立たなそう^^; う~ん、こういう本を読んで育った子はいったいどういう大人になるんでしょう。
ハギス・オン・ウェイという作者の学者夫妻の名前もとってもうさんくさいですね。ほかにもキリンについて語った Giraffes? Giraffes! と、人間の頭の各部分を解説した Your Disgusting Head : The Darkest, Most Offensive and Moist Secrets of Your Ears, Mouth and Nose が出ているようです。
- Frequently Asked Question: Why do we call giraffes "giraffes?" Answer: Because when they came to Earth they asked us to.
- The ear was invented and designed by Feranando de la Mancini Goldfarb, in 1911, which was also a good year for yeast.
ううむ……。
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Wednesday, April 19, 2006
なにやらショボそうなネズミのカバーですが、モービイ・ディックやドン・キホーテを齧って育ったため、本を読めるようになったネズミを主人公に、1960年代のボストンの生活を描いた作品とのこと。この設定だけでもかなりくすぐられるんですが、尊敬する古本屋の主人に毒殺されそうになりながらも、売れないSF作家の友人と、ショッピング・センターに飲み込まれそうになる本屋を救おうと頑張る話ときては見逃せないですね。
メインのストーリーの合間には、本への思いや作家の生活、気紛れなジャズと映画の日常という60年代の空気がたっぷり詰まっているということで、じつはこちらが本筋なんでしょうけど、とってもおいしそう。この気取った書き出しもいいですね:
"I had always imagined that my life story...would have a great first line: something like Nabokov's 'Lolita, light of my life, fire of my loins;' or if I could not do lyric, then something sweeping like Tolstoy's 'All happy families are alike, but every unhappy family is unhappy in its own way.'... When it comes to openers, though, the best in my view has to be the first line of Ford Madox Ford's The Good Soldier: 'This is the saddest story I have ever heard.'"
このサム・サヴェジという人、もう1冊去年出た The Criminal Life of Effie O. という作品もあるようで、こちらは80年代を舞台に、フラワー・チルドレン出身ながら現在は会社の重役という母を持つ裕福な少女が、パンクな生活を求めて街に飛び出す話を、緩い韻文で語ったものとのこと。『地下鉄のザジ』のイメージを思い浮かべてしまうんですが、さて、どうでしょう。どちらもカバーだけでもわたし的には正解なんですが。
...と思って探したら、Old Rat's Hole なんていういかにもなサイトが見つかりました^^) なんと~、エフィー・Oの冒険は全文がウェブで読めるじゃないですか。それもなかなかかわいい絵入りで! どうも読む前からファンになっちゃいそうですね。
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Tuesday, April 18, 2006
昨年出た初短編集 "20th Century Ghosts" がクローフォード賞受賞、ブラム・ストーカー賞にもノミネートされてと、デビュー早々から快進撃中のホラー作家ジョー・ヒルですが、来年初めに出版予定の初長篇 "Heart-Shaped Box" の映画化がもう決まったというから、やはりタダモノではなさそうですね。
映画化権を買ったのはワーナー・ブラザーズ。プロデューサーは「ディープ・ブルー」や「アイ、ロボット」などのアキヴァ・ゴールズマン。キャストなどは未定のようです。
内容は、eBay で幽霊付きの埋葬衣(ミイラとかを入れる人の形をした棺みたいの?)を買ってしまったシンガーが、その幽霊と自分の過去の悪霊たち(?)に悩まされる話とか。詳細は Variety.com で。
なんとジョー・ヒルの本名はジョー・ヒル・キングで、スティーヴン・キングの息子だそうです。
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アメリカの代表的な文学賞としては全米図書賞がありますが、じつはあんまり人気ないそうで、それよりもはるかに注目を集めているのがピュリツァー賞のフィクション部門だそうです。事実、受賞直後の初版サイン本の値段が、全米図書賞だと 100ドル程度なのに対し、ピュリツァーだと 200ドルぐらいになるんですよね(<う、また始めた^^;)。
ということで今年もピュリツァー賞が発表されましたが、フィクション部門の受賞作と候補作のうちの1作が同じ March というタイトルで、両方とも南北戦争を題材にした作品という、面白い偶然が起きてます。
受賞作の March は、17世紀のロンドンのペストの大流行を描いた歴史小説で評判になったジャーナリスト、ジェラルディン・ブルックスの2作目の小説で、オルコットの『若草物語』の四姉妹の父親を主人公に設定して、戦争とその人々に与える影響を探ったものとのこと。タイトルの「マーチ」はもちろん、主人公の名字ですね。
一方、候補作のほうは、アメリカを代表する作家のひとりであるE・L・ドクトロウの作品で、こちらは The March というタイトルになってます。北軍を勝利に導いたシャーマン将軍の激烈な焦土作戦を軸に、様々な人間模様を描いた戦争絵巻のようで、こちらの「マーチ」は遠征ということになります。
たまたま両方とも手元にあるんですが、ドクトロウの作品はどうもいまひとつという声を耳にしますし、題材的にもあんまり惹かれませんね。ブルックスのほうは1作目ともども面白そうではあるんで、ま、ひょっとしたらそのうちにということで。オルコット・ファンの人で、読んでみようという方はいらっしゃいませんか^^)
ちなみに、受賞作と一緒に発表された候補作の残りの1冊は、リー・マーティンの The Bright Forever という、南部の田舎町を舞台に、少女の失踪事件を核に人々の心の闇を探った作品のようで、あらすじを見る限りあんまり食欲がわきませんね^^;
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Monday, April 17, 2006
英国SF協会賞も発表されてました(こちらは対象年表示)。
SF色が強い賞なんで、長編部門は今年はチャールズ・ストロスの Accelerando だとばかり思ってましたが、ジェフ・ライマンの Air が受賞してます。まあ傑作という評価をよく目にしますし、ティプトリー賞も受賞してますので、後に控えたクラーク賞やネビュラ賞でも健闘するのかも。
中央アジアの僻村を舞台に、量子通信網の実験に巻き込まれた村の世話焼き女の苦闘を通して、国際化の波にもまれる伝統的な社会を描いたもののようです。発想の飛躍した遠未来SFやスペース・オペラに異を唱え、現実的に捕らえうる近未来に固執した Mundane SF(ブログ)の提唱者であるライマンらしい小説のようですね。
じつはこの作品、アメリカでは 2004年にペーパーバックで出版されディック賞の候補にもなってますが、イギリスでは 2005年にきちんとハードカバーで出版されました。
短編部門の受賞作はケリー・リンクの "Magic for Beginners" で、これは彼女の短編集のタイトル・ストーリーにもなってますが、かなりの傑作です。アート部門は Pawel Lewandowski のインターゾーン誌 200号のカバーということですが、縮小版ではピンときませんね。
オフィシャル・サイトでは結果がまだ更新されてませんので、速報は Emerald City で。
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今年の受賞作はM・M・バックナーの War Surf だそうです。
戦争が娯楽となった近未来のアドヴェンチャーものに、大企業による政治支配や不死の問題を絡めた意欲作のようです。ポスト・サイバーパンクよりも、リチャード・モーガンの路線に近いのかな? ううむ、前2作はどこかに積んであるんですけど、これは買ってもいなかった^^; ちょっと伏兵です。
ジャスティナ・ロブスンの Natural History は次点の special citation になってました。こちらも傑作なんですけどね。
ディック賞のオフィシャル・サイトはこちら。
しかし、こうして並べてみると、未来には禍々しいものが待ち受けていそうな感じですね^^;
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Sunday, April 16, 2006
古いニュースなんですが、ちょっと面白いのでご紹介。
スコットランドのパースシャー、セント・フィランズという村で、宅地造成が妖精のせいで計画変更を余儀なくされたそうです。造成を計画していた土地の一角にあった岩が、6世紀にフィランズ聖人がピクト人を改宗させようと野営していたところという由緒あるもので、岩の下には妖精が住んでいるんだそうです。
ううむ、キリスト教と妖精とは平和に共存するのかという疑問はさておいて、村の人から妖精を脅かすなという苦情が相次いだようです。村の評議会の議長のコメントというのが面白いですね(「妖精の存在は信じてるけど、あの岩の下に棲んでるかどうかはわからない。王さまの戴冠が行われたという歴史的に重要な岩なので……」)。
ともかく、岩をどけてしまうのは縁起が悪いということで、別の場所に宅地を作ることになったようです。"MacFeng Shui" (スコットランドの風水)という言い方がお茶目ですね^^) ともあれ、妖精の郷が無事でよござんした。
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20世紀半ばに発見された「死海写本」と「ナグ・ハマディ文書」が、初期キリスト教に関する我々の見方を大きく変えてしまったことは皆さんご存知のとおりで、それがまあ『ダ・ヴィンチ・コード』なんかを生み出す源流になってるわけですね。
実はそれに匹敵するような文書が発見されてたそうで、その名も「ユダの福音書」。SFのタイトルじゃありませんよ(笑)。1970年頃に発見されたまま金庫に眠ってんですが、最近になってようやく修復と翻訳が行なわれ、間もなくナショナル・ジオグラフィック誌で公開されるということなのです。
この『ユダの福音書』によると、ユダの裏切りはイエスの指示によるものだったということになります。ユダこそがイエスの教えを理解していた唯一の弟子であり、他の弟子たちの迫害を受けるものの、最後には彼らの上に君臨するのだと。
とにかくまあプレスリリースをごらんください。
今後の展開が楽しみです。
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「ヨーロッパで大ベストセラー」という宣伝文句につられて読んでみましたが、納得のおもしろさでした。歴史ミステリ好きの方にはオススメの一冊です。
本題に入る前に告白しますと、同じ「最後の晩餐」の謎を扱った『ダ・ヴィンチ・コード』は実は読んでないんです。レンヌ・ル・シャトーとか、マグダラのマリア信仰とかだったら、荒俣宏の『レックス・ムンディ』を読んで知ってるし、ハリウッド映画的なノリという噂を聞くとどうも……。というわけで『ダ・ヴィンチ・コード』と比べることはできませんので、悪しからず。でも最後の晩餐のこの謎のほうは『ダ・ヴィンチ・コード』では言及されていないんじゃないでしょうか。
舞台は15世紀末イタリア。ダ・ヴィンチが自分の作品に異端的なメッセージを隠しているという「予言者」からの告発を受けた法王庁は、傘下の秘密スパイ組織から、暗号解読などに長けた修道士アゴスティノ・レイレを調査に送り出します。エジプトに隠棲している80代になったレイレが、自分しか知らない当時の秘密を手記に残すという形で語られるのがこの物語。
1497年1月、ミラノ公イル・モーロの年若い身重の妻ベアトリーチェ・デステが急逝し、その混乱に乗じて、レイレは問題の「最後の晩餐」の制作が進んでいるミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会に「休暇」と偽って滞在します。そして、まずは「予言者」の手紙にある暗号から、その告発の主を捜すことから始めます。しかし教会内の協力者の謎の死など、彼の調査には困難が立ちふさがります。
金で法王の座を買ったスペイン・ボルジア家出身のアレクサンデル6世、フィレンツェで前例のない形の「岩窟の聖母」を描いて問題を起こしたばかりのダ・ヴィンチ、そのあと彼の庇護者になったミラノ公イル・モーロもまた、古代エジプトや古代ギリシャ哲学に傾倒する異端の輩、と実在の登場人物だけでもクセのある人たちばかりで興味深く、その中に身を置く主人公を通して、その時代の雰囲気がとてもよく伝わってきます。
ダ・ヴィンチが影響を受けた、13世紀のドミニコ会士ヤコブス・デ・ヴォラギネの『黄金伝説』を拠り所とした「最後の晩餐」のメッセージ解読はあっぱれでしたが、そこに至るまでのいろいろな情報もとても楽しめました。そしてなにより、ローマ・カトリック教会から見れば異端であるカタリ派について、カトリック国スペインの作者ハビエル・シエラが公正な目で書いているのが素晴らしいですね。謎解きもいいのですが、こちらのほうがより印象に残りました。
この本のサイトによれば、作者は実在する文書を参考に現地に赴いて調査することによって、歴史的な謎を解明することを目指していて、この作品の調査の旅にも3年をかけたそうです。同じ「最後の晩餐」の謎を巡る物語でも、切り口の違うこの作品は『ダ・ヴィンチ・コード』を読んだ人も楽しめるのではないかと思います。
この作品、翻訳も含めて既に37ヶ国で出版されているそうですが、サイトにある今年までの出版分をみても、日本は見あたりませんね~。お隣の韓国でも去年出てるみたいですけど、完全に乗り遅れてるでしょうか。
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Saturday, April 15, 2006
ヘタウマ系の絵ですが、フォークロア調のイラストとヴィヴィッドな色彩がけっこう好みかもの、カラフルな動物たちが登場する子供向けの詩の絵本です。
中身をちょっと見れるのですが、詩もおかしくてなかなかいいですね。詩人のジュリーとイラストレータのジュリーは、お友達同士だそうです。
Julie Paschkis のイラストはこちら。
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Friday, April 14, 2006
イースターということで、ウサギにちなんだサイトはいかがでしょう^^)
やっぱりこのエピソードがいちばん秀逸でしょうか。

ウサギといえば、有名な自殺志望のウサギの本も出てますね。2冊もあるなんて知らなかった。サンプルはオフィシャル・サイトへ。
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Thursday, April 13, 2006
砂漠と海のこの表紙と「マグレブ」ときては気になりますね。
旅行作家であり、詩人でもある作者の初短編集だけあって、サハラやカリブなどが舞台になっているようです。
A collection of psychologically complex, often darkly comic stories that take us into the self-made Edens of travelers whose certain paths around the world lead invariably back to the uncertain self だって。出版社の宣伝文うまいですね~。これ読んだだけで 80% 買う気になってます。
もうちょっと詳しくは、Alfred A. Knopf のサイトでどうぞ。
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死ぬまでに読むべき本 1001冊だそうです^^)
古典から現代まで、さまざまなジャンルにわたる必読書について、あらすじや作家紹介、時代背景などをコンサイスにまとめたものとのこと。まあどうせ厚さに比べ中身の薄いガイドブックだろうと思いきや、あのピーター・アクロイドが序文を書いているということなので、そう馬鹿にしたもんでもないのかも。この本のせいでバターユの『眼球譚』やムジルの『若きテルレス』、ピンチョンの『ヴァインランド』、ヴェルヌの『秘密の島』を買う羽目になった人がいるそうで、なかなかのセレクションをしてるのかもしれませんね。
この「死ぬまでに……」のシリーズ、ほかにもいろいろ出ているようで、アマゾンで探すと、1001 Albums: You Must Hear Before You Die、1001 Movies: You Must See Before You Die、1001 Natural Wonders: You Must See Before You Die、1001 Golf Holes: You Must Play Before You Die(う、やっぱイギリス)なんていうのが見つかりました。
ほかの出版社では Unforgettable Places to See Before You Die、Unforgettable Things to Do Before You Die、Unforgettable Journeys to Take Before You Die なんていう観光のガイドブックも出てるみたいです。しかし、死ぬまでにやらなきゃいけないことがそんなにあるんじゃ、なかなか死ねそうにないですね(笑)
う~ん、うちのブログでも、読まなきゃ心残りで成仏できない本のシリーズでもやりましょうか^^)
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Wednesday, April 12, 2006
先日eBayに出品されたらしいんですが、写真のコレなんだかわかりますか?
その名も"Vampire Killing Kit"。
古代ルーマニア語で書かれた祈祷書をはじめ、十字架、杭、聖水といったおなじみのグッズがコンパクト(?)にまとめられてます。注射器がついてて、ニンニクエキス直接注射できるようになってたり、ドラキュラの牙を抜くためにペンチもちゃんと収められてます。
おそらく19世紀末のトランシルヴァニアでルーマニア人の僧侶によって作られたものだろう、なんて適当な解説がついてますけど、怪しいもんですねぇ。
気になるお値段ですが、1000ドルで落札されたそうです。
興味のある方は写真をクリックしてくださいませ。
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なんとなんと、知らないうちにこんな本が出てました。
ダニエル・ハンドラーというとあまり聞き覚えがないかもしれませんが、じつはこれ、いまや A Series of Unfortunate Events で大ベストセラー作家となったレモニー・スニケットの本名で、今回は大人向けのメインストリーム作品ということで、使い分けているものです。
以前はこちらの名前はあまり知られていなかったため、ハンドラー名義のデビュー作のサイン本も安く買えたんですが、今はもう 400ドルぐらいになってますね……っていうのは横へ置いといて、スニケット名義の1作目は 1,000ドルですもんね(にんまり)……じゃなくて、新作は愛の様々な形を連作ふうに描いた真面目な作品のようです。
まあマクスウィーニイのアンソロジイなんかにも引っ張り出されてますし、The Magnetic Field という玄人受けするバンドの録音にもアコーディオン弾きとして参加したりと、多彩な才能の持ち主のようですね。ということで、この作品にはちょっと注目しておきましょう。
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こういう手抜きのカバーってけっこう好きなんですけど、なにやら精神病院を舞台にしたコメディということなんでちょっと面白そう。
バベルの塔のように空に高く伸びるドロシイ・フィッシュ病院では、重症であればあるほど上の階に収容され、25人の患者はすべてアルファベットで呼ばれているという、ううむ、ちょっとお約束かな。
ここで13年間平和に暮らしている語り手の N は、毎年の検査で継続して入院が必要だと確認されるとホッとするタイプ。けど、わたしは正気だといいはるポピイ・シェイクスピアが入院してきたことから、なんとかして彼女を解放してあげようとジタバタするはめに。その過程で気違いじみた病院のシステムと、だれが正気でだれが狂っているのか、それをだれが決めるのかというおなじみの疑問が持ち出されてくるようです。
期待の新人による、文字通り当てにならない語り手のプッツンな文体の作品ということで、これもありがち……と思ったら、ぜんぜんありがちじゃないのが、じつはこの作者、患者として10年間病院を内側から眺めてきたんだそうで、俄然として興味がわいてきました。ふむ、アメリカ版のカバーもまあまあで、どっちもどっちかな。
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Tuesday, April 11, 2006
ネコとかキツネが出てきたところで、オルタナ・カントリーの歌姫、Neko Case (ニーコ・ケイス)の新作、Fox Confessor Brings the Flood はいかがでしょう(<かなり強引)。
カナダのバンド New Pornographers ではパワー・ポップなヴォーカルを披露してますが、その正体は、自分のバンド Boyfriends を率いて番を張ってる姉御……じゃなくて、ナンバー・ワンの女性カントリー・シンガーといっていいでしょう。とはいえ、カントリーをベースにしながらも、そこには色々な音楽の要素が取り入れられ、張りのある声による表現豊かな歌唱は、カントリーに興味のない人でも引き込まれてしまうのではないでしょうか。
特に今回の新作は音作りも緻密で、今まででいちばん完成度が高い感じですね。レコード会社のサイトでインタヴュウやアルバムからの数曲が聴けるようになってます。カバーもかわいいですよ。う、よく見ると怪しい脚してるし、小脇に抱えた少女の頭はなんなんだろう? あ、裏表紙はもっと怪しい^^;
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マクスウィーニイからまたヘンな本が出てますね。"Nabokov meets Lemony Snicket" とか "a Nabokovian goof on Agatha Christie" とか不思議な組み合わせの紹介がされてますけど、架空のアイスランドの地下の国を舞台にしたミステリの形式で、かなり遊んでるみたいです。
メインのストーリイは行方不明になった犬を追って地下の国に迷い込んだヒロインが、親友の殺人事件をいやいやながら調べることのようですが、様々な登場人物が語り手を務めて、探偵の一人はヨーダみたいな語り口なんだとか。他にも真の語り手や殺された被害者が脚注でいろいろコメントしているようで、このあたりがナボコフ的なんでしょうか。
4色刷りのシンプルな表紙がなかなか好みなので(たぶん他のマクスウィーニイの単行本のようにカバーなしで直に印刷してあるんでしょう)、これは買いですね。表紙のキツネがどう話に絡んでくるのかも気になりますし。
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Monday, April 10, 2006

少年は幼い頃母を失った。そのとき父は他の女と一緒にいた。それはずっと少年の心の中で蟠りとなっていた。
少年が一歳のとき、巨大隕石が地球に衝突する危機が迫った。同じ頃、三匹の地球外生命体が発見され、四次元航法で宇宙空間を移動する彼らを利用し、人々を地球から避難させる計画が持ち上がった。しかし操縦には宇宙人に好かれた者が〈子宮〉と呼ばれる船室に入り、宇宙人と心を通わせる必要がある。宇宙人エヴリンに選ばれたのは、息子を授かったばかりの父だった。愛する家族を救うため、彼自身もその宇宙船の船長になることを志願する。だが〈子宮〉の中は安全で居心地がよすぎた――微睡みの中で彼は乗員の生命維持装置の確認を怠り、惑星カナンに降り立てたのは二千人のうち約四百人。母もこのとき死んだのだ。
父の置かれた状況は特殊だ。だが作者は平行して、新天地で地球の古き良き五〇年代を模倣する移民たちの退行振りを描き、安全なコクーンの中に籠もるのが人間全般の有害な性向であることを示唆する。
物語は謎めいていた事柄を徐々に明かしながら進行し、ラストで病んだ社会から同じ宇宙船に乗って脱出する少年の姿を当時の父に重ね合わせて、見事にその心理を解き明かす。
二〇〇二年のデビュー作 "A Scattering of Jades" が高い評価を受けたあとも、良質の長篇・短篇を間断なく発表しているアーヴィンは、日本でも積極的に紹介されて欲しい作家のひとりだ。
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8月発売なのでまだずいぶん先の話ですが、ジョン・コートネイ・グリムウッドの新作がアマゾンにリストされたんでチェックしてみました。End of the World Blues なんて、微妙にダブル・ミーニングで洒落たタイトルですね。
Amazon.co.uk には簡単な紹介文が載ってますが、おお~、Baroness Nawa-no-ukiyo だって^^) quark さんの命名がちゃんと使われているようですね。葉隠れをモチーフに、海に浮かぶ綱の世界(floating rope world)が重要な舞台になるそうです。
しかし、femme fatale の名前が Nijie なのはいいとしても、その正体が Lady Neku というのはちょっと危ないんじゃないでしょうか。う~ん、もう手遅れかな^^;
[追記] こちらに感想上げました。(2007/4/22)
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ブッシュがこんどはイラン空爆を画策中の記事を見にニューヨーカーに行ったら、ミルハウザーの新作短編に出くわしたので、こっちを読んじゃいました。
ハラド4世の宮殿でミニチュア製作に携わる彫刻家、普段は王宮内の家具調度や、600室を擁するというトイ・ハウスの装飾や修繕に腐心していたが、ミニチュアのリンゴに止まる超小型のハエを設えたことから、レンズで拡大しないと見えない極小の模型の製作に没頭していく。サクランボの種に刻んだ36頭の象に、トイ・ハウスの26部屋を再現した指貫。最初は面白がって見ていたハラド4世も、次第に呆れ顔。
だが、彫刻家の探求は止むことをしらず、自分の世界に閉じこもる孤高の天才という、いつものミルハウザーの展開へ。弟子にまで見放された彫刻家は、レンズを通してさえ見えないトイ・ハウスの忠実な模型を完成させ、ついには、王国全体のミニチュア化へと駆り立てられていく。
状況は異なりますが、なにやら裸の王様のような結末ですね。際限のないオブセッションのエスカレーションが、普遍的なテーマではあるんですけど、まるで今のブッシュを描いているように読み取れてしまいました。ミルハウザーにしては小粒(笑)な作品ですけど、短いので読んでも損はないと思います。
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Sunday, April 09, 2006
もう5年も前に書いたレヴュウですが、5月に邦訳が出るということで引っ張り出してみました。直球勝負の力作ですね。
1996年のマーズ・パスファインダーによる火星探査の成功は、長い長い火星SFの伝統に、また最新の視点による作品を付け加えた。ここ1、2年の火星ものの新作をひろってみると、ベンフォード、ボーヴァ、オールディスといったヴェテラン勢の名前が目につくが、本命はやはりこのジェフリイ・A・ランディスになるだろう。マーズ・パスファインダーの開発に参画した現役のNASAの研究者でありながら、余技とは思えない良質の短編で、ヒューゴー/ネビュラの受賞を含め、十年以上にわたり高い評価を得てきた作者だが、長らく待たれていた初の長篇は、ホームグラウンドである火星を舞台とした、徹頭徹尾リアルなサスペンスものとなった。
悲劇に終わった前二回の有人探査を背景として、期待と不安を胸に、六人の乗組員が着陸船ドン・キホーテで火星の南半球に降り立った。だが、六年前に送り込まれて、周囲の土壌から燃料用の水素と酸素を蓄積し、帰還に備えてきたはずの離陸船ダルシネアの燃料タンクは、無残にも腐食していた。地球からの救援は経済的にも時間的にも到底望めない。唯一の帰還の可能性は、最初の探査隊が絶滅したために北極点に残された離陸船に到達することだった。だが、ランドローヴァーで三千マイルの距離を駆るだけの燃料も確保できない。一行は資源確保の望みをかけ、離陸後に悲劇に見舞われた二回目の探査隊の跡地を目指す。行く手をさえぎる大峡谷を越え、生死を賭けた火星縦断の旅が始まった。
人種も背景もまちまちな六人に共通するのは火星への思いのみ。作者の筆は短い章立てで個々の登場人物の過去と火星での道行を行き来し、緊張感と不協和音を駆り立てる。ヴェテランの宇宙技術者、天才的な宇宙飛行士、優等生の医師兼生物学者、タイ人の地質学者、資金調達用のくじで搭乗券を手に入れた少年、そして火星で死んだ最初の探査隊員の妻。それぞれが火星を目指すに至った過去のドラマは、次第に現在の人間関係に影を投げかけ、非情な環境での悲劇を助長する。しかも、離陸船には、たった二人分の乗船スペースしかないのだ。
火星の環境とそこでの技術の描写は、さすがに第一人者であることをうかがわせる。大峡谷での低重力下のロック・クライミング、太古の水の存在を示す地層の跡、希薄な大気でのライト・プレインの飛行、あるいは極地でのドライアイス混じりの雪上スキーなど、迫真的な描写にはことかかない。一方で、作者の冷徹な視線は人間的側面にも平等に向けられ、生々しい悲劇が徐々に叙事詩的な色合いを帯び、精神的な解放へと昇華していく過程を感じさせる筆力はなかなかのものである。特に、究極のジレンマの解決を、技術的手段に求めず、心理的に処理したことは、この作品にふさわしい印象的なクライマックスをもたらしている。
どうも作者はこの作品を書くにあたり、山岳ものや極地探検を扱ったノンフィクションを相当意識しているようだ。個々の登場人物の背景を、直接メイン・プロットに関与させるというよりは、心理的に機能させるレベルに留めている部分とか、心象風景と目の前の現実との小刻みな視点の切り替えは、エベレストでの遭難を描いたジョン・クラカワーの傑作『空へ』での手法を思い起こさせる。反面、そのアプローチが、ストーリー的な面白さに欠ける、地味な作品にしていることも事実で、プロットを成り立たせるための工夫が逆に作用し、作り物であることを意識させてしまう部分も一部見受けられる。とはいえ、本物の火星の手触りを感じさせてくれる力作であることは間違いない。
ちなみに、作中に登場する、火星の土壌からロケット燃料を集積する技術は現実のもので、次の火星ミッションにはこの試作機が搭載されるという。なお、このヴェテランの作者にいまさらという感がしないでもないが、この作品は2000年度のローカス賞を第一長編部門で受賞している。(2001/8/8)
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クレア・ダドマンのブログで紹介されている 64 Clarke というサイトで、イギリスの中堅・若手の作家が集まって、それぞれが用意した音楽のコンピレーションを交換して、曲名やアーティストを推測したり、勝手なコメントをつけて楽しんでます。どんな曲を選んだかということと、他の人が選んだ曲をどう評価するかという二つの点から、作家の趣味や個性がうかがえて面白いですね。
参加してる作家はダドマンのほか、デイヴィッド・ミッチェル、ハリ・クンズル、トビー・リット、マット・ソーン、ニック・ストーン、マット・ボーモント、ピート・ワイルド、ウィル・アシュトン、マシュー・デイヴィッド・スコット、ジョン・ウィリアムズとのこと。いやまあ、半分ぐらい知りませんけど。
音楽のほうはなかなか多岐に亙っていて、作家によってはズバリ当てていたり、的確なコメントをしてたりしてちょっとチェックしてみたくなります。なかにはぜんぜん的外れだったり、ボロクソにけなしてたり、曲のフレーズから勝手に話を作ったりして、読んでるだけでもなかなか面白いです。
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Saturday, April 08, 2006
今日届いた中にこれが入っていたのでポストしておきます。前作の『ジェニファー・ガバメント』は、面白いぞ~とか騒いでたらすぐに翻訳が出ましたね。
この表紙からするとこんどはXXXX・ドーナツを舞台に銃撃戦……かと思ったら、そうでもなさそう。得体の知れない巨大企業の中での陰謀の話みたいですね。ううむ、たぶん読んだら前作みたいに面白いんでしょうけど、企業の内部でのドタバタだけで終わるんだったら、やっぱりパスかな~。
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Friday, April 07, 2006
2004年にハードカバーが出た "The Book of Ballads" のペーパーバック版が、2月に発売になっていますね。内容はタイトルどおり『バラッドの本』で、現代のファンタジー作家たちが19世紀のスコットランドやイングランドの有名なバラッドを再話したものに、チャールズ・ヴェスがイラストをつけているようです。

参加している作家は、ニール・ゲイマン、チャールズ・デ・リント、ジェイン・ヨーレン、ジェフ・スミス、エマ・ブル、シャーリン・マクラム、ミドリ・スナイダーなど、スゴイ顔ぶれ。
チャールズ・ヴェスは世界幻想文学大賞のアーティスト部門など、数々の賞を受賞しているイラストレータですが、個人的に彼の絵は(持ってないけど)チャールズ・デ・リントの "Medicine Road" の表紙とかはわりかし好きなのですが、あまり好みでないイラストも結構あったりでちょっと微妙です。でも、これは買ってしまいそうな予感が……。
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Thursday, April 06, 2006
ヴォーカルとギターとドラムスのトリオによるガレージ・ロック・バンドといいながら、3月に出た2作目のフル・アルバム Show Your Bones では少ししっとりとしたメロディー重視の聴かせる曲が増えてますね。
見るだけでも楽しいオフィシャル・サイトでは、最初のシングル・カットの Gold Lion のビデオ・クリップなんかも見られますけど、むしろ Way Out とか、他の曲のほうがいい感じ。個人的には "Hush little baby don't you cry, momma's gonna buy you a mockingbird" という子守唄のメロディをそのまま使った Dudley がなぜか気に入ってます。
までも、前作 Fever To Tell のちょっと壊れたパンクな響きが抑えられてしまったのは、それはそれで残念かも。
ということで、カレン・O姉さんの危ない魅力にもっと浸りたい場合は、やっぱりライヴ DVD の Tell Me What Rockers To Swallow ですね(アマゾンではリージョン1になってますけど、現物はリージョン0でした)。最初から歌ってるんだか遊んでるんだかわからないカレン姉さんの一人芝居で突っ走りっぱなしです。いやでも、過激というより汚い~^^; う~、パンツまる見え~。まあ、あんまり色っぽくないですけど^^; ビデオ・クリップもたっぷり入ってお買い得ですね。
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ジャスティナ・ロブスンの話題を出したので、昔書いた2作目の Mappa Mundi の紹介を引っ張り出しました。ちょっと重いので読みにくい作品なんですが、力作です。
才気あふれる女性科学者に翳のあるFBI捜査官、インディアン居留地での集団発狂事件の背後に見え隠れする国家的陰謀の影……。なんだかX-ファイルの一エピソードみたいな幕開けだが、冒頭の印象とは裏腹に、ジャスティナ・ロブスンの第2作は、最後までシリアスな社会派としての視点を失わない。マインド・コントロールと自由意思の問題を、国際情勢にからめて真摯に追求し、技術的側面と人物造形に等分に筆を割いた、密度の高い近未来スリラーなのである。
デビュー作がクラーク賞と英国SF協会賞にノミネートされ、一躍脚光を浴びた作者は、その Silver Screen (1999) で、スターリングを思わせる硬質な社会描写と、実在感のある電脳世界を背景に、AIの人権問題に直面した社会と個人のゆらぎに取り組んだ。マッパ・ムンディ(中世の世界図)という思わせぶりなタイトルのもとに、今回作者が選んだ題材は、人間の脳の測量という、より切実なテーマとなった。
シャイアン族の居留地は奇妙な事態に包まれていた。温厚な住民が突然家族を皆殺しにし、住居に火を放つという事件がいくつも同時発生していたのである。焼け落ちた小屋から命からがら逃げ出したホワイト・ホースは、発狂して自殺した隣人の傍らから奇妙な装置を拾い上げ、半分血の繋がった弟ジュードのもとを訪れる。
白人とシャイアン族の混血のジュードは、FBI捜査官としてハイテク犯罪に取り組んでいた。目下の最大の関心事は、全米各地で生物兵器によるテロを繰り返すイヴァノフを捕縛すること。だが、その実体に迫る手掛かりは漠として得られなかった。姉から装置を受け取ったジュードは、集団発生した統合失調症と、そのハイテク機器の関連を疑う。出所はイギリスの政府機関と思われた。ジュードはすぐさまイギリスへと向かう。
一方、脳機能の完全なマッピングを目指す英米共同のプロジェクト、マッパ・ムンディの一員として、ナノテク・デバイスと外部刺激による意識の操作にたずさわるナタリーは、その研究を完成させつつあった。セルフウェアと呼ばれるそのシステムは、精神性疾患や被験者の不安を取り除き、高度な精神活動の活性化をもたらす画期的なものである。だが、彼女は、倫理感の欠如した同僚のダンが、その試作機を闇市場に持ち込んだことを知らなかった。
ナタリーとのコンタクトに成功したジュードは、恐れていたとおり、問題の装置に彼女が関わっていたことを知る。装置を手に入れた犯罪者が、なんらかの目的で、インディアン居留地を実験の舞台に選んだものであるらしい。さらにジュードの手には、ペンタゴンに招聘されマッパ・ムンディの指揮をとる科学者グスコフと、テロリスト、イヴァノフが、同一人物であることを示すファイルがもたらされる。
そしてついにセルフウェアは完成する。被験者は事故により論理的な思考の組み立てができなくなったイアン。だが、セルフウェアには意図的な改変が加えられていた。プロジェクト内部での陰謀に、ひとり立ち向かうナタリー。一方、ジュードのグスコフ/イヴァノフに迫る試みは、ことごとく失敗に終わる。グスコフの思想に共鳴したジュードの同僚メアリが、つねに彼の動きを妨害していたのである。果たしてセルフウェアは人類に対する福音となりうるのか、それとも悪夢の源となってしまうのか。
これに対する作者のスタンスは、深く考え抜かれたものである。目前の危機はとりあえず回避される。だが、世界はもうもとの世界ではないのだ。だから、安易な結末はここにはない。変化は必ずやってくる。変化のあとの社会をどう形作るか、それこそが前作から引き続いて提示されている作者のメッセージであるようだ。
物語上は自由意志を最重要と考えるナタリーとジュードを善、マインドコントロールによる社会の安定を目論むグスコフとメアリを悪とする図式が成立しているが、作者の意図はもう少し深いところにあるようだ。根底には生まれ育った環境から形作られた個人の世界観、マッパ・ムンディが、人々の行動をどう規定するかという寓意がある。それを明示するために、本編となる「世界図」のまえに、主要な六人の登場人物の生い立ちを綴った「凡例」と、物語の先行きを示すホワイト・ホースのエピソード「方位」が置かれている。作者が物理的なマッパ・ムンディより、未来に向けた象徴的なマッパ・ムンディを重要視しているのは明確だろう。とはいえ、読んだ後に疲労感が残る作品ではある。(2002/10/26)
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Wednesday, April 05, 2006
キャスリーン・アン・グーナンと並んで、女性ではたぶん今一番ハードなSFを書くジャスティナ・ロブスンが、自ら遊びで書いたと公言するアクション・アドヴェンチャーのシリーズ、Quantum Gravity の第1作が 5月に登場するようです(ペーパーバックはこちら)。まあいつもの作品は、どシリアスなテーマに書き込みすぎるほどに書き込んだ濃密な作風で、正直読むのが少々しんどいくらい重いので、気軽に書き飛ばしてくれてやっと並みの作家の本格SFレベルになるんじゃないかと期待してるんですが。
しかしでも、サイボーグ少女探偵を主人公に、量子爆弾により時空の構造が崩れ、妖精郷と霊界と冥界が交錯する世界で、叛乱する自身の機械化された体を持て余しながら、妖精のロックスターのボディガードをするという、SFとファンタジイとミステリとロマンスがごった混ぜになった設定では、はっきり言ってロブスンでもなければまともな作品にはならないんでは。いやまあ「電脳女性ハードボイルド・ロマンス、天使付き」のライダ・モアハウスという、これまた信じられないけどむちゃくちゃ面白い作品を書く作家もいますけど。このあたりの作品、萌え狙いのカバーで読者を騙して売っちゃうどこかの出版社がすぐに取り上げそうな気も^^) ロブスンやモアハウスならわたしも大プッシュですね。
ともかく、SFやファンタジイの好きな部分を何でも放り込んだ、恥も外聞もない娯楽作品で、最初から最後まで楽しく、もしシリアスなテーマが忍び込んでいたら全くの偶然か、作者の不注意のせいということなので、楽しみに待ちましょう。いやでもこの人、Natural History のときにも同じようなこと言ってたんですが、あれってバリバリのハードSFだったんでは……?
ちなみに今年はロブスンの当たり年で、アメリカでリプリントされた1作目と3作目の Silver Screen と Natural History が同時にディック賞の候補になり(この顔ぶれなら Natual History が受賞してもおかしくない)、本国イギリスでは4作目の Living Next Door to the God of Love が英国SF協会賞にノミネートされているという繁盛振り(まあこちらはストロスかライマンでしょう)。いま一番ホットな女性SF作家として、ブレイクは間違いないぞ。
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"The Big Over Easy" に続く「ナーサリー・クライム・シリーズ」2作目 "The Fourth Bear" が、例年通り7月に発売されるようです(私、まだ1作目読んでないんですけど~)。
この前のはハンプティ・ダンプティでしたが、今回は The Three Bears という童謡がネタになってるようです。お父さんクマも、お母さんクマも、子供クマも「ベッドに誰か寝てる~」って、確かにアヤシイ歌ですね。
で、なんか今回は、精神病で、サディストで、天才の殺人鬼(←子供の夢ぶちこわし)のジンジャーブレッドマンが出てきて、彼はなにやら逃亡中らしいです。ぷっ、確かにジンジャーブレッドマンだったら逃げるの得意ですよね。
というわけで何が何やら全く分かりませんが、タイトルの4番目のクマはきっと人のベッドに寝てたヤツに決まってます! とにかく相変わらずお馬鹿で楽しそうな感じです。1作目は UK版を買っちゃったので、今回もそっちにするつもり。夏までに1巻目を読まなくちゃ。
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Tuesday, April 04, 2006
パブリッシャーズ・ウィークリーに "Fantasy Goes Literary" と題した、最近のメインストリームでのSF/ファンタジイ的な作品の流行を扱った記事が載っていました。とくに目新しいことが書いてあるわけではありませんが、このブログで取り上げることの多い作家や作品がピックアップされてましたので、ちょっとご紹介(リンクした記事は1週間ほどで読めなくなると思います)。
アリス・シーボルドの『ラブリー・ボーン』やハリー・ポッター、テレビ番組の「ロスト」を皮切りに始まったファンタジイの一般化は次第に文学の世界に及び、オードリー・ニフェネッガーの『タイム・トラベラーズ・ワイフ』、デイヴィッド・ミッチェルの Cloud Atlas、スザンナ・クラークの Jonathan Strange & Mr Norrell、エリザベス・コストヴァの『ヒストリアン』といった、それまでならジャンル小説と見做されてもおかしくない作品が、一般読者の間で広く読まれるに至ったという書き出しで、最近目に付いたものとして、Mario Acevedo の The Nymphos of Rocky Flats、Kevin Brockmeier の The Brief History of the Dead、Keith Donohue の The Stolen Child を挙げています。
ふむ~、他の2冊はともかく、イラク帰りのヴァンパイア探偵が色情狂の流行に立ち向かうという The Nymphos of Rocky Flats って、ほんとうに面白いんでしょうかね^^; まあこういうところで取り上げるということは、それなりの工夫があるんでしょうけど。
このファンタジイの一般化の背景として、ブロックマイアも引っ張り出されて、ハリー・ポッターや指輪物語の流行により、大人の読者もファンタジイを手に取ることに抵抗がなくなった点を挙げています。また、ニューヨーカー誌がブロックマイアやジョージ・ソーンダース、はたまたスティーヴン・キングなどのファビュリスト・フィクションを積極的に取り上げてきたことも、ジャンルの垣根を低め、より広義な文学的への回帰をもたらしたとしています。
文芸書の編集者がどんな作品に目をつけているかという例として、魅力的なラインアップを揃えているペーパーバック・リプリントのハーヴェストが取り上げられていますが、今回ここに、ケリー・リンクの Magic for Beginners、サルヴァドール・プラセンシアの The People of Paper、リディア・ミレの Oh Pure and Radiant Heart が加わるそうです。ううむ、このブログで話題にした作品ばかりじゃないですか^^)
この他にも、有名作家の児童書への進出や、逆にジャンルからのアプローチとして、ジェフ・ヴァンダーミアの City of Saints and Madmen に触れて、作家の側でもジャンルに縛られずに書くこと、あるいは色々なジャンルに手を染めることに抵抗がなくなりつつあるとし、ケリー・リンクの旦那さんでもあるギャヴィン・J・グラントの、現代を描くのにSF/ファンタジイ的手法は最適なんだという言葉で締めくくっています。
さてさて、マージナリアの住民としては境界地帯に注目が集まることは歓迎なんですが、それだけじゃなく、一般書の読者はジャンルのコアの作品にも目を向けて、逆にジャンルの読者は他のジャンルや一般文芸にも積極的に手を出して欲しいですね。自戒もこめて。
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モロウの話題が出たのでついでに。ほんとうに短い作品ですが、とーってもいいんです。オンラインで公開されていますので、まだモロウをお読みでない方はぜひ読んでくださいませ。
歴史は過去を伝え、SFは未来を語る。SF作家の作品が、9・11のショックを乗り越え、希望を見いだす一助になれば――そんなSci Fiction唯一の企画に応えて寄せられた心温まる掌編。
テロのニュースが伝わるや、隠居していたキングコングとリドサウルスとゴジラが、お互いを支え合いながら、よろよろと姿を現す。そして加齢により自らの足元もおぼつかない彼らが、ここぞとばかり被災地に乗り込み市長に援助を申し出る。
たったこれだけの極めて短い作品だが、言葉や行動のひとつひとつが示唆に富み、そしてなによりとても暖かい。かつて大都会で暴れまくった怪獣たちは、それを理由に拒絶されることを恐れるが、一方で市長や消防士たちは、過去を水に流し、彼らが助けに来てくれることを信じて待っていた。この両者の交流が感動的だ。
敵対することはあっても協力し合うことなど以前は考えられなかった三頭の怪獣たちは、三大宗教や、白・黄・黒色人種など、利害の対立するグループを象徴していると言える。人類の歴史を振り返れば様々な衝突があった。しかしテロで何もかもを失った今、根底で〈人間〉という共通項を持っていたことが、逆によく見えてくる。憎しみを忘れ、同じ人間同士が助け合えば、共通の豊かな未来を築くことができるはずだ。
それは簡単なようでいて難しい。作家は『寓話』で理想の姿を示した。それが現実のものになるか否かは我々の努力しだいだ。
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Monday, April 03, 2006
ケヴィン・ブロックマイアの新作長編に対するパトリック・マグラアの否定的な書評がちょっと話題になってます。感情移入できる登場人物がいないので折角のアイデアを無駄にしてしまったというかなりきつ~いコメントなんですが、マグラアを除くと総じて評判はいいようですね。
ということで気になってるんですが、注文した本はまだ海の上(のはず)なので、ウェブで読めるこの長編のベースとなった 2003年のニューヨーカーの同名の短編を味見してみました。長編では冒頭の一章として使われているようです。
あるものは砂漠に飲まれ、あるものは海で溺れ、またあるものは高い木に絡め取られてと、様々な道のりを経て死者が集まる無名の町。死ぬときに見た光景は人それぞれでも、この町にやってきた者が共通して経験したのは、低い太鼓の響き、あるいは巨人の心臓の鼓動のようなドン、ドンという音だった。あるものは今でもその音が時折聞こえるという。
どこか懐かしいような田舎町のたたずまいを見せるこの世界では、これといった事件が起こるでもなく、平凡な日常が流れていた。ただひとつの変化は、どこからともなく新しい人々が現れて、いつのまにかいずこかへ去っていくこと。時によりやってくる人々の数が急激に増え、同時に多くが足早に消えていく……。
生きている人々の記憶に留まっているあいだだけ死者が逗留する境界地帯という設定で、そこを行き来する人々のあやふやな話から、生者の世界での出来事が間接的にほの見えてくるという構成です。世界各地での紛争が徐々に激しさを増し、いずこかの国が解き放った致死性のウィルスが蔓延した暗い近未来像が焦点を結んでいきます。いとおしげに描かれた平凡な日常との対比がかなりインパクトがありますね。
この短編を見る限りでは、ジャンル色を弱めたテッド・チャンか、あからさまなユーモアを控えたジェイムズ・モロウのような雰囲気です。あるいは、奇妙な状況に置かれた庶民の物語ということで、ジョゼ・サラマーゴの『白い闇』のような感じもありますね。感情移入できる物語かどうかは、客観描写による寓意的なこの短編だけでは判断できないといったところ。
長編では、南極で遭難したためにウイルスの感染を免れた女性と、その女性の記憶のみに支えられた一握りの死者の物語がメインになるようです。どう考えてもハッピー・エンドにはなりそうにないですが、先行きが気になるので、やっぱり読んでしまいそう。
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びっくり!
なんとアラスター・グレイがブログを始めました。いやまあ、ブログの中身はわたしが読んでもちんぷんかんぷんでしょうから、たぶん読みませんけど^^; しかしオフィシャル・サイトのデザイン、さすが装丁家だけあって素晴らしいですね。
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Sunday, April 02, 2006
International Horror Guild Award の候補者としては常連で、受賞も何度かしている彼女の作品を読むのは初めてなのですが、この短編集はなかなかよかったです(で、なんかもっと、すご~くアヤシイ人かと思っていたら、ぜんぜん違いました。すみません)。
超自然現象を収集したジャーナリスト、チャールズ・フォートに捧げられていることから分かるように、どれもが科学では解明できないような不思議な出来事を巡る物語です。
古代生物の足跡らしきものを調査していた研究者が惨殺死体で発見され、現地に行ってその謎を探る元恋人の研究者の物語 "Valentia"、近所で殺人事件があったあとパーティのウィージャ・ボードを使った余興で不思議なメッセージが綴られる "Spindleshanks"、日照りが続いているのに何故か日増しに大きくなる水溜まりが不気味な "Standing Water"、バスルームで異様な体験をする "Onion"、犬の亡霊らしきものに悩まされる主婦の物語 "Apokatastasis"、子供の頃の姉妹の事故死を心の奥底に封印し精神科医にかかっている女性の幻想的な物語 "La Peau Verte、1890年に建てられ当時の持ち主の名を取って「ダンドリッジの屋敷」と呼ばれる幽霊屋敷の不思議な物語3編を集めた "The Dandridge Cycle" など、チャールズ・フォートが生きていたら取材してしまいそうなストーリーばかりです。あと Dead Girl が主人公の、あっちの世界の人々が出てくるちょっとコミカルな作品もあります。
その中の多くが、ほんとうに怪奇現象が起こったのか、それとも精神的な錯覚なのか、あやふやなところが逆に真実味があってよかったです。それだけでなく、人々の描写がとても上手いんですよね。私は結構気に入りましたが、謎の解明を求める人には不満が残るんじゃないでしょうか。そういう人は読まないほうがいいと思います。
というわけで、「エニグマティック」という言葉がぴったりな、味わい深い短編集でした。「ホラー」だけじゃなくて、他の賞も取って欲しいですね。
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去年出た本だそうですが、インパクトが強そうなのにチェックが洩れてましたね。ジャンルの世界では話題に上がらなかったということがあるんですが、かなりアブなそう。
多重世界という設定で、メインはスペインの侵略に打ち勝ったアズテックが全世界を支配しているタイムラインということで、奴隷の心臓を取り出して神に捧げることが原動力となった社会だそうです。この世界でアズテックの戦士として活躍する主人公は、別のタイムラインではしがない屠殺業者として働く身で、なにやらハル・ダンカンの Vellum のような、アヴァタによる重層的な物語が展開するようです。
とはいえ作者によれば、この本にプロットを探そうとする読者はハック・フィンを読めということだそうなので、たしかにジャンル的な冒険ものの感じではなさそうですね。バロウズ(エドガーじゃないほう)やイシュメイル・リード、ケルアックなんかが引き合いに出されてますし、作者は詩人ということで、文体もかなりいじったものとのこと。まあ Believer マガジンの Believer Book Award の今年の受賞作品というあたりで、雰囲気はだいたい想像つきそうです。
作者は日系人のようですので、"Sesshu" はやっぱり「雪舟」なんでしょうか^^)
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Saturday, April 01, 2006
今年のアメリカの新人バンドでなかなか評判がいいのがこの Band of Horses です。メランコリックなヴォーカルが決してひ弱にならずに、広がりを感じさせるギター・ワークで、ある種壮麗とでもいえるような、ごくごくきれいな大曲に仕上がっているのが魅力でしょうか。悲壮感を払拭したニール・ヤングか、よりストレートになった My Morning Jacket のような、カントリー風味のあるポップ・ロックです。
オフィシャル・サイトで何曲か聴けるようになってますが、なんといっても白眉はこの "The Funeral" でしょう。アーケード・ファイアのアルバム Funeral には、そういうタイトルの曲は入ってませんでしたけど、そこに入れてもぜんぜん引けを取らないような名曲ですね^^) 他にもいくつか印象的な曲が入ってますし、全曲外れはないので、ノイジーでないさわやかな曲調がお好きな方は是非どうぞ。
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前作の Air が非常に評価の高かったジェフ・ライマンですが、新作の The King's Last Song は、SFやファンタジイの要素を廃した、カンボジアを舞台にした歴史小説のようです。
ポル・ポトのゲリラに拉致された考古学者が、800年前にアンコールに仏教王国を建立したジャヤヴァルマン 7世の手記を紐解くという設定で、過去と現在のカンボジアを描いていくものとのこと。昔の長編 Unconquered Country もたしかカンボジアを舞台にしたものでしたし、Air も架空の中央アジアの小国での物語ということで、アジアの風土と歴史はライマンにとってはホームグラウンドといえるかも。ちょっと気になります。
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