"Apologue" by James Morrow
モロウの話題が出たのでついでに。ほんとうに短い作品ですが、とーってもいいんです。オンラインで公開されていますので、まだモロウをお読みでない方はぜひ読んでくださいませ。
歴史は過去を伝え、SFは未来を語る。SF作家の作品が、9・11のショックを乗り越え、希望を見いだす一助になれば――そんなSci Fiction唯一の企画に応えて寄せられた心温まる掌編。
テロのニュースが伝わるや、隠居していたキングコングとリドサウルスとゴジラが、お互いを支え合いながら、よろよろと姿を現す。そして加齢により自らの足元もおぼつかない彼らが、ここぞとばかり被災地に乗り込み市長に援助を申し出る。
たったこれだけの極めて短い作品だが、言葉や行動のひとつひとつが示唆に富み、そしてなによりとても暖かい。かつて大都会で暴れまくった怪獣たちは、それを理由に拒絶されることを恐れるが、一方で市長や消防士たちは、過去を水に流し、彼らが助けに来てくれることを信じて待っていた。この両者の交流が感動的だ。
敵対することはあっても協力し合うことなど以前は考えられなかった三頭の怪獣たちは、三大宗教や、白・黄・黒色人種など、利害の対立するグループを象徴していると言える。人類の歴史を振り返れば様々な衝突があった。しかしテロで何もかもを失った今、根底で〈人間〉という共通項を持っていたことが、逆によく見えてくる。憎しみを忘れ、同じ人間同士が助け合えば、共通の豊かな未来を築くことができるはずだ。
それは簡単なようでいて難しい。作家は『寓話』で理想の姿を示した。それが現実のものになるか否かは我々の努力しだいだ。

Comments
うわ~、ほんとに短いフラッシュ・フィクションだけど、うまいなあ。
Posted by: a nanny mouse | Tuesday, April 04, 2006 at 23:42
ご紹介ありがとうございます。私も読みました。しーんとしてじーんとしました。すばらしい。
Posted by: 1day1book | Sunday, April 09, 2006 at 13:53
ほんとうにいい作品ですよね。心がじわ~っと暖まります。ひとりでも多くの人に読んで欲しいです。
でも現実はかなり厳しいですね。
Posted by: Lilith | Sunday, April 09, 2006 at 19:34