« 'The Second Coming of Charles Darwin' by James Morrow | Main | Silent Shout, by The Knife »

Thursday, March 30, 2006

The Weight of Numbers, by Simon Ings

The Weight of Numbersなにやら本命っぽい作品を発見しました。

作者のサイモン・イングズはイギリスのポスト・サイバーパンクの書き手として知られた人ですが(かなり面白いらしいんですけど、例によって積んであります)、今回の作品はメインストリームの力作のようですね。とはいえ、世界各地を舞台に第2次大戦から現代に至るいくつものストーリーラインを、数学的に解き明かされた人間の関係性で結び付けたという、あらすじを読んだだけではどんな作品なのか皆目見当がつかない感じです。

まあヴォネガットやディック、ピンチョンにデ・リーロなんかが引き合いに出されてますので、quark さん向けの作品であることは間違いなさそうですけど^^) デイヴィッド・ミッチェルの Cloud Atlas ふうという評もありますが、いくつものエピソードを単なる因果関係に還元せず、泳がせることで時代を描くのが目的のようですので、むしろ Ghostwritten のほうに近いのかも。

最近はこの手の因果関係のないエピソードを並存させ、イメージやテーマ、プロットの対比で共鳴させて、作者の様々な興味の対象を自由に盛り込んで、ホリスティックに時代を描写していくタイプの作品が多いですね。たしかに対象に忠実であろうとすればするほど、ひとつの切り口ですべてを語ろうというのは無理ですもんね。物語も cause and effect から resonance の時代に変わったのかも……って、なにをいまさらかもしれませんが。

ともかくこの作品、イギリスのメディアでは色々なところで取り上げられてますので、かなり期待です。

この作品のエピソードのひとつに、58人の難民を死なせてしまう密航斡旋業者が出てくるようなんですが、これって実際に 2000年にほんとうに起きた事件なんですね。「英辞郎」の "trafficker" の用例にも出てきますが、ここにある日本語訳、まるで絵に描いたような誤訳になってます:

A people trafficker has been sentenced to six years' jail after 58 people he tried to smuggle into Britain were found dead.
58人をイギリスに密航させようとしたことによって禁固6年を宣告されていた密航あっせん者が死体となって発見された。

ううむ、これではまるで陰謀もののミステリの冒頭部分じゃないですか^^;

|
|

« 'The Second Coming of Charles Darwin' by James Morrow | Main | Silent Shout, by The Knife »

Comments

ペーパーバックで2400円はちと高いですけど、こんな粗筋見せられたは買わずにはおれませんですね。即ゲット。

おりしも、今さらながらにCloud Atlasを読んでおりまして、ちょうど半分(第6部の中間)まで来ました。a nanny mouseさんのレヴューを拝見しておりますと、「舞台は再び南太平洋に戻る」との記述があるんですが、ハワイは北太平洋なのでは?この後、船に乗って南太平洋に行くんだったらゴメンナサイです。

Posted by: quark | Thursday, March 30, 2006 at 23:09

おや、SciFictionに短篇があるんですね。読んでみます。

Posted by: quark | Friday, March 31, 2006 at 21:56

> ハワイは北太平洋なのでは?

う~む、quark さん嫌い(笑)

SciFiction にもありましたか。評価が高い人ではあるんですけど。

Posted by: a nanny mouse | Friday, March 31, 2006 at 22:19

SciFictionに載ってた'Russian Vine'を読みましたが、う~ん、微妙、というか繊細。粗雑なわたくしの感性では、ちょっと捉えかねました。今回のは6年ぶりの長編ということで、作風も変わってるだろうと期待します。なにやら、ユアン・マクレガーに、アポロ13号のラヴェル宇宙飛行士に、アラン・チューリングまで登場するらしいですよ。

Posted by: quark | Saturday, April 01, 2006 at 08:34

わたしも短編のほう読んでみましたが、う~ん、たしかに微妙。コロニアル文学とでもいえるんでしょうか(笑)

までも、短編と長編では根本的に書き方が違ってきますので、長編では雰囲気で全部押すということはないのでは?

Posted by: a nanny mouse | Saturday, April 01, 2006 at 20:34

まだ序盤ですなんですけど、なにやらまたしても共感覚が重要なテーマみたいですよ。数字が色として見えるってのがポイントみたい。

どうやら著者のIngs本人が共感覚の持ち主だったらしいんですが、20歳くらいから徐々にその能力が失われていったんだとか。

Posted by: quark | Wednesday, April 12, 2006 at 04:00

お、ますますもって面白そうじゃないですか。

わたしも何日か前に届きましたが、quark さんの感想を待ちます^^)

Posted by: a nanny mouse | Wednesday, April 12, 2006 at 22:01

結局、共感覚はあんまり出てこなかったですぅ∩( ・ ω・)∩

作品としては、きわめて完成度が高くて、ブッカー賞とっても全然おかしくないレベルだと思いました。ただ、過去60年のスパンで場所と時間がいったりきたりする構成が、一般読者にどう受けとめられるかが不安要素で、ハイブロウな作品として敬遠される可能性がなきにしもあらず。といっても題材的に共通点のあるピンチョンに較べれば、はるかにリーダビリティは高いのでご安心を。
さらに言うと、インデペンデント紙の書評で"the plot woks but the story doesn't"と書かれていたように、プロットに磨きをかけすぎるあまり、自然な感情に訴えかける部分が弱くなってるという側面は確かにあります。……が、これだけ楽しませてもらっといてどこまで求めるんだよぉ。私としては総合90点から95点はあげてもいいです。

ほんじゃ、これからレビュー書きます。

Posted by: quark | Monday, April 17, 2006 at 21:09

ひぇ~、quark さんの95点じゃ、ものすごい大傑作じゃないですか^^; レヴュウ期待してます。

Posted by: a nanny mouse | Monday, April 17, 2006 at 22:24

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/123245/9340373

Listed below are links to weblogs that reference The Weight of Numbers, by Simon Ings:

« 'The Second Coming of Charles Darwin' by James Morrow | Main | Silent Shout, by The Knife »