"The Metabarons: Othon & Honorata, Volume 1" by Alexandro Jodorowsky, Juan Gimenez (Illustrator)
『エル・トポ』『サンタ・サングレ』などのカルト映画でお馴染みのチリ出身の監督アレハンドロ・ホドロフスキー原作、アルゼンチン出身のイラストレータ、フアン・ヒメネス画のSF系バンド・デシネ Metabarons 全3巻のうちの1巻目を読みました。オリジナルのフランス語版からの英訳です。
(ボケ役?の)ロボットにお話をせがまれて、当代メタバロンに仕えるもう一人のロボットが語る、メタバロン家の英雄叙事詩。ときどきこのロボット同士のおしゃべりが挿入されて話の流れが途切れるのですが、お馬鹿なやりとりとは言え、これが結構物語にメリハリをつけたり自然に場面転換するのに役立っていて、これはこれでなかなかいいアイディアでした。
この巻で語られるのは、現メタバロンの高祖父にあたるオトン(Othon)が家長になり、その息子アグナー(Aghnar)を後継者として認めるまでです。
良質の大理石を産するマルモラ星に代々続く士族メタバロン家。その世襲の儀式では、相続者が戦士の家柄の長として相応しいかどうかが試されます。物語の要は、どのようにして彼らが難関を突破して家長の座についてきたか、その一点なのですが、この巻では家宝の秘油を狙った侵略者との戦い、後継者問題、候補者の生まれながらの弱点の克服など、相続に直接・間接的に関連するいくつかのエピソードが加わることによって、物語に深みが増しています。そしてアクションあり人間としての悩みありの、息つく暇もなくスリリングで、たったの130ページとは思えないほど濃厚な作品となっています。巻末についている短篇 "The Crest of the Castaka" では、メタバロン家の始祖がマルモラ星に居を構えることになった経緯と、家長が代々身体に受け継ぐ神秘的な飛鳥の家紋の秘密が明かされます。
なお、メタバロンの名の由来は meta + baron で、代々の家長の身体の一部が必ずなんらかの理由で欠損していて、金属で補われているためです(欠損がなくて、無理矢理埋め込む場合もあり)。
この作品の最大の特徴は、日本文化をかなり意識しているところでしょう。戦闘服はちょこっと鎧兜のようだし、忍者みたいな格好で短剣で闘ったり、また、紫色の袈裟を纏った高僧みたいな人物も出てくるんですよね。一瞬ちゃんばら物かと思っちゃいそうなコマも……。そういった外見だけでなく、忠誠心や精神的なものを重んじている点など、ほんとうに昔の日本の武士のようです。"Death is the worrior's only choice. We'd rather die fighting than live without honor!" なんてセリフ、いかにもじゃないでしょうか?(ちなみにこの勇ましいセリフを吐くのは、自らも率先して闘うオトンの妻です)
それでもって、一番の売りはやっぱりヒメネスの素晴らしい絵だと思うんです。人物の細やかな表情の描きわけや手に汗握るアクション・シーンなど、まるで映画を見ているよう(それもそのはず、ヒメネスは映画の絵コンテとかも描いてるんだそうです)。宇宙船や戦闘機などの機械物も手が込んでて、構図や色彩感覚もとてもいいんです。それがオールカラーとは、なんと豪華!
と言うわけで結構気に入ってしまったので、2巻目 "Aghnar and Oda" と3巻目 "Steelhead & Dona Vicenta" もそのうち(財布と相談して)買う予定です。

Comments
メタバロンっていうはそういう由来ですか。以前 Mastadge がなにやらいってたんで気になってたんですよね。
Posted by: a nanny mouse | Sunday, January 22, 2006 at 22:31
わーい、ホドロフスキーだ!!
MY心の神です。
10年以上前に日本に来た時は、大友克広と一緒にコミックを作るんだとか言ってたような記憶があります。もしかしたらこの作品も、大友と作るつもりの作品だったんでしょうか。
しかしオトンって言うのは、上品な(???)関西弁で「父親」の意味なんですけど、オトンの妻ってのは「オカン」? じゃあ、その息子はマー君ですか?
なんにせよ、ホドロフスキーには映画を撮って欲しいと願ってやみません。
Posted by: quark | Sunday, January 22, 2006 at 23:30
これってどっかで話題になってました?(ゲイブのとこ覗いてみたけど、なかったです)
それからホドロフスキー原作のグラフィック・ノヴェルは、いろんなアーティストのイラストでいくつも出ているのですが、大友克洋とやるんだったらもっと違うタイプの作品じゃないかな~と思います。でも10年前の話じゃ、もうボツになってるかも。
で、オトンの妻はオカンでなくエドナでした(でもあの2体のロボットは関西芸人系かも)。
Posted by: Lilith | Monday, January 23, 2006 at 21:45