Captain Alatriste, by Arturo Pérez-Reverte
『呪のデュマ倶楽部』(『ナインスゲート』)でおなじみのアルトゥーロ・ペレス・レベルテの剣戟もの《アラトリステ隊長》のシリーズがついに英語でお目見えということで、かなり期待して読んだんですが、なにやらちょっと薄味の感じですね。お手軽なペーパーバックのアクション・アドベンチャーのシリーズのよう……というと語弊がありますが、どうも新聞か雑誌の連載ものを読んでいるような印象でした。
舞台は1620年代のマドリード。オランダとの激戦から辛くも生きて還ったディエゴ・アラトリステは、職にあぶれた剣士仲間と居酒屋にたむろする境遇だった。雇われ剣士として決闘の代役で日銭を稼ぐ身ながら、筋の通らぬことは肯じないもの静かな人情肌で、必要とあらば死をも厭わぬ誇り高き性格。
その彼が昔の知り合いの口利きで請け負った仕事は、マドリードにやってきた二人のイギリス人を追い剥ぎすること。少々手荒く扱ってもいいが、「殺し」はないという約束だった。だが、依頼主の手下とともに現場に向かったアラトリステは、話が大きく違うことに気付き、勇敢に立ち向かうお忍びのイギリス貴族を、逆に暗殺者の兇刃から救うことになる。
『三銃士』や『紅はこべ』、はたまた『ニ都物語』の世界ですね(時代はかなり違うのかもしれませんが、世界史音痴のわたしにはほとんど一緒^^;)。ということで、アラトリステは教皇庁が画策するスペインとイギリスの戦争を巡る陰謀に巻き込まれてしまいます。異端審問官と、その刺客の無気味に笑うイタリア人を敵に回して、はてさて、アラトリステの運命やいやに。いやまあ、シリーズは5冊あるそうなので、もちろん無事に切り抜けますけど。
物語の語り手はアラトリステの従者となったかつての戦友の息子ということで、なんとなくシャーロック・ホームズを語るワトスンのような二人三脚の雰囲気も感じられます。12~3才の少年という設定なので、時により大袈裟な描写や感情的な表現が混じり、ほどほどにユーモラスなんですが、スティーヴンスンの少年ものあたりを意識しているんでしょうか、速い展開の物語にうまくマッチしてますね。
ということで、手堅くまとまった大時代的な正統派の剣戟もので、ところどころに挟み込まれる当時の日常の光景も時代色を感じさせて決して悪くはないんですけど、なんせ短すぎます。2~3時間で読み終わってしまうような、小判のハードカバーにすきすきに印刷した 250ページ程度の作品なので、濃厚な陰謀ものには到底なりえないんですが、アクション主導でささっと最後まで一本調子で流れてしまった感じです。とはいえ、こういう作品は単発ではなくシリーズで楽しむものかもしれませんので、まあ続巻に期待しましょう。
イギリス版とアメリカ版がほぼ同時に発売されましたんで、レベルテの他の作品はアメリカ版のハードカバーで揃えてるんですけど(というか、イギリス版はおいそれと手が出ない値段になっている)、この作品は渋いカバーのイギリス版を買いました。ほんまもんの布で装丁してあるという最近では珍しい丁寧な作りなので、やっぱりこのシリーズは安っぽい表紙のアメリカ版よりイギリス版がお薦めです。
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