The Shadow of the Wind, by Carlos Ruiz Zafon
Richard & Judy Book Club のせいで、昨年のイギリスのベストセラーになったカルロス・ルイス・サフォンのスペイン語からの英訳本 The Shadow of the Wind が、illustrated edition として再登場。イギリス版のハードカバーの初版はいまやそこそこのレア・アイテムと化しているので、これで我慢するというのも手かも(いえ、もちろんわたしは予約してサイン本を手に入れた口ですけど、やっぱり買ってしまいそう^^;)。
『ダ・ヴィンチ・コード』の図入り版の成功にあやかったものでしょうけど、「忘れ去られた本の墓場」の迷宮は是非とも写真で見てみたいですね。作品自身はお馬鹿な『ダ・ヴィンチ・コード』とは月とスッポンの大傑作です。ということで、ちょいと前に書いた紹介を。
本国スペインやドイツで大ベストセラーとなり、発売から一年が経ったイギリスでも、やっとここにきて火がついたカルロス・ルイス・サフォンの The Shadow of the Wind は、本好きには垂涎のエピソードで始まる。亡き母の顔が思い出せないといって悲しむ少年を、古書店を営む父親が連れて行ったのは、限られた古本屋だけがその存在を知っている「忘れ去られた本の墓場」という、その名の通りの本の迷宮だった。どこまでも続く本の壁、うずたかく積まれた本の山。少年はその中から一冊だけ本を選ぶことが許される。手にしたのはジュリアン・キャラックスの『風の影』という、死神と取引した男の話だった。
パリで客死したキャラックスは、もともと寡作の上に、出版社が火災にあい、在庫が焼失したために、その著作がほとんど市場に出回っていないという伝説的な作家だった。さらには、残りの本を、死神を思わせる風貌の男が、探し出しては焼き払っているという噂もあった。第二次大戦の戦火の残るバルセロナの街で、長じてキャラックスの生い立ちを追う少年のまわりにも、その妖しい影がつきまとうようになる……。なにやらアルトゥーロ・ペレス・レベルテの『呪のデュマ倶楽部』の向こうを張った、おどろおどろしいビブリオ・ミステリの雰囲気だが、実際は、メランコリックな少年の成長の物語に、エキセントリックな脇役を配した意外にコミカルな作品で、中心となるのは二重写しとなったキャラックスと少年のそれぞれのラヴ・ストーリーである。
ゴシックな冒頭から本格派のミステリを期待すると肩透しを食らうかもしれない。ボルヘスやウンベルト・エーコが引き合いに出されているが、幻想もの、伝奇ものというよりは、明と暗のバランスの取れた、良質の歴史ものの趣である。特筆すべきは戦後のバルセロナという背景で、そのゆったりとした雰囲気にひたるだけでも一読の価値がある。大時代的なロマンスを彷彿とさせる、いい意味でのヨーロッパ的な大衆小説であるといえよう。(2005/03/13)
| Permalink
|

Comments
ほらほら、pumpkinface さん、読みたくなりましたでしょう^^)
Posted by: a nanny mouse | Tuesday, August 09, 2005 at 22:05
邦訳が『風の影』のタイトルで7月に集英社文庫から出るそうです。
Posted by: a nanny mouse | Sunday, June 18, 2006 at 01:20
ひぇ~、翻訳出る前に読むぞ~!
Posted by: Lilith | Sunday, June 18, 2006 at 21:33
日本語訳、冒頭の部分読んでみましたが、こなれたいい文章です。これなら十分人気が出るんじゃないでしょうか。
Posted by: a nanny mouse | Monday, July 24, 2006 at 01:31