"Only Begotten Daughter" by James Morrow
間があいてちょっとマヌケですが、世界幻想文学大賞怒りの未訳本第3弾(モロウその2)、いいでしょうか?(ダメと言われても、行っちゃいます)
実力があるにもかかわらず、モロウが日本市場から閉め出しを食っている最大の原因は、宗教絡みの作品が多いことでしょう。この1991年の世界幻想文学大賞受賞作 "Only Begotten Daughter" もそのひとつです。とは言っても、そこはモロウ。キリストの生涯をなぞる形を取りながら、現実的で皮肉の利いた、楽しいスラップスティックに仕上げています。「宗教もの」で想像するような堅苦しさは全くなく、むしろハチャメチャでときにカゲキ、それでいてなるほどと思わせるところはさすがです。そして、それこそが彼の持ち味なのです。
キリストの再臨を思わせる主人公ジュリーは、ユダヤ人の宗教的独身主義者マリー・カッツがボランティアで精子バンクに提供した精子から誕生。神が介入して聖母マリアが受胎したキリストの場合と全く逆です。その彼女が自分の存在意義と使命を考え、世の中の人々を助けようとするのがこの物語。でも新約聖書が伝えるキリストのようには行きません。盲人の目を治したり、水の上を歩いたりのお馴染みの奇跡も当然あるのですが、ヘンな悪魔や、狂信的で過激なネオ・キリスト教団などが出てきて、聖書とはずいぶん違った趣になっています。ところが、逆にそれがイエスの真の姿をあぶりだしているように見えるから不思議です。義兄にあたるイエスとの邂逅の場面もあるのですが、そこはひとつの見所でしょうね。
この作品の一番の魅力はなんと言っても、悩み、迫害されてボロボロになりながらも、ひたむきに走り続けるジュリーの姿でしょう。あと、登場人物に美男美女が全然出てこないところとか、醜いはずの負傷の傷口を笑い飛ばしちゃう豪快さなんか、飾らない本音主義のモロウっぽさが出ていていいですね。
というわけで、これも絶対翻訳出して欲しいですね~。
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Comments
この作品はあのお馬鹿なエンディングも含めてほんとに素晴らしい。モロウの作品ではいちばん好きなんですけど。
なんか上手くなったディックとペシミスティックでないヴォネガットが手を組んだような感じ(う、それって自己矛盾^^;)。いやでも、すごくいいんですよ。
Posted by: a nanny mouse | Tuesday, August 09, 2005 at 23:30
そうなんです~。ほ~んとにいいんです~。で、あの場面はお馬鹿とはいえ、私なんか真理を垣間見た気にもなっちゃいましたもんね。
ヴォネガットは作品の中で焚書にされてた気が……。
Posted by: Lilith | Wednesday, August 10, 2005 at 22:09
う~ん、最初に『スローターハウス5』なんか読むのがいけないんですよ。『猫のゆりかご』あたりにしておけば印象かわったのに^^)
Posted by: a nanny mouse | Thursday, August 11, 2005 at 01:23