"The Clerkenwell Tales" by Peter Ackroyd
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イングランド王リチャード二世時代のロンドンでは、民衆が重税で苦しむ一方で、教会は堕落し腐敗しきっていた。「ロンドンは五回火事に見舞われ、五人が命を落とすだろう」ある日、クラーケンウェルの年若い修道女が、不思議な預言をする。「五」は磔刑になったキリストの傷口の数。初期キリスト教を象徴するのは、重なった五つの輪だ。神が修道女の口を借りて警告を発しているのか、それともただ彼女の気がふれているだけなのか……。
本書から漂ってくるのは、ロンドン中世の猥雑で危うい騒ついた空気だ。巷では教会への不信から厭世観と終末論が蔓延し、その陰で教会や神の救いを否定する刹那主義的な宗派がひっそりと集会を重ねていた。王は人心を失い、しかも国外では後にヘンリー四世となるボリングブルックが失地回復を狙う。後世の宗教改革や、ヨーク家とランカスター家が争う薔薇戦争へと続く萌芽がここにあった。このように歴史的に重要な時期を、綿密な時代考証をもとに、ミステリの味つけをして再構築したのがこの小説だ。宴席に並ぶ品々、医者の診断の言葉の端々からも、中世の人々がどんなものに囲まれ、どんな思想を持って暮らしていたかが窺え興味深い。
十四世紀の作家チョーサーは、各社会階層からの巡礼者が一人ずつ話を披露するという形を取って当時の生活を語った。現代人アクロイドは、各章題をその『カンタベリ物語』に倣い、きな臭い中世ロンドンを細部にわたり本書の中に忠実に再現している。(2003.09.20)
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Comments
じつはこの作品、『ダ・ヴィンチ・コード』と同じアイデアが出てくるんですよね……っていったらネタバレでしょうか。けど、あの衒学趣味の真似事と、ペダントリの本家本元とが、たまたまかち合うなんて面白いですね。
個人的にはこの作品、視点人物が入れ替わっていくラウンド・ロビンの構成があんまり乗れなかったですね。頭で楽しむ物語と割り切ればいいんでしょうけど。
Posted by: a nanny mouse | Saturday, July 23, 2005 at 02:08
その構成じゃないと、カンタベリ物語にならないんですけど。とはいえ、ストーリー的に楽しむ物語というよりは、あれやこれやの中世的トリヴィア知識でもって当時のロンドンを描き出すというのが作者の意図だと思うので、その辺を理解しないでふつうの小説として読むと怒る人がいるかもしれませんね。
Posted by: Lilith | Saturday, July 23, 2005 at 21:07