"Shadow of A Broken Man" by George C.Chesbro
ロバート・フレデリクソン博士を主人公とした私立探偵シリーズの第1作。
まず主人公の設定が普通じゃない。「小人」として生まれ、サーカス団で育った彼は、"Mongo the Magnificent"の芸名で大スターとなる。しかしスターの座に満足することなく、大学で犯罪学の学位を取得。ニューヨークの大学で教鞭を取るかたわら、私立探偵業も営むという変わり者だ。
5年前に姿を消した男の行方をめぐって、関係者に尋ねてまわる序盤は手堅い作り。ポルノ映画の撮影所から、国連本部まで、幅広い階層で聞き込みを続けるうち、失踪した男をめぐる異常な状況が徐々に明らかになり、同時に生真面目で誠実な探偵の横顔も見えてくる。
しかし、消えた男は超能力者だったんじゃないかという疑惑が浮上するあたりから、物語は異様な展開を見せはじめる。関係者が次々と姿を消し、米ソ英仏の情報局員が暗闘するエスピオナージュへと変容するのだ。サーカス仕込みのカラテ技で健闘するモンゴだが、プロにかなうはずもなく、ソビエトの情報局員に拷問を受けて、心に深いトラウマを負ってしまう……。
***この後は、ネタバレを含むので、自分で読もうという奇特な方は読まないでくださいね***
実は、この超能力者、トリックでもなんでもなく、ほんとに実在しちゃうのである。
一見、超自然的としか思えない不可思議な事件の背後に、合理的な解決法を見出すのが本来の探偵小説なのだが、モンゴの世界ではこの常識は通用しない。
ラストに至っても超能力者は存在する。死んでしまって、やれやれということもない。
彼はその力を悪用するわけではなく、人類のために使っている。だから、このままそっとしとくほうがいい。それが結論。
この調子でいったら、3巻目くらいで、「宇宙人たちがひそかに人類に混じり、地球上で暮らしている。彼らは愚かな人類たちが戦争を起こさないように見張っている。だから、このままそっとしておくほうがいい」とかって、なるんじゃないだろうか。
心配なので、もうちょっと読んでみることにします。
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Comments
む、その口ぶりからするとあの結末はちょっとお気に召さなかったのかな^^) いやまあ、宇宙人は出てきませんが、最初の6冊ぐらいはどれもいい出来ですので、読んで欲しいですね。とくに4冊目の The Beasts of Valhalla は傑作ですので、是非。シリーズ全部読んじゃった奇特な人だっているんですから。
この作品と2作目はむかしパシフィカから出ていたそうですが、ほとんど知られずに消えてしまったのは惜しいですね。個人的には翻訳して欲しいシリーズ No.1 です。
Posted by: a nanny mouse | Saturday, July 23, 2005 at 01:55
あれ、それは誤解です。結末は、すごい気に入ってますよ。むしろ、破綻のなさすぎる前半部分が退屈だったくらい。イランを舞台にしてるらしい第2巻はゲットしてるので、近々読む予定です。
ただ翻訳があたらなかったのは納得できます。今でこそ、森博嗣みたいなとんでもなく仮想的な状況での推理小説が、一般にも受け入れられてますけど、78年の翻訳当時は全く理解されなかったんじゃないでしょうか。恐竜探偵とかがヒットしてる今こそ、紹介されるべきなのかも知れません。
Posted by: quark | Saturday, July 23, 2005 at 02:58
この作品ではないんですが、チェスブロの小説が翻訳されるので、一応ご報告。
扶桑社文庫から『摩天楼のサファリ』というタイトルで12月26日刊行予定です。原作は1986年の"Veil"という作品のようですね。
Posted by: quark | Saturday, December 09, 2006 at 22:26
Two Songs This Archangel Sings で登場したヴェイル・ケンドリイのスピンオフ作品ですね。もう1冊 Jungle of Steel and Stone っていう作品があったと思います。でもなんでこっちのシリーズなんでしょう。
Posted by: a nanny mouse | Saturday, December 09, 2006 at 23:06